今イベントはメインに当たるホールような広さを誇るMASSIVE STAGEと、その正面から右手にあるライブハウスのステージそのもののCOSMIC STAGEの2ステージ制。転換時間も少なく、体を向けるだけで2ステージが堪能できる。月追う彼方からLuovまで、ほぼノンストップで駆け抜けた。
【画像】「ツタロックDIG LIVE Vol.18」の様子(全108枚)
月追う彼方、フロアをライブモードに変えた15分

月追う彼方(Photo by Ryohey Nakayama)
Opening ActはEggs Passオーディションを経て、出演を掴んだ北九州発スリーピースロックバンド・月追う彼方。
板付の彼女達は一度3人で気合を入れ、一発爆音を鳴らした。しほ(Gt.Vo)が「オープニングアクト、月追う彼方始めます!よろしく!」と叫び、『一寸先は』を始める。<声を聴いておくれよ>という歌詞と、真っ向勝負のロックサウンドは、意識をこちらに向かせて、聴く人の心をライブモードにするには十分。はやる気持ちを落ち着かせるようなBメロからの解放的なサビが放たれると、フロアの拳も上がり始める。曲が進むにつれて、3人の演奏もアグレッシブになり、しほは中央のお立ち台でギターソロを見せ、かおり(Ba.Cho)はステージから落ちそうなくらい前に出る。その姿に、拳を上げる人は増えていく。
この熱をキープしたまま、かおりとななみによるリズミカルなビートが響き始め、自然とクラップが起こるツタロックDIG。しほは「こんな平日の真っ昼間から、今日あなた達がここに来た事。本当に来て良かったと心の底から思えるような、今日のあなた達の起爆剤になります!」と宣言し『beginning』をスタート。地道に歩んできた彼女達の姿が浮かぶようなナンバー。<前に進むしかないって思った>という気持ちが、この日少しは報われているんだろうなと思うと、こちらも嬉しくなる。とにかくななみが笑顔で楽しそうだし。
MCでしほは「この瞬間、この空間にいてくれて本当にありがとうございます」と伝えると拍手が起こる。「この時間をいただけたこと、後悔ないようにやっていきたいと思っています。与えられた時間は15分。私らはそれが十分な時間だと思っています。この大きなライブハウスであなた達の耳に、心に、直接私らの音楽をぶつけられる、そんな素晴らしい時間が15分もある。
<セットリスト>
1. 一寸先は
2. beginning
3. ハルジオン
PompadollS、愛を込めてバチバチのパフォーマンス

PompadollS(Photo by Ryohey Nakayama)
本編トッパーはPompadollS。3月のツタロックフェス、6月のツタロックDIG OSAKAに続き、今年のツタロックイベント皆勤賞という珍しい記録を達成。開場からフロアは彼らのグッズである赤のタオルが目立っていた。
お馴染みのダークメルヘンでエレクトロニックなSEは大きなMASSIVE STAGEにも映える。気合十分で登場し、しっかりクラップを巻き起こして、激しいオープニングセッションを轟かせた。そして五十嵐五十(Vo.Gt)が「ツタロックDIGようこそー!」と叫び、『日の東、月の西』からスタート。早速、青木廉太郎(Gt)とサイカワタル(Ba)はお立ち台で演奏し、クラップも要求して会場のボルテージを上げていく。
五十嵐が「正統進化型・邦楽ロックPompadollS、最後までよろしくー!」と叫び、フロアを照明が赤く染めて、殴りかかるような1曲『みにくいアヒルの子』をプレイ。この攻撃的なステージングに、全力でクラップし、サビの<ガァガァガァガァ>のリズムに合わせて叫びながら手を振るフロアも、このカオスなミュージックに合わせて、日々のストレスを吐き出しているように見えた。
MCではツタロックに呼んでもらえ続けていることに感謝し「時代や音楽のあり方に合わせて、変化して進化しながら続いていっているイベントにこうやって沢山呼んでいただけることは本当に光栄で嬉しいと思います」と五十嵐は話す。最近、バンドの環境が目まぐるしく変わっており不安定さも感じているということだが「Xで毎年、同じ日、同じ時間に、同じ事を投稿している人がいて、その投稿が回ってきた時にすごくホッとしたんですよ。それを見た時に変わっていく時代とか環境の中で、変わらないものが支えになるなと思いまして。ツタロックも進化して続いていく中で、ツタロックって言えばPompadollSって言えるように頑張りますので、今後ともよろしくお願いします!」と言うと大きな歓声が起こる。そして『悪食』が始まった。私も何度もライブで聴いている曲ではあるが、この日のこの曲は、今後何十年もツタロックで響かせるという気持ちを感じ取れて、今日だけのエモーショナルな空間を作っていた。続けて「大好きなツタロックにラブソングを愛を込めて歌わせてください!」と五十嵐がハンドマイクに代わり『ラブソング』を届ける。その愛を隅々まで届くように動きながら(靴も脱げた)歌う五十嵐は本当にツタロックとリスナーを愛していることが伝わる。
2026年春の東名阪ツアーを告知をした後、青木が深くも痺れるギターを響かせる。そして「踊ってくれ、O-EAST!」と五十嵐が叫び『赤ずきんはエンドロールの夢を見るか?』をスタート。ダイナミックな演奏は終盤でさらに強大になっていく。サイカの踊るように弾くベースは視覚的にも楽しい。曲中のクラップやシンガロングも大きくなり、そんなフロアを見て五十嵐もテンションが上がり、ギターをライフルのように向けて撃ちまくっていた。そして最後は各メンバーのソロ演奏からの必殺アグレッシブナンバー『スポットライト・ジャンキー』。守りに入る気は毛頭なく、常に攻撃表示でやっていくことを表明しているようだった。
この日のツタロックDIGは、ガンガン攻めたバンドが多かった。その流れを作ったのは間違いなくPompadollSだった。
<セットリスト>
1. 日の東、月の西
2. みにくいアヒルの子
3. 悪食
4. ラブソング
5. 赤ずきんはエンドロールの夢を見るか?
6. スポットライト・ジャンキー
ヨナツメ、これぞDIGの醍醐味!ヨナツメと出会えた夏

ヨナツメ(Photo by キラ)
関西発の5ピースバンド・ヨナツメ。普段私は関西のライブハウスシーンにいるから言えるが、正直今イベントのダークホースと言っていい。
SEも優しい癒しのメロディが流れる中、メンバーが登場。そしてたいが(Gt)が今までの柔らかい雰囲気を一変させる甲高いギターを響かせ、萩月美樹(Vo.Gt)が「ヨナツメ始めます。よろしくお願いします!」と元気よく挨拶し、『アウトプット』からスタート。これはクラップをせざるを得ないという気持ちのいいビートと、萩月の凛としたボーカル、そこに福屋礼央(Ag.Vo)のコーラスが良いアクセントとなる。フロアの期待感の高まりも止まらない中、萩月が「いけますか?」と問いかけて始まったサビでは、しっかりハンズアップが起こる。これには笠置昂生(Dr)も笑顔。そんな笠置の力強いドラムから繋いで始まった次の曲は『告隠』。焦燥感を駆り立てるサウンドが鳴る中、萩月は「今日を大事な日にしようね」と告げた。大らかなメロディを下地に、たいがの自在に空間を駆け巡るギター。そして次第に萩月のボーカルはエモーショナルに、演奏は威力を増していく展開に、この5ピースバンドにしか積んでいない強いエンジンがあることを分からせる。
MCで萩月は「出会ってくれて本当にありがとうございます。本当に嬉しいです!精一杯歌って帰ります!最後までよろしくお願いします!」と伝え、伸びやかなボーカルが特徴的な『あめとめとめ』を届ける。もうこの頃にはフロア最後方までしっかりクラップし、手を上げて楽しんでいた。ステージ上でもアイコンタクトしながらライブしていて楽しそう。続く『ブルベア』は大人の色気のある1曲。福屋もアコースティックギターを置き、ハンドマイクで歌う。萩月との男女ツインボーカルのハーモニーに、ミステリアスさを増幅させるAtsuki(Ba)のベースが、また違った感触を与えていた。そのまま『やってらんねぇ』でもツインボーカルは続行。掛け合いも見所だった。
また福屋がアコースティックギターを持って始めた『最終電車に乗って』はバラード。もうここまでくるとフロアも「バラードもあるよな。どんな感じになるのかな」と待っていたような表情をしていたのが印象的だった。寂しさをじっくりと抱きしめる帰り道に合うナンバー。多くの人が帰宅用のプレイリストに入れたはずだ。そしてリズム隊のビートに合わせてクラップが鳴り響く中「今日ヨナツメに出会ってくれて本当に本当にありがとうございました。次は絶対あっちのステージに立つからね。これからよろしくね!」と萩月が約束し『青い翠』を最後に届ける。クリアな音圧が全体に澄み渡り、拳を上げるフロア。その1つ1つと力強く縁の紐を結んだヨナツメ。「こうやって出会ってくれたあなたを、あなたを、私たちは離さないようにするから。また必ず会おうね」という言葉を最後に萩月は残して、ライブは終了した。
30分で様々な表情を見せる8曲を詰め込んだ彼ら。その魅力は十二分に伝わり、鮮烈な印象を残したに違いない。
<セットリスト>
1. アウトプット
2. 告隠
3. 全部捨てればいいよ
4. あめとめとめ
5. ブルベア
6. やってらんねぇ
7. 最終電車に乗って
8. 青い翠
パーカーズ、こんなに楽しい空間、見てよ神様!

パーカーズ(Photo by キラ)
4番手はPOPS日本代表・パーカーズ。SEから楽しげなサウンドが流れ、そのリズムにタイミングを合わせた照明も手伝い、クラップが起こる。登場したメンバーも元気いっぱい。
1曲目から『中華で満腹』を披露。フロアは早速タオルを振り回し、豊田賢一郎(Gt.Vo)の合図でクラップする。メンバーも代わる代わるにお立ち台に上がって盛り上げる。豊田が確認すると意外にも初見が多いが、そうは思えない盛り上がり。お馴染みの”中華料理コールアンドレスポンス”も声が出ていたし、「今日イチの声で!」と促しての「ツタロック!」と叫ぶコールアンドレスポンスも決まっていた。謝謝の後、「まだまだ満腹にしていくぜ!」と豊田もギターを持ち、トリプルギター編成となって『君が好き』へ。ステージを見て思うのは、実際は緻密に考えられているはずだが、ステージ上では本当に5人が5人、気ままに演奏やコーラスをしているように見えること。王道ポップながら、次どんなノリでくるか分からないワクワクで、先の読めないエンタメ。でも仲良しな友達と遊んでいる時に「次どんな手でくるか」とか考えないもんね。頭でなく、心で許して楽しめる音楽。終盤の聴かせるパートではじっくり聴かせるし、5人がガチッと合わせた時のエネルギーは相当なものがあった。
豊田が地声で「サンキュー」と伝えてMCへ。良い感じとしつつ「まだまだいけるっしょ?まだ本当の自分見せられてないでしょ?」と高める。「自分が最高に気持ちいいと思える楽しみ方をしてもらえればと思います!」と告げて『おねがい神様』へ。サビの<ねぇねぇねぇねぇ神様>のリズムに合わせて上がるフロアの拳は、神様の部屋のドアをノックしてるようにしか見えない。この愛らしさに包まれたフロア、神様も引き摺り出されたら踊り出すでしょう。続く『愛の病』は豊田がアコースティックギターを鳴らして始まったバラード。そのメロディと歌詞中のオノマトペが心を温かくする。そしてその歌詞の愛は、今日ツタロックで出会った人にも向けられているようにも聴こえる。この時間を経て、パーカーズと互いに解けない愛の病にかかった。
感動に包まれた中、最後のMCへ。「一緒に今日楽しんでくれてありがとうございます。この日をずっと楽しみにしてたから、Xでみんながどんな気持ちで足を運んでいるのか調べてみたんだけど、「パーカーズ楽しみにしているよ」とか、目当てじゃない人も「今日楽しむために一生懸命頑張ってきました」とか、すげぇ心があったかくなりました。そんなイベントに出れているのが心から嬉しい。俺は運命っていうのをすごく大事にしてるんだけど、もしかしたら今日が、あなたと俺らのきっかけになる日だと期待しちゃってます。だからどうかまたライブハウスで会えたらいいなと思ってます。今日は一緒に色々な表情見せてくれてありがとう。めちゃめちゃ楽しかったです!」と万感の思いを伝える豊田。そしてラストはタクオ(Ba)、ナオキ(Gt)、ねたろ(Gt.Cho)、フカツ(Dr)も豊田と同様の思いがあることが分かる渾身の一音を鳴らして『運命の人』を演奏。最後までクラップとフロア全体からの合唱も止まらなかった。その光景に豊田も「すごいね!」「ありがとう、出会えてよかった!」と反応。互いに心からの感謝が飛び交うハッピーな空間のままライブは終了。この空間に、もう病みつきです。
<セットリスト>
1. 中華で満腹
2. 君が好き
3. おねがい神様
4. 愛の病
5. 運命の人
夕方と猫、地道にフィクションを現実に変えてきたロックバンドの強さを示す

夕方と猫(Photo by Ryohey Nakayama)
念願のツタロックDIG初出演となった夕方と猫。開演してすぐ、フロアにいる私に「COSMIC STAGEってあっちですか?」と聞いてきた夕方と猫のファンがいて、教えると勢いよく駆け出していった。バンドにとっての目標が、ファンにも大事にされていると感じた。
リハーサルから全力の演奏を見せていた彼ら。本編も熱い熱量のまま、代表曲『日常侵略』から開始する。フロアも曲中の<バーイ>の合図で手を高く挙げて応え、秋宗亮太朗(Vo)も「いいね!」と返す。小木曽真裕(Ba)と八木遥香(Dr)によるリズム隊のアグレッシブな演奏、「スーパーギター!」と紹介された久野(Sup.Gt)のギターソロも、しっかり会場を掌握していく。それを決して離さまいと、より力のこもった繋ぎの演奏と「運命を自分の手で掴み取るためにやってきた!」と秋宗が叫んで『革命ランデブー』をドロップ。ミステリアスで中毒性のあるサウンドと、ライブならではの熱が合わさり、夕猫の色に染まっていくSpotify O-EAST。最後には<ラッタララ タララタララ>のシンガロングも起こった。まだまだ演奏を畳み掛ける彼らは「初出演だか何だろうが!ステージに立つからには一番カッコいいバンドをやりに来た!」と告げて『どうしたらいい?』へ。捲し立てるリリック、不安感を煽るようなサウンド、ダメ押しで秋宗の気怠けに届ける<はい、最高>がカオスな空間を作り上げた。
MCでは秋宗と小木曽が「やっと出れて、めちゃめちゃ嬉しい」と話す。過去にはオーディションにも応募したが出れなかったとのこと。そして「DIGるって新しいアーティストに出会うことだと思うけど、俺たちも会いに来てます。出たかったイベントで、そこで出会える人達を楽しみにしてました。次はこの夏に向けて作った最新曲です。どうぞよろしく」と伝えて『人間予報』を披露。さらに絡み付き度が増したサウンドと歌詞は、叫びたくても叫べなかった人間の叫びを代弁しているよう。長い間覚醒できなかった瞳が開いてしまうような楽曲だった。カオスさだけでなく、ディープさも加わった空間に鳴り響いたのは八木の力強いドラムソロ。そこに徐々に久野のギターと小木曽のベースが絡み、一瞬生まれた静寂で秋宗が<バーカになっちゃいな>と呟いて『バカになっちゃいな』をプレイ。めくるめく展開にフロアも虚をつかれた感じもあったが、サビではしっかり拳が上がり、シンガロングも起きる。曲中の秋宗の言葉だけでなく、小木曽の強く訴えかけるステージングも拍車をかけていた。
最後のMCで「ツタロック楽しんでますか!」と問いかけると沸き立つフロア。感謝を伝えた後「活動5年目になって、同期のバンドがこのステージに立っているのを何回も何回も見てきました。音楽なんか辞めて違うこと始めたほうがいいんじゃないかと思う瞬間もあった。でも今ステージに立っているのは、才能とかじゃ揺るがせない”音楽が大好き”という気持ちがあるからライブやってる。この大好きな気持ちの果てが楽しいかどうかは分からん。分からんけど、その気持ちを信じた先にツタロックのステージに立っているということ!1つ1つ積み重ねてきた俺たちだから言えること。大好きなものが人間にとってどれだけ大事なものかということは自信を持って言える!その気持ちを持ってほしいのと、1つ1つ積み重ねてきたバンドのライブがどれだけ背中を押すカッコいいものか見せて帰ります。夕方と猫でした!」と伝え、『Fiction→Nonfiction』を最後に届けた。それまでのカオスさとは違った晴れやかで希望に満ちたサウンドが突き抜けていく。夢や目標を苦しみながら現実に変えてきたロックバンド。最後に秋宗が「苦しくなったら、いつだって会いに来い!」という言葉は、絶対背中を押してやるという自信に溢れていた。
<セットリスト>
1. 日常侵略
2. 革命ランデブー
3. どうしたらいい?
4. 人間予報
5. バカになっちゃいな
6. Fiction→Nonfiction
Laughing Hick、惚れずにはいられない愛と躍動に溢れたライブ

Laughing Hick(Photo by キラ)
たいち(Dr)は雄叫びを上げて登場!あかり(Ba)とホリウチコウタ(Vo.Gt)も揃い「全員で作り上げよう!クズな男のラブソングを!」と言って『愛してるって』を歌い始める。3人はステージを大きく使い、クラップが鳴り響く中、躍動感のあるステージを見せる。歌詞を聴けば<ビッチ>とか<ヤロうかな>とか歌っているのに、その躍動感やタフなリズム、ホリウチの伸びやかなボーカルとあかりのコーラスのバランスで爽やかに聴こえて良い気分。あら、私もう騙されてる?
たいちが「全員手を振っていこうぜ!」と始まった『ホンネ』では、中央に移動したあかりの動きに合わせて楽しく手を振るフロア。歌詞にも紡ぐたびにリズム感が増していく工夫が感じられて、隙のない一体感が生まれていく。曲を終えても、そのままリズム隊のビートとクラップは鳴り続け「今日一番盛り上がる準備できてますでしょうか⁉︎ツタロック!」とホリウチが聞くと歓声が上がる。そして「エロくて踊れるナンバーを」の紹介から『休憩と宿泊』をスタート。照明も相まって一層艶かしさが増している。そんな中でもたいちが「ジャンプ!ジャンプ!」と煽り、火照る体を冷やさせない。まだまだ本番は続き、明快なドラムビートから新曲『マカライト』へ。<気持ちいいとこだけ教えて>という歌詞もさることながら、野生味のあるサウンドが本能を刺激する。それなのに<行かないで 消えちゃ嫌だよ>と懇願するホリウチの歌声が、とても誠実に聴こえるから「もう…」となる。あら、私また騙されてる?
まだまだ熱狂は続く。「毎日毎日楽しいことばっかじゃないから!ツタロックに来てんだろ!?︎恥ずかしがってんじゃねぇよ。馬鹿騒ぎしようぜー!(ホリウチ)」と始まった『愛なんて嘘は置いといて』では、もう手だけでなく頭をしっかり振って楽しんでいるお客さんの姿が後方にも確認できる。それでもホリウチは「手拍子くれよ!」と煽りが止まらない。ただ「最低で最高なラブソングを」と言って始まった『女だから』では、フロアからサビ前に<しまおうか!>と大きな声が上がる。これにはホリウチも「いいね!」。でも欲しがるホリウチはラスサビ前に「今日一番でかい声頂戴!」と要求。特大の<しまおうか!>を返すフロア。「よくできました」とホリウチ。まぁこんな楽しい空間を作ってしまう3人には何でもしてあげたくなるよね。もう騙されててもいいや。
ここまでノンストップで来たため、ここで最初で最後のMC。ホリウチが「最高に気持ちいい」と伝えた後、「今年はメインステージに立てたことを本当に嬉しく思いますし、アーティスト思いな最高に愛のあるイベントなんですが…3月に行われた本編のツタロックフェスを見に行かせていただきまして、お客さんとしてフェス飯を食べていて、たいちが離れて俺とあかりが2人になった時に、ある女の子が「Laughing Hickのあかりさんですか?写真撮ってください」って…(ホリウチは気付かれなかった)。初のツタロック、こんな気持ちになるのかって…笑。近い将来、本編でその時の借りを返せればいいなと思ってますので、これからも応援よろしくお願いします!」と伝えた。そして「今日見に来てくれた人、ツタロックのチーム、対バンしている仲間たち、沢山の出会いが詰まっていると思います。誰一人欠ける事なく、残りの3分半、今ここにいるあなたのことだけを思って、1曲贈って帰ろうと思います。沢山の出会いをくれた大切な曲を」と『カシスオレンジ』を届けた。サビで優しい光がフロアを包んだ時、深いところでこのバンドと繋がったと思ったし、”愛してる”は言わなきゃ届かないと感じた。Laughing Hick、愛してる。
<セットリスト>
1. 愛してるって
2. ホンネ
3. 休憩と宿泊
4. マカライト
5. 愛なんて嘘は置いといて
6. 女だから
7. カシスオレンジ
猫背のネイビーセゾン、This is ネオンロック

猫背のネイビーセゾン(Photo by キラ)
「そろそろ本気出しませんか?」
リハーサルの時、井上直也(Vo.Gt)はフロアへそう言った。いやいや今日は結構熱く、攻撃的なライブがここまで続いている中でそれを言う自信。ただリハーサルからダンスロックの魔法をかけていたのも事実。”神戸、夜を彩るネオンロックバンド”は本編でどのような姿を見せるのか。ステージ上にはオリジナルの電飾と、恐らくおかともき(Ba.Cho)が書いた絵がセッティングされていた。
本編が始まると「初めましてツタロックDIGライブ。皆さんのことをジャンジャン踊らせに参りました!」と井上が叫び、「オイ!オイ!」と強い掛け声や「飛べ!」とジャンプを煽るステージ上の4人。どこまでもボルテージを上げて上げて『kimiOS』へ。お立ち台に上って、どんどん迫ってくるような音を出す横山大成(Gt)とおか。井上や横山はマイムを使って全身で表現するし、おかは巻き舌しながら高く足を上げながら演奏するし、何より石坂圭介(Dr)のドラムは鳴らす音が強くて、そこに当然フロアのクラップや掛け声も大きくこだましているから、会場の音の充足率が120%になっている。まだ1曲目である。「まだまだ踊れますかー?O-EASTを悪魔のビートで乗っ取りに来ました!」と言って始まったのは『Demonize』。今度はとにかくジャンプせずにはいられなくなる。ステージ上の4人もファンキーに楽しんでいて、とても初登場には見えない。COSMIC STAGEが小さく見えてたまらない。
MCでは感謝を伝え、自然体のメンバーのやり取りを見せた後、おかが「ノリの良い皆さんで最高です。僕らのことを初めて見た人いますか?」と尋ねると、意外にも多い。「出会ってくれてありがとう。初めての方に分かりやすく説明すると、我々は”ネオンロック”という独自のジャンルを掲げております。胸の奥底でキラキラと煌めくものを芸術に変えた、それがネオンロックというものです。今日は我々の最高のネオンロックで、最高のあんたらと、最高の遊び場を作っていきましょう!」と伝えると、また爆音の前奏を鳴らし「踊る準備できてますか⁉︎遊ぶ準備できてますか⁉︎それではいきましょう、合言葉は…『ウェイティン‼︎』」と3曲目に繋げた。曲中に何度かある<Oh~>となるところ(実際には<妄>や<想>や<Low>という歌詞)では、フロアも自由なポーズを取っており、ネオンロックの楽しみ方を早くも熟知した模様。ギターソロを鳴らす横山や石坂の表情も良いし、おかも「いいねいいね!」と応える。
ここで映画の上映アナウンスのようなSEを挟み『偽り切ないな』を届ける。「ネオンロックであなたの心を照らします!」と井上。猫セゾの音の輝きって明るいだけでなくカラフルだから奥まで届く。三原色を音色で巧みに操る技術と、ライブでは抑えきれない衝動を誰よりも率先して出しながら、ちゃんとフロアの表情も見ている4人の姿には、信頼して心を預けたくなる。それは最後の曲の前に「まだまだ踊れますか!」と尋ねた時に大きな声が返ってきたことも証明していた。そしてお待ちかねと言っていいだろう『DANDANDANCE』。終始頭上高くクラップし、体を飛び跳ねさせて、最後は全員でピース!
途中にも書いたが、とにかくCOSMIC STAGEが小さく見えた。それは4人の堂々たるステージングと畳み掛けるネオンロックに潰されているようにも見えたから。次のダンスホールはでっかいステージで頼みますよ、ツタロック。
<セットリスト>
1. kimiOS
2. Demonize
3. ウェイティン‼︎
4. 偽り切ないな
5. YOURSTAGE
6. DANDANDANCE
Conton Candy、知名度抜群のナンバーが揃った前半とライブバンドの本領発揮の後半

Conton Candy(Photo by Ryohey Nakayama)
<夜はあなたの返信が早いから>と1曲目『ロンクスカートは靡いて』の歌い出しが聞こえた瞬間に、すぐさま揃ったクラップが響き渡る。囁くような紬衣(Vo.Gt)のボーカルと楓華(Ba.Cho)、彩楓(Dr.Cho)のコーラスのハーモニーが心地よい。ただサビに入る直前に紬衣が「始まってんだよ!ツタロック!」と叫ぶと一気に加速するO -EAST!歌っているときはもちろん、間奏では楓華も紬衣もセンターに行って演奏し、その熱量を高める。最終盤はフロアに「歌えるかーい!」と呼びかけて大合唱。人生でこんなに大きな声量で<自転車>というワードを聴いたのは初めてである。「最後までよろしく!」と紬衣が伝えて大歓声が起こった後、楓華と彩楓の鳴らすビートに合わせながらクラップするフロア。「ツタロック調子どうですかー!平日からライブハウスにいてくれてありがとうございます!オレンジ色に染まる準備できてますか?」という紬衣の言葉から『ファジーネーブル』へ。すっかり芳醇な匂いをまとった代表曲。その魅力はライブハウスの距離感だと、さらに良いんだよ!と言わんばかりに紬衣はステージの端まで動きながら演奏する。こちらの曲でも最終盤はフロアと大合唱。それに紬衣は「ありがとう!」と伝えていた。続く『普通』は、その人にしか吹かせれない感情の風を肯定してくれるような温かみのあるナンバー。「あなたの隣で笑っていたい!」と叫んで、前半を締めた。
MCで紬衣は「写真フォルダを見返すと、2023年8月にあっち(COSMIC STAGE)のステージでトリをやらせてもらったタイムテーブルが出てきました。私は主催者やイベンターさんの顔の見えるイベントが本当に大好きです。普段はニコニコして私たちにしゃべりかけてくれるけど、実際このイベントや幕張でのイベントも、どんな壁がいっぱい待ち受けて(それを乗り越えて)伝説と呼ばれる1日を作っているんだろうって思います。心の底からリスペクトさせてください。そして1バンドマンとして、1アーティストとして、言葉を発する人間として、ちゃんと今日は音楽で、言葉で、Conton Candyがここに呼ばれた意味、立たせてもらう意味を、作りに来ました。最後までついてこれますか、O-EAST!」と改めて決意を伝えて、フロアも応える。「ツタロック大好きな人どれくらいいんの⁉︎ライブハウスで見せてやろう!」と叫び、最新ナンバー『スノウドロップ』を演奏開始。彷徨いながらも”伝えたい”という気持ちを持つことは美しい。ライブハウスで聞くと、先ほどのMCと重なりステージで音楽を伝える者としての覚悟を感じられて、また違った胸の打ち方。こういう新鮮味があるから生のライブっていいんだよな。
そして「お待たせしました。ライブハウス・Conton Candy始めます!」と紬衣が爆破宣言。リズム隊の音も一層重くなり『102号室』『爪』『ライブハウス!』の約10分間はフロアをリズムよく踊らせたりしなかった。煽りも含めて、とにかくがっぷり四つ。燃え盛っていく炎に愛情を込めて油を注ぎ続けた。途中「ロックバンド・Conton Candyとして、また幕張で会いましょう」と告げていたが、その時に焼き付く姿も今日と同じように、有名曲やアニメタイアップ曲を鳴らす彼女達でなく、この泥臭い姿だと思う。
<セットリスト>
1. ロングスカートは靡いて
2. ファジーネーブル
3. 普通
4. スノウドロップ
5. 102号室
6. 爪
7. ライブハウス!
鉄風東京、仙台のロック侍と共鳴

鉄風東京(Photo by Ryohey Nakayama)
1曲目の『Dazzling‼︎』の1音目から大音量!数回鳴らして残響の中「ライブハウスなんで、あんたの好きにやっていいです。それを肯定しに来ました」と大黒峻吾(Vo.Gt)が伝え再爆音。あまりに男臭いガテン系パワーが押し寄せる。照明も終始シンプルで、言ってしまえば彩りはない。でもそれでいい。こっちは鉄風東京の出す肉と飯だけ食いに来てんだと力強く拳を上げるフロア。『TEARS』ではドラムだけでなく颯(Dr)のコーラスが魅力を伝える追い風となっているし、クールにギターソロを決めるSougo(Gt)、そしてこの力強さをしっかり支えるmuku(Ba)のベースと、各々の役割を全うする姿を見せる。フロアからはシンガロングも起こり、そのまま『遥か鳥は大空を征く』を畳み掛ける。ここでも「めっちゃカッコいいギターソロ覚悟してください」という大黒の言葉と共に、Sougoが屋根を突き抜けるようにギターソロを響かせる。最後に「絶好調ー!」と大黒は叫んだが間違いない。
MCで大黒は「主催者さんに挨拶した時、「今日、鉄風東京に〝侍”になってほしいです」と言われて。侍かぁ。今日はいろんなバンドが沢山いて(鉄風東京は)異色だなと思ってたんですけど、それを分かってて、ここにブッ込んでくれたのが嬉しくて。そういう煌めきを信じている大人がこういう日を作っているのが、超カッケェと思います。俺らもそれに似合うライブするんで、よろしくお願いします」と話す。そして遠くにも見えたフロアの拳に感謝し、「楽屋にも手紙があって、そこに「次世代のヒーローになってほしいです」と書いてありました。その次世代っていつ来るんですかね?俺は今日だと思ってます!」と宣言し、この日に配信された新曲『In YOURS』を披露。変わらない爆音で重いイントロを鳴らしながら「ライブハウスへようこそ!」と伝えたこの曲は、ホーム仙台から全国のライブハウスへ車を走らせ続けた彼らだからこそ、ここまで輝く歌。そして「さっき友達のConton Candyが愛のあるツービートをやってたんですけど、俺らもやります」と渾身の2ビートナンバーである『Sing Alone』を演奏。こういうバンド同士のぶつかり合いを感じるコミュニケーション。なんかもう混ぜてくれてありがとうございます。共に爆ぜさせていただきます。
最後のMCで大黒は「きっと求めていたものがあって、抱きしめたいものがあって、それの連続でバンドが続いて。涙が出るくらい辛いことがあっても、それでも信じた音楽を、街を、その向こうをずっと見据え続けて。ステージの大きさなんて実は関係なくて。俺らきっと、知ってるバンドだから盛り上げたいとか、ただそれだけでしか盛り上がれないはずじゃないんですよ。なんでかって俺らは今ライブハウスにいるから。生のバンドを見て、生のバイヴスを感じて、それを見て心が揺れたから、今俺はここに立ってます。あん時にTSUTAYAでCDを借りて、みんなが分からない音楽を聴いて、ギターを始めた日も全て肯定されて、それが繋がっていく。長い道のりも、きっと音楽があれば大丈夫。きっとそれで俺ら分かり合える。歳月じゃないです。その一瞬の煌めきを信じてます。その煌めきをみんなに渡したい。よろしくお願いします」と伝え、『21km』へ。彼らが高校時代から大事にしてきた楽曲だが、その迸るエネルギーはいつまで経っても消えない。むしろ増している。それは1つ1つのライブの思い出が乗っているからだ。
最後は予定していたセットリストを変更し『咆哮を定め』を届けた。<やりたいようにやるんだ>と歌っているが、そこには覚悟や責任があることを、彼らも痛感してきただろう。だからこそ彼らの掲げる武士道ならぬバンド道は信じられる。この日フロアにいた、それぞれのフィールドで戦う侍よ。受け取った煌めきで、己が刃を研いでいけ。
<セットリスト>
1. Dazzling!!
2. TEARS
3. 遥か鳥は大空を征く
4. In YOURS
5. Sing Alone
6. 21km
7. 咆哮を定め
NELKE、あなたの胸の中で何度でも咲き誇る音楽を届ける

NELKE(Photo by キラ)
1曲目『花図鑑』の始まりを静かに歌った後、「ツタロックDIG…長丁場だったでしょう!昼から見ているみんな!私も同じ。だけどこの沢山の最高のバンドの中で見つかりに来ました!ついてこれるか、渋谷ーーー!」とRIRIKO(Vo.Gt)が叫び、NELKEのライブが始まる。シリアスさと刹那感、そして非常に華やかさのある楽曲を、ステージ上の5人は時にお立ち台の上で情感たっぷりに伝える。フロアからはクラップもずっと鳴っていたし、マツモトシオリ(Key)の要求もあって、拳も掲げていた。そして最後の1節を静かに歌い終えると、演奏がスパーク。音が降り注ぐ中「あなたと音楽をしに来ました!改めまして、NELKEです!」とRIRIKOが伝え、『虹の色よ鮮やかであれ』をスタート。一気にテンションが上がる曲で、始まる前には後方にいたマツモトがお立ち台に上がってクラップを煽っていた。Kei(Dr)も立ち上がっている。タケダトシフミ(Ba)、伊藤雅景(Gt)も当然前線に出て演奏し、グルーヴが上がっていく。かつて「RIRIKO BAND」として活動していた時期もあったが、この華のある演奏する姿のライブを見たらすぐ分かる。このバンドはRIRIKOだけでなく、5人全員、そしてその巻き込む力でフロアの1人1人を主人公にする音楽だ。
MCでRIRIKOは息を切らしながら「感謝が止まりません!」と伝え「この渋谷という街で、あなた達の力を信じてもいいでしょうか、EAST!」と問いかけるとフロアも応える。そこから『punk town』を投下。静と動のある楽曲を、感情を擦り減らすように歌うRIRIKOは時にフードも被ったり、頭を抱えたりしながら歌ったりと体全身で表現する。伊藤のギターソロもあれば、タケダ、Kei、マツモトにピンスポを当てるシーンもあるなど、チーム全体で届ける。そんなメンバーを紹介するシーンから始まった『バイバイアクター』は、会場から掛け声も上がり、さらに一体感が増す疾走感のあるナンバーだった。
休む間もなく不穏なEDMが流れて「私たちの音楽を、DIG…見つけ出してくれて…そして今、同じ時間を一緒に作ってくれて本当にありがとうございます、渋谷。私たちにしかない音がきっとあるはずなの。その全部を出すから…あなたに喰らわせてもいいですか⁉︎」とRIRIKOが伝えると、どんとこい!という反応のフロア。「あなた達とこのまま一緒に!歩んできた音楽を喰らいましょう」と残し『カレンデュラ』へ。妖しくも印象的なキーボードの音色を含んだ激しいメロディと共に、1人1人の心にNELKEの花が咲き誇る。あぁ、これでもうNELKEと運命共同体だな。終始狂喜乱舞とも言えるようなフロアの盛り上がりを見せていた。
最後のMCでは「これだけ素晴らしい日ができているのも、あなた達のおかげと思っていいですよ。皆さんに拍手を!」と温かい拍手の鳴る時間を作る。そして「こうやって憧れの景色って出来上がっていくんだなと思っています。これからもよければ音楽という絆で私たちと同じ景色を見ていきましょう!」と告げて、『Incarnation』を届けた。何度でも立ち上がって、咲いてみせる。決して平坦な音楽生活ではなかったのが分かる<大丈夫>という歌詞の説得力。決して諦めない”再生のロックバンド”NELKEをしっかり喰らった。最後は全員で歌い、RIRIKOはピースサインを掲げ「絶対またお会いましょう!」と約束してライブは終了した。
<セットリスト>
1. 花図鑑
2. 虹の色よ鮮やかであれ
3. punk town
4. バイバイアクター
5. カレンデュラ
6. Incarnation
the paddles、優しさと愛で抱きしめるロック

the paddles(Photo by キラ)
COSMIC STAGE本編のトリを務めるのは大阪の寝屋川VINTAGEからthe paddles。会場にはNELKEの余韻も残っていたし、柄須賀皇司(Vo.Gt)も「NELKEすごかったなー」と言っていたが、その熱を受けてしっかり盛り上げたのは、さすが10年以上ライブハウスで誰よりも優しいロックを鳴らし続けたきたバンドだと思った。
『みんなのことを笑顔にしに来ました!」と『プロポーズ』からスタート。ここまで楽しんできた体をギュッと抱きしめるような楽曲は「最後まで楽しもう!」という気力をさらに増幅させる。「ツタロックよろしくー!」と挨拶した後、松嶋航大(Ba)と渡邊剣人(Dr)のタイトなビートが鳴り響き、柄須賀の「手拍子もらえますかー!」という言葉もあってクラップを巻き起こす。「最後まで残ってくれてありがとう!さっきも言うたけどやな、俺らもド頭から見て疲れてます。でも最高な音楽のおかげでめちゃめちゃパワー漲っているんですけど、皆さんついてこれそうですか⁉︎」と聞くとしっかり反応するフロア。「このステージ。最後を任せてもらったということは、いつも通りではダメなことは分かってます!いつも以上⁉︎それでもダメ!今できる最高のライブをします!踊ろうか!」と言って『WARNING!』で揺らす。松嶋は今にでも落ちそうなくらい動くし、渡邊のドラムもダイナミック。そりゃこんな2人とやってるんだったら柄須賀も「あれ?こんなもんですかツタロック!」と煽るのも無理ない。後方までしっかり踊らせてフィニッシュした。
MCでは「元気そうで何より」と安心と感謝を伝える柄須賀。ここで柄須賀は元々TSUTAYAでアルバイトしていたと明かし「ツタロックのコンピCDを貸し出す側だったのに、今回出演側で嬉しい」と話す。それだけでなく音楽との出会い自体も母親がTSUTAYAで借りたCDで作ったMDから流れる音楽だったとのこと。そんな深い縁を話し「今日COSMIC STAGEに立ったバンドはずっとライブハウスで勝負し続けている仲間ばっかりで、その最後を任せてもらえるのは、ここまでやってきた甲斐があって嬉しいです。ありがとうございます!」という感謝と「このステージではまだまだ歌い切れないことがある。もっともっと大きなステージ、あえて口にするなら幕張メッセが見えるライブをします」と伝えると拍手が起こる。そして「ライブハウスでやってきたからこそ歌える歌を」と『予測変換から消えても』を演奏した。言葉がハッキリと優しく届くミディアムバラードは、ここまでの出演者の熱とは違うが、全組のお客さんへの気持ちを代弁しているようで、最後を任されたバンドの風格を漂わせた。それは「素直に大切な人に会いたいって言えないから、音楽というものに全てを託す」という言葉で始まった『ブルーベリーデイズ』からも感じ、会場は優しい気持ちに包まれた。
続けて「俺と音楽を出会わせてくれたオカンの歌、歌います!」と叫んで『愛の塊』へ。しっかりフロアも団結力を持って楽しんでいる。この景色の一部になれたことは、きっとお盆に帰省した時に家族へ良い土産話になったんだろうな。最後はライブバンドのナンバー『25歳』。ライブハウスへの愛や、好きなことを続けることへの言葉が溢れたツタロックDIGだったが、この曲と最後まで力を振り絞ってライブするthe paddlesの姿は、その全てを包括しているようだった。
<セットリスト>
1. プロポーズ
2. WARNING!
3. 予測変換から消えても
4. ブルーベリーデイズ
5. 愛の塊
6. 25歳
なきごと、何よりも”あなた”のために、音楽を鳴らし続ける

なきごと(Photo by Ryohey Nakayama)
トリを務めるのは7月にメジャーデビューを果たしたなきごと。水上えみり(Vo.Gt)、岡田安未(Gt.Cho)の2人に、奥村大爆発(Sup.Dr)、山﨑英明(Sup.Ba)、高田真路(Sup.Key)の3人を加えた5ピース編成で臨んだ。
「トリを任せてくれてありがとうございます。なきごと始めます」という水上の言葉から『愛才』がスタート。キュートでファンシーな音楽で会場を包み、会場もクラップやハンズアップを見せるが「何だか元気ないなぁ?疲れちゃった?そんなことないよね?」と物足りないご様子の水上。いやいやサウンドが味わい深くて浸ってるんですよ、と思っていたら、岡田が刺激的なギターソロをお見舞い!きっちり細胞を活性化させて会場の温度を上げ、最後は水上も「ありがとー!」と伝えた。続いて「よろしくどうぞ、お手を拝借」とハンドマイクとなった水上がクラップを要求し、お立ち台で叫んで始まったのは『0.2』。水色と紫色が交わる照明が、とてもなきごとらしい誘惑的で沼る世界観を作る。その中で先程よりアッパーで攻撃的なサウンドを鳴らし、水上も「来いよ!」とさらに煽る。この情緒の揺さぶり、彼女達でしか味わえない特別感だ。
MCで最後まで残ってくれたことへの感謝と「精一杯あなたに届けに来たので、どうぞよろしくお願いします!」と伝え始まったのは『マリッジブルー』。同期を用いたミステリアスなバンドサウンド。水上もステージ上に水溜まりがあって、それを飛び越えるように弾みながら、指先にまで感情を入れて歌っていく。なきごととフロアで秘密のPOPを共有する濃密な時間が流れ、これには「良いねぇ!最高だよ!」とご満悦の水上。続く『グッナイダーリン・イマジナリーベイブ』では再び水上もギターを持ち、岡田と2人でお立ち台で弾く。高田のキーボードが繊細な美しさを出しているナンバー。少し水上にはハプニングもあったようだが「力借りていい?」と言われたフロアの歌唱もあって、ライブらしい特別な空間を作っていた。そこからリズム隊のビートとフロアのクラップ、そして徐々に色付いていくサウンドをBGMにしながら「ツタロックは活動当初からずっとずっとずっとずっと応援してくれてて、一緒に年を取ってきたなと思っています。呼んでくれてありがとうございます!」と力強く感謝を伝え、「ツタロックコンピに入れてもらった曲を、あなたと一緒に」という言葉から『メトロポリタン』を披露。さすがのシーンの定着度で、唯一無二のギターロックの緩急と浮遊感でも、フロアの一体感は今日イチのものがあった。
そして最後のMC。出会ってくれたことに感謝を伝え、改めてバンド名について説明すると共に、メジャーデビューを報告すると大きな祝福の拍手が鳴り響いた。水上は「私は今、目の前にいるあなたに歌を受け取ってもらえていることが嬉しいです。直接聴きに来てくれて、直接音楽を受け取りに来てくれて本当にありがとうございます。今日出会ってくれたあなたにとっても自慢のバンドであり続けます。あなたの中の最高のバンドを更新し続けます。あなたと一緒に夢を見ていきたいし、いつか夢を叶える瞬間にあなたがいてくれたら、私は嬉しいなと思って、次の曲をあなたに歌います」とメジャー1st EP収録曲の『短夜』を届けた。いろんな思いで窮屈な頭の中を1つずつ整理してくれるような夢遊感のある曲。それはこの大きなステージでも1対1で聴こえており、なきごとの鍛え上げてきたライブ力を感じさせた。そしてラストナンバーは『癖』。圧倒的な音と光で包み込む壮観さはこの日のエンドロールにピッタリ。これからもライブハウスで音楽を続けていく決意も伝え、ライブは終了した。
今日はこれで終わり。でも私達がいる限り、明日以降も音楽は側にあるから、安心して眠りについてね。そんなメッセージを感じるトリのライブだった。
<セットリスト>
1. 愛才
2. 0.2
3. マリッジブルー
4. グッナイダーリン・イマジナリーベイブ
5. メトロポリタン
6. 短夜
7. 癖
Luov、Closing Actって、新しい朝の扉を開けることだ

Luov(Photo by Ayumu Kosugi)
Closing Actを務めたのはLuov。今年2月28日始動の新星が熱い1日を締める。
フロアがクリアなサウンドのSEに合わせてクラップする中、サポートメンバーを含めた5人が登場。HALDONA(Vo.Gt)が「Luovです!よろしくお願いします!」と元気よく挨拶し『大脱走計画』がスタート。これから全速力で走り出すぞ!という予感のあるサウンドにさらにクラップは早くなり、音を完全に解放した瞬間にキラキラとしたロックサウンドが駆け抜ける。「残ってくれてありがとー!」とHALDONAは感謝していたが、その喜びのパワーも乗っているのだろう。それにつられるように初見が多いはずだが、途中のコールアンドレスポンスもビシッと決まり、Takakuzo(Trackmaker)の気合の入った声も上がる。そんなギアが上がったまま、Natsumi(Dr)の止まりたくても止まれないようなウキウキしたドラムのビートから、2曲目『フル無視ベイベー』へ。「みんなで踊れる曲(HALDONA)」という言葉の通りのナンバーをステージもフロアも楽しみ尽くしていく。
MCでHALDONAは今日は昼から見ており、こんな素敵な1日のラストを任せてもらえることを光栄と話した後、「初めて見たよって方にもLuovの音楽が届くように、魅力が伝わるように、今日この空間を一緒に楽しんでいけたらなと思います!」と伝えると、大きな拍手が起こった。そしてドラマ主題歌に起用された『透明シャボン』へ。瑞々しくも、どこか憂いのある涙色のようなサウンドで会場を染めていき、サビでは手を横に振り、一体感を高める。HALDONAの無垢な歌声から生まれる湿度感に心地よさがあり、代表曲としてこれからもよく耳にすることになるだろう。
最後の曲の前に、HALDONAは改めて出会ってくれたことに感謝して「私はいつも思っていることがあって…ここにいる皆さんそれぞれに暮らしがあって、人生があって。日々の中で楽しいことよりも、ちょっと疲れちゃうことやしんどいなってこともあると思うんです。そういうことも今日で忘れられるようなイベントになればいいなと思うし、Luovの音楽もライブも全部苦しさを忘れられるような場所になっていければと思っています。これからもLuovの曲を届けていくので、よろしくお願いします!」と伝える。「また日常に戻った時もライブハウスで会えますように。最後に必死でもがいて生きている私たちに向けて書いた曲を」とバラード曲『てんつなぎ』を届ける。<あれじゃない これでもないって 選んだ先で描いてた未来に出逢えたらいいな>という歌詞は、今日ツタロックを選び、楽しんだ1日は、良い未来の選択だったと再認識させてもらえた。そして新しい朝への扉を開くようなドラマチックなクライマックス。Luovがこの日の最後を託された理由の分かるライブを見せて、ツタロックDIGライブvol.18が終了した。
<セットリスト>
1. 大脱走計画
2. フル無視ベイベー
3. 透明シャボン
4. てんつなぎ
この日のツタロックDIGは主催者のライブハウス愛が伝わるブッキングだった。そこに求めているもの以上のものを月追う彼方から出しに出しまくっていて、積み上げてきた汗のエネルギーを感じる日だった。それを最後にthe paddlesが優しくまとめ上げ、なきごとがそんなロックバンドを信じていいよ、と最上級の安心感を与える流れが美しい。Luovもしっかり明日への扉を開けて待っていた。
この日は間違いなくライブハウスの扉を軽くする日になった。今日のことを思い出して、日々の生活にライブハウスの部分がまた増えると嬉しい。
<イベント情報>
ツタロックDIG LIVE Vol.18
2025年8月6日(水)Spotify O-EAST
料金 4900円(全自由・入場整理番号付・ドリンク別・税込)
開催時間 開場/開演/終演:12:30/13:30/20:40 ※変更可能性あり
主催・企画 CEミュージッククリエイティブ株式会社
制作 株式会社シブヤテレビジョン
協力 Rolling Stone Japan
問い合わせ 03-5458-4681 (Spotify O-EAST)
公式HP https://cccmusiclab.com/tsutarockdig18