CLAN QUEENのライブツアー「2nd ONE MAN TOUR "NEBULA"」が、8月23日にKT Zepp Yokohamaで行われた追加公演をもって壮絶な終幕を迎えた。

6月にリリースした2ndフルアルバム『NEBULA』と同じタイトルを冠した今回のツアーには、アルバムと同じように、自己、または、自分らしさを知ること、という極めて内省的なテーマが貫かれていた。
今回のツアーの観客は、誰一人として傍観者でいることが許されず、一つひとつの楽曲を通して自分らしさを巡る自問を重ねていくことが求められた。CLAN QUEENの3人は、そして、一人ひとりの観客は、その自問の繰り返しの果てに、どのような境地へと辿り着いたのか。この記事では、追加公演の模様を順を追ってレポートしていく。

開演が迫る頃、「間もなく開演です」「全神経を研ぎ澄ましてお楽しみください」というアナウンスが、超満員の会場に響き渡る。そして、ダークで幻想的なSEのボリュームが次第に大きくなっていく。心の中を、静かな高揚が満たす。そして暗転。最初に耳に入ってきたのは、「私は孤独だ」という切実な言葉。朗読は、こう続く。「どんなに慈しみ、愛し合おうとも、腹の底を知ることはできないのだ」「ただ、私には分かる。深い森の中で微かに照り込む心が。人が生み出す感情という名の情報が」。
ここで幕が開き、横一列に鎮座するyowa(Vo)、AOi(G)、マイ(B)の姿があらわになる。yowaが「CLAN QUEENです、横浜よろしく!」と高らかに呼びかけ、大量のスモークがステージに放出される。そして、アルバムのオープニングナンバー「チェックメイト」から、〈壮大な自分探し〉が幕を開けた。

CLAN QUEEN、壮大な自分探しの次のフェーズへ、2ndワンマンツアー追加公演レポ


激烈に躍動するバンドサウンド。yowaによる、聴く者の心の奥底までまっすぐ突き抜けるような鮮烈なロングトーン。AOiによる、矢継ぎ早にしてエッジーなラップ。そして、観客による大歓声と大合唱。ツアーのテーマそのものは内省的だが、3人のライブ表現、および、ライブ会場には、ステージとフロアの垣根を越えて、音楽を介して深く豊かなコミュニケーションをしようとする欲求が満ち溢れている。

続けて、「万雷の拍手と熱狂の中で、私は死んだ」という衝撃的な朗読から、アルバム『NEBULA』の主人公のことを歌った「求世主」へ。〈眠れない夜は 息を遠回して 私は誰と問いかける 誰も答えてくれはしないからさ 独りで私を見つめる 私は誰?〉そうした狂おしい自問は、まだまだ続く。「ORDER」では、管理社会を描いたディストピア的な映像を背景に、〈私も誰かのトレースだったとして 本当の意思はどこへ?〉という問いが歌われ、「紙風船」では、〈私は独り飛べない 輪郭だけを残す紙風船〉という切実な言葉が重い余韻を残す。

その後も、yowaがアカペラで歌い出した「天使と悪魔」をはじめとした楽曲が立て続けて披露されていき、この日最初のMCパートへ。
AOiは、入場時に観客に配布した"NEBULAカード"(裏側には、「あなたにとって自分らしさとは」という問いが刻まれている)について触れつつ、「ツアーを通して、あなたらしさを考えてほしい」と改めて伝えた。そして、「PLAYER01」からライブが再開。赤と青のレーザーが会場全体を容赦なく突き刺すように彩り、yowaが「まだまだいけんの、横浜!」「いけんの!」と豪快にアジテートする。

再び会場に熱気が立ちこみ始め、AOiとマイ(B)によるギターソロ&ベースソロによって、さらなる熱狂が生まれていく。〈何者でいたい?〉〈覚醒は近い?〉と問う「SPEED」のライブアンセムとしての存在感が鮮やかに際立っていて、また、「インベイダー」における〈みんなの思うあなたでいてね〉という言葉の不穏な響きも忘れられない。ここで再び朗読へ。「私は、曖昧で、二律背反だ」「深い森の中には、醜い姿をした私がいるのだろうか」「それでもかまわない。私を救うために、私はこの森を進む」「もうそこは、禁断の森」。そして、「禁断の森」へ。〈世界の存在価値も 私生まれた意味すら 数字になった世界平和〉次々とタブーに切り込んでいく言葉の一つひとつが、音源で聴く時以上に深く胸に刺さる。ここでyowaが「まだまだいけるだろ!」と再び力強く煽り、「自白」へ。昨年8月のリリース以降、何度も繰り返して披露されてきた楽曲であるが、今回のツアーのセットリストに位置付けられることによって、〈自分はそう きっと強い人間だと思っていたんです でもそうじゃなかったよ 泣いたってそんな 代わりはいなくて 今いるこれが私〉というCメロのラインに滲む切実さがより強調されているように思えた。


気付けば、ライブは終盤に突入。マイが指でフロアを挑発し、豪快にバウンスするベースソロを届けて「APPLE」へ。AOiはトランシーバーでステージを往来しながらさらに観客を煽り、観客は、ほとんどヘドバンをするかのような勢いで大きく手をバウンスさせて応えていく。ここで、AOiが、自分らしさを巡る今回のツアーを通して感じたことを語り始めた。自分は空っぽで、ずっと飢えていて、ずっと何かを求めていて、たとえ満員の会場でワンマンライブをしたとしても、この心は満たされない。そう告げたAOiは、「でも、それって無駄なことじゃない」「無駄だとしても、その無駄を愛したい」と語った。

そして、『NEBULA』のその先のフェーズへ歩みを進める新曲「MONOPOLY」をサプライズで初披露してみせた。曖昧さや、迷いや葛藤を抱えたまま、豪快に次の景色を切り開いていく。そんな覚醒感が滲むパワフルなロックチューンで、初披露の曲ではあったが、並々ならぬ熱狂が会場に巻き起こっていた。そして、凛と張り詰める空気の中、ピンスポットライトを浴びたyowaが「Apophenia」を歌い始める。数あるパンチラインの中でも、美しいメロディにのせて歌われる〈汚れたからいっそ 唯一無二と呼ぶ事にしたの それもきっといつか失くすかしら 残った傷をそっと 自分らしいと呼んでみる まだ大丈夫と〉という一節が、特に深く胸に響いた。

CLAN QUEEN、壮大な自分探しの次のフェーズへ、2ndワンマンツアー追加公演レポ


いよいよラスト2曲。
まず、大量のスモークが放出される中、超攻撃型のロックチューン「ゲルニカ」がドロップされる。yowaの「歌えー!」という呼びかけを受け、残された全てのエネルギーを放出し尽くすように歌声を重ねていく観客。展開を重ねるたびにピークを更新していくような超絶怒涛の展開が続く。圧巻だ。そして、「何が本当の私なんて、知りたくもない」という朗読を経て、アルバムの最後を締め括る「PSIREN」へ。これまでの〈壮大な自分探し〉をグレートリセットするかのような真っ白な轟音。息が詰まるような感覚。ただ、不思議と心地よいフィーリングも感じられる。

AOiは、アルバム『NEBULA』を巡る本メディアのインタビューで、この曲について、「一番最後の歌詞の〈でも抜け出せやしない〉っていうのは、ある意味、輪廻みたいなものも含めて知ったっていうことで、ちゃんと輪廻を認識している、メタ的なところも見えてるっていうのは、立ってる地点は一緒でも、ある意味、進んでいるということなのかもしれない」と語っていた。その言葉に照らし合わせて言えば、〈抜け出せやしない〉けれど、3人は、そして、一人ひとりの観客は、今回のアルバム、および、ツアーを経たことによって、きっと、〈壮大な自分探し〉の次のフェーズへ進む準備が整った、ということになるのだと思う。懸命に自分らしさと向き合った私たちは、きっと、これから先の自分の、自分だけの人生を、かつてよりも強く生きていけるはず。その実感は、今回初披露された新曲「MONOPOLY」にもたしかに滲んでいたように思う。
今回のツアーの完結を経て、CLAN QUEENの、そして、私たち一人ひとりの旅路は、ここから新章へ突入していく。

セットリスト
1. チェックメイト
2. 求世主
3. サーチライト
4. ORDER
5. 紙風船
6. ヘルファイアクラブ
7. ファンデーション
8. 天使と悪魔
9. Bad End
10. PLAYER01
11. SPEED
12. 踊楽園
13. インベイダー
14. 禁断の森
15. 自白
16. APPLE
17. MONOPOLY
18. Apophenia
19. ゲルニカ
20. PSIREN

CLAN QUEEN HP:https://www.clanqueen.jp/
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