
Photo by Masato Yokoyama
ー日本での2公演を終えた今、どんな手応えを感じていますか。
ソンバー:最高だった。日本の人たちは美しくて、すごくリスペクトがあって、大きなメッセージボードを掲げてくれていたのも嬉しかった。僕のために集まってくれたみんなには本当に感謝してるし、これ以上望めないくらい完璧だった。パーフェクトだったよ。
ー「crushing」と「come closer」は日本でのライブが世界初披露だったのでは?
ソンバー:実は「12 to 12」もそう。その3曲を初めてライブで披露したのは日本だったんだ。特別な経験になったし、ここ日本で実現できたことを心から感謝しているよ。全部これまでの恋愛から生まれた曲で、書いていたときに実際に感じてたことなんだ。すごく大切な曲たちだし、僕にとってめちゃくちゃパーソナルなものなんだよ。
ーライブを見ながら改めて、あなたの歌声に感激しました。現在の歌唱スタイルを形づくるまでに、どんな工夫や試行錯誤を重ねてきたのでしょうか?
ソンバー:僕はニューヨークにあるラガーディアっていう公立の芸術高校に通ってて、そこで声楽を学んできた。
ーシンガーとしてインスパイアされてきた人を挙げるとすれば?
ソンバー:ジェフ・バックリィ、レディオヘッド、ザ・ビートルズ、スティーヴィー・ワンダー、プリンス……あとはそうだな、オアシスとかザ・ヴァーヴ、それからフィービー・ブリジャーズも。
ーどれも頷ける名前ですが、特にジェフ・バックリィが挙がるのはわかる気がします。
ソンバー:彼のアルバム『Grace』は、これまで作られた中でも最高の一枚だと思う。彼は史上最高のソングライターのひとりなんじゃないかな。『Grace』みたいな感情を与えてくれるアルバムはほかに存在しない。収録曲のすべてが同じレベルで完璧なんだよね。

ーデビューアルバム『I Barely Know Her』には、どんなビジョンやテーマを込めようとしたのか、制作の意図を教えてください。
ソンバー:このアルバムは”愛のいろんな段階”についての作品なんだ。誰かに夢中になるところから始まって、その間にある揺れる気持ち、そして失恋やそこから立ち直っていくまで。聴いてくれる人には、恋愛にまつわるあらゆる感情を一緒に味わってほしいと思っている。
ー『I Barely Know Her』(「彼女のことを、ほとんどわかってなかった」)というタイトルの由来は?
ソンバー:「誰かと付き合ってみたけど、相手が思っていた人とは全然違った」っていう感覚から来てるんだ。前は「この人のことを深く理解している」と思い込んでいたのに、あとで「実はほとんど知らなかったんだ」って気づくこともあるよね。そういう気持ちを表してるんだ。
ーあなたに飛躍をもたらした「back to friends」や「undressed」も、報われない愛や未練、孤独、執着といったテーマが強く表れているように感じます。そうした題材を繰り返し歌にするのはなぜなのでしょう?
ソンバー:僕はいつだって、自分が実際に感じていることとか、いま体験している状況を歌にしてきた。ちょうど今の僕が実際に生きている人生で、そういう感情を抱くことが多いってだけなんだと思う。自分がもしそう感じてたら、そのまま曲にするし、別の気持ちを抱いたらそれを書くだけ。
ーだからこそ、あなたの音楽はリアルに感じられるんですね。「12 to 12」ではミラーボールを思わせるダンサブルなサウンドを打ち出しました。このスタイルに挑戦した狙いを聞かせてください。
ソンバー:僕はいろんな音楽が大好きだから、ひとつのスタイルにずっと縛られるようなアーティストにはなれないと思う。新しいことを探求したり挑戦したりせずにはいられないし、同じことを繰り返すだけじゃ退屈に感じちゃうから。僕が作るものはいつだって「これまでで一番好きな曲」にしたいし、新鮮でワクワクするものにしたい。まあ、結局のところ、自分が作りたいものを作ってるだけなんだよね。だから僕にとっては、どの曲もそれぞれ違うし、それこそがアートを作ることの素晴らしさだと思うんだ。常に違うものになっていくから。
ーデビューアルバムということで、もっと広い音楽性をアピールしたいという意図もあった?
ソンバー:もちろん。いつだってそうしたいと思ってる。特にアルバムだと曲数も多いから、自由に探求できるし、型にはまらない発想が試せるからね。僕はどの曲でもそういうことに挑戦しようとしてる。このアルバムではまさにそれができたと思うし、世界中のみんなに聴いてもらえるのが本当に楽しみなんだ。
ー自分のなかで特にチャレンジした収録曲を挙げるとしたら?
ソンバー:(トラックリストの)最後に収録した「Under the Mat」かな。自分が書いた中でも最高の曲だと思ってるけど、制作するのは本当に大変だった。アルバム用に作った最後の曲でもあったんだけど、すごく複雑な曲だから、自分が思い描くサウンドをどう形にするかが難しくて。でも、あの曲を作る前は、アルバムにまだ何かが欠けてるような気がしたんだ。だから「Under the Mat」ができて、ようやくアルバムが完成したって思えたんだよね。
ーベッドルームでの曲作りからキャリアをスタートさせたあなたですが、最新作では巨匠トニー・バーグが共同プロデュースを手がけています。彼との共同作業で学んだことを教えてください。
ソンバー:トニーは僕が出会った中でも天才的なプロデューサーのひとりだと思う。しかも今回作業したのはサウンド・シティ・スタジオで、ニルヴァーナの『Nevermind』やフリートウッド・マックの作品とか、数えきれないくらいの名盤がそこで録音されてきた場所なんだ。
ーさっき名前の挙がったフィービー・ブリジャーズの『Punisher』もそうですよね。
ソンバー:そうそう。あの空間にいられること自体が光栄だったよ。今回は自宅のスタジオで大体50~70%くらいまで曲を仕上げてから、サウンド・シティに持ち込むことが多かった。そこで生の楽器やプレイヤーを入れて、最後の仕上げをしていく。トニーとのプロセスは本当に特別で、唯一無二のコラボレーションなんだ。もうほかの誰ともやりたくないって思うくらい。トニーは生涯のコラボレーターだよ。
ーあなたはまもなく世界最大のスターになる存在です。だからこそ伺いたいのですが、この時代において音楽はどんな役割を果たせると考えますか?
ソンバー:僕は、音楽って唯一の”世界共通の言語”だと思ってる。

Photo by Masato Yokoyama

ソンバー
『I Barely Know Her』
2025年11月7日 国内盤CDリリース
初回プレス限定封入特典:ソンバーのプリントサイン&メッセージ入りポストカード
再生・予約:https://wmj.lnk.to/sombr_ibnh
詳細:https://wmg.jp/sombr/discography/32141/