―「LIVE AZUMA」がどのように始まったのか、お伺いできますでしょうか?
佐藤:発端は、東日本大震災の後、僕とフライング・ベコを一緒にやっている仲間で「福島フェス」というイベントを始めたことでした。それは入場無料の、地域の物産を中心としたイベントだったんですけど、僕が音楽業界にいたこともあり、若い人たちにも来てもらいたいと思って、音楽を取り入れた少し風変わりなイベントにしていたんです。そこに毎年ボランティアとして手伝いに来てくれていたのが、現在「LIVE AZUMA」主催の1つである福島テレビの佐藤将一くんで。「福島フェス」はコロナ禍でもオンラインで開催したのですが、東京で福島を知ってもらう段階から、実際に知ってくれた人たちを福島へ呼びたい気持ちが強くなっていって。そんな時、将一くんから「実際に福島でやってみませんか?」という話をもらったんです。どこで開催するかという段階になり、地元に詳しい将一くんが「あづま総合運動公園一択です!」と断言してくれて。実際に見に行ったら、広さやスケール感、球場の雰囲気などが本当に素晴らしくて、「ここでやりたいね」という話になっていきました。

「LIVE AZUMA 2024」の様子
―クリエイティブマンの坂口さんとは、どのように出会ったんでしょう?
佐藤:将一くんが大学生の頃、東京でサマーソニックのボランティアチームに入っていたんです。

「LIVE AZUMA 2024」の様子
坂口:将一くんは、当時からクリエイティブマンのホームページを毎日のようにチェックしてくれるようなLIVE好きの後輩で。多い時は100名弱ほどいる学生ボランティアスタッフの中でも動きが良くて、印象に残る存在だったんです。学生の時も、そして彼が社会人になってからもたまに会いに来てくれて、「いつかフェスをやれたらいいですね」という話をお互いによくしていて。そんな折、「福島フェス」で彼が関わっていた亮太さんを紹介してもらって、3人でうちの会議室で話したんです。まずは、あづま総合運動公園を見てみようという話になって。僕は屋外フェスの難しさをよく知っているので慎重ではあったんですけど、実際に現地を見たら本当に素晴らしくて。オリンピックのソフトボール会場として使われた球場で、周りはのどかで山奥でもない。車や自転車でも乗り入れできる開けた場所で、高低差も少なく、とにかく気持ちがいい。特に、秋の行楽シーズンには最高のロケーションだと思いました。あづま総合運動公園は、福島市を代表する県立公園でもあるし、まさに理想的な場所でした。ツアーでもなかなか福島には行けないアーティストが多い中で、いきなりベストな会場に出会えたのは、本当に奇跡のようでした。
―福島テレビの佐藤さんが、そこまで確信を持っていた理由はどこにあったんでしょう?
坂口:福島テレビとしても、会場が近く、関係も築きやすい場所だったのもあるかもしれません。なにより、”オリンピックの会場”というのが非常に大きかったですね。東京オリンピックの際には、通信環境を整備するための設備も導入されていて、インフラ面でも安心感があった。世界最大のスポーツの祭典に耐えられる環境を持っているというのは非常に魅力的ですよね。「オリンピックの会場でフェスをやっています」と言えるのも説得力がある。駒沢公園も”駒沢オリンピック公園”と呼ばれていますけど、そうした由緒ある場所という響きがあるんです。開催地として申し分ない場所だと思いました。

「LIVE AZUMA 2024」の様子
―スタジアムでフェスを開催するのは、ハードルが高いことのように思えます。その点について、やはりクリエイティブマンがサマーソニックでZOZOマリンスタジアムを使っている実績が、後押しになった部分もあるのでしょうか?
坂口:そもそも、私のフェス自体の入口がサマーソニックだったので、球場でフェスをやること自体、最初からごく自然な発想だったんです。むしろ、ゼロから野外会場にステージを立てるほうがハードルが高いと感じるというか。サマーソニックは来年で25周年になりますが、そうした経験の中で、スタンド席の居住性の高さとか、アリーナで観たい人と、座って観たい人の自由さ、ステージの立て方、楽屋の配置、アーティスト導線の組み立て方、見切れ席の扱いなど、球場ならではのノウハウがある。逆に言えば、日本でも”スタジアムで開催されるフェス”は数が少なく、それ自体がLIVE AZUMAの強みになるとも感じました。
―佐藤亮太さんが所属されている、フライング・ベコというチームについても改めて教えてください。福島出身の同級生5人で結成されたクリエイティブチームとのことですが、どのような思いを持って立ち上げられたのでしょうか。
佐藤:「福島フェスをやろう」となったときに集まったのが今のメンバーで、現在は5人で運営しています。全員高校の同級生で、最初はNPO法人として立ち上げたんですけど、「LIVE AZUMA」を開催しようという段階になったときに、「きちんと法人格を持って、関係各所と正式に向き合うべきだよね」という話になって株式会社として再出発しました。代表は地元で段ボール工場を営む社長なんですけど、僕のように音楽業界で働く者もいれば、デザイナー、地元ラジオ局のDJ、そしてアーティストもいます。そのアーティストの同級生は、武道館でライブをした経験もあって。そういう多彩なジャンルの人間が集まっているので、自然と面白いチームになっていると思います。

「LIVE AZUMA 2024」の様子
―そんな三者で主催しているわけですが、役割分担は、どのようになっているんでしょう?
佐藤:クリエイティブマンプロダクションの坂口さんは、ブッキングは勿論のことトータルアドバイザーとして。ステージ制作や楽屋の設計、アーティストの受け入れなど、フェスにおいてのゼロから百までの基盤づくりを担当してくださっていて。僕はアーティストのブッキングもやりますが、並行して会場の装飾やデザイン、出店関係などビジュアルと空間の部分を中心に。そして将一くんは、福島テレビという地元企業の立場から、会場や行政との調整などのインフラ整備、地域連携などを担当してくれています。
坂口:誰かが「ここをやる」と明確に決めたわけではなくて、自然と得意分野で動く形になっていったんです。一社だけで全部をやることも不可能ではないけれど、地元のことは地元の人が一番わかっているし、ステージやアーティスト関連は僕らが経験を活かせる。お互いに補い合える関係性が理想的なんですよね。大変そうなところがあればお互いに手を貸す。そういう気持ちのいい分担が自然にできあがっていきました。
―実際、あづま総合運動公園や球場側に「フェスをやりたい」と相談したとき、反応はいかがでしたか?
坂口:これまで、あの会場で音を大きく出すようなフェスはやったことがなくて。隣の施設ではサッカーの試合が行われたり、スタジアムでは東北楽天ゴールデンイーグルスの試合があったり、人が集まるイベントの経験は豊富なんですけど、「音楽フェス」という形は初めてだった。オリンピックも無観客開催でしたし、コロナ禍の影響も大きかったからこそ、「音楽フェスとは何か」というところから丁寧に説明していく必要がありました。将一くんがその部分を本当に粘り強くやってくれたんです。会場側もすごく協力的で。行政的な調整などはもちろんあるんですけど、年を重ねるごとに「LIVE AZUMAの一員」みたいな感覚で一緒に動いてくれるようになってきていると感じます。
佐藤:特に施設を直接管理している方々が、ものすごく前向きに協力してくれていて。
坂口:福島を代表する良い人です(笑)。そういう現場の方々の理解と熱量って、フェスを継続的にやらせてもらう上ですごく大事なんですよ。ありがたいです。
―もともとは、2020年の東京オリンピック後を見据えて計画を立てていたそうですが、実際にはコロナ禍で頓挫してしまいました。当時思い描いていた、第1回LIVE AZUMAは、どんなフェスになるイメージだったんでしょう?
佐藤:正直、今思えば、まだはっきりとしたイメージはできていなかったかもしれません。
坂口:亮太さんともよく話すんですが、2020年は開催が叶わなかったけど、翌年2021年に無料フェス「PARK LIFE」を開催できたことが、ものすごく大きくて。そのイベントでは、くるりさんや中納良恵さん、今年のLIVE AZUMAにも出演するOmoinotakeさん、chilldspotさんなどに出演してもらいました。無料イベントとしては信じられないようなラインナップで、今思うと、よくあの時期にしかも無料でやったなと感じます。でも、あのフェスをやったことで、会場側にも「音楽フェスとはこういうものなんだ」と具体的に理解してもらえたし、地元の人にもイメージを共有できた。当日は雨も降って大変でしたけど、大事な一歩になったと思います。その経験があったからこそ、今こうしてLIVE AZUMAがきれいな成長曲線を描けている。結果的に、いきなり大規模にスタートしなかったことが、良い方向に働いたと感じています。
―2020年の開催が難しくなり、「どういう形ならできるか」と模索していくなかで、「PARK LIFE 2021」というマーケットが加わったイベントが生まれたんですね。
佐藤:あの時は、音楽フェスというよりも、マーケットもメインでやろうという発想でした。すべてを並行に、バランスよく展開していくようなイメージで。結果的に「PARK LIFE」がきっかけで、マーケットや飲食をフェスの大事な柱にするという現在のLIVE AZUMAのスタイルにつながったと思います。
坂口:「PARK LIFE 2021」で、音楽だけじゃなくてフェスの全体像がすでに形になっていたんですよね。有料チケット制ではなかったし、お酒も禁止、全員マスク着用徹底という状況ではありましたが、コロナの制約を外して見ればもうフェスとしては成立していたと思います。
―僕も地方出身なんですが、コロナ禍は県外から人が来ることや、人が大勢集まることに対しての抵抗が強かった印象があります。実際、2021年に「PARK LIFE」を開催されたとき、お客さんの反応や集客の面はいかがでしたか?
佐藤:あのときは、完全に福島県民限定というルールでやっていたんです。当時は県外からの移動に対して本当に敏感でしたからね。それでも、地元の方々の反応はすごく良かったと思います。僕も現場にいて、印象はポジティブでしたね。
―ちなみに、「PARK LIFE 2021」はどれくらいの規模だったんでしょうか?
佐藤:今と比べればだいぶ少なかったですけど、それでも30店舗くらいは出ていたと思います。当時としてはかなり多かったですね。
坂口:今はもう120を超えるブース規模になっていますけど、いまでも100ブースを超えるフェスって日本でもなかなかない。単なるライブイベントではなく、ライブ+マーケットを目指していたからこそ、あの規模に育っていった。あのような大変な時期に初期から関わってくれた出店チームの皆さんも、今のLIVE AZUMAを支える大きな幹の一部になってくれていると思います。

「LIVE AZUMA 2024」の様子
―「PARK LIFE」という名前にした理由や意味には、どんな思いがあったんでしょうか。
佐藤:僕の中では、”衣・食・住”のような日常の要素が、そこに全部詰まっているイメージでした。だから音楽だけを強調する名前にはしたくなかったんです。「LIVE AZUMA」も、そうしたバランスの感覚が共通しているんです。
坂口:最初にフェスの名前を決めるとき「福島音楽フェス」みたいにわかりやすい名前にするか、それとももう少し広い意味を持たせるか、様々な意見があったんです。あの辺りの地域を”あづま地域”と呼ぶんですけど、正式な地名として「あづま市」みたいなものは存在しないんですよ。
佐藤:「あづま」と言うと、地元の人はあの一帯を指して使っている感じなんです。
坂口:吾妻連峰っていう山並みもあって、”あづま”という響き自体に土地の象徴的な意味がある。そこに音楽の要素である”LIVE”をくっつけて、「LIVE AZUMA」。一度聞いたら印象に残るし、”あのフェスだ!”とすぐ分かるのがいいなと思いました。今では本当にこの名前に愛着がありますね。

「LIVE AZUMA 2024」の様子
―2021年に「PARK LIFE」を開催して、手応えを感じたうえで、コロナが落ち着いてきた2022年に本格的に「LIVE AZUMA」を開催したわけですね。
坂口:「PARK LIFE」をやった段階で、次のステップとして、スタジアム開催を見据えていました。そもそも最初からスタジアムフェスを目指していたので、「PARK LIFE」が第0回目のような位置づけだったのかもしれません。正式に「LIVE AZUMA」として開催した第1回目は、チケットもソールドアウトがでたりして反響は本当に大きくて。東京のようにフェスが乱立している地域ではないからこそ、いい意味で目立ったんだと思います。マーケットや飲食もあって、フェスの全体像がすごくイメージしやすかった。僕らとしても、サマーソニックのスタジアムにまつわるあれこれを培ってきた経験はあったので、導線づくりやステージ構成もトレースしやすかったですね。初回にしては本当に自然に進んだというか、大きなトラブルもなく、手応えのある成功した第1回になったと思います。
―今年で4回目の開催になります。昨年のインタビューで、坂口さんは「フェスは3年目くらいで形が見えて定着してくるものだと思っています」とおっしゃっていましたが、「LIVE AZUMA」というフェスが確立してきたという実感はありますか。
坂口:そうですね。どこまで攻められるか、どんなブースをどこに置くのがいいか、どのエリアにどんなステージを配置するのが最適か、そういった全体像が見えてきた感覚はあります。今のタイミングでは、入場無料で楽しめるECHO STAGEを含めて3ステージが一番収まりいいかなと思っていて。もちろん、動線をより良くしたいとか、毎年アップデートしている部分はありますけど、3年目を終えた時点で”フェスの基礎”はしっかりできたなと感じました。そのうえで、4年目はその基礎をさらに積み上げていく。そんな段階に入っていると思います。

「LIVE AZUMA 2024」の様子
―そして迎える、2025年の「LIVE AZUMA」ですが、地元の方々の反応や、根付いてきた手応えのようなものは感じていますか?
佐藤:今では、「LIVE AZUMAを知らない人はいない」と言っていいくらいになっていると思います。地元の中学校で話をさせてもらったんですが、「このフェス知ってる人?」と聞いたら、ほとんどの生徒が手を挙げてくれて。実際に来場したことがある人はまだ一部でしたけど、認知度という意味では、地元ではしっかり定着している実感があります。あとはやっぱり県外の認知ですね。そこはまだ課題が残っていると思います。でも、今後の目標としては、もっと外からも足を運んでもらえるようなフェスに育てていきたいです。
―気は早いですが、今後どんなフェスを目指していきたいか、構想はありますか?
坂口:5年先、10年先と続けていくために、地元の方々に愛され、応援してもらえるフェスに育てていきたいです。このフェスのいいところは、お客さんや関係者との距離の近さにあると思っていて。たとえば、打ち上げに行くと、そのお店にお客さんや関係者が自然に集まっていて、「こうした方がもっと良くなるんじゃない?」という声を直接聞いて、すぐチームにフィードバックできる環境があるんです。亮太さんや僕、そして福島テレビの佐藤将一くんや偉い方だけど現場も一緒にやっていただいている中の方々など、運営チームがみんな現場に近い距離で関わっているからこそ、その声を翌年の改善にすぐ反映できる。いわばフェス全体でPDCAを回しているような感じ。だから、今年もまずはしっかり実践して、その経験をもとに来年さらに良くしていく。そうやって毎年アップデートを重ねながら、理想のフェスを形にしていきたいです。
<イベント情報>

LIVE AZUMA 2025
日程:2025年10月18日(土)・19日(日)
18日:OPEN 10:00/START 11:00
19日:OPEN 10:00/START 11:00
※雨天決行
会場:福島あづま球場、あづま総合運動公園
主催:LIVE AZUMA実行委員会/福島テレビ株式会社
株式会社クリエイティブマンプロダクション/株式会社フライング・ベコ
【10月18日(土)】
AZUMA STAGE
BAND-MAID / HEY-SMITH / INI / IS:SUE / Omoinotake / レキシ
Saucy Dog / THE ORAL CIGARETTES
PARK STAGE
cero / 田我流 -Band Set- / FNCY (ZEN-LA-ROCK/G.RINA/鎮座DOPENESS)
レトロリロン S.A.R. / SATOH / 柴田聡子 (BAND SET)
ECHO STAGE -Entrance Free-
【LIVE】Sitissy luvit / TRIPPYHOUSING with Alex Stevens & Skaai
【DJ】MAHBIE / DJ MIDY / DJ MITSU / Neibiss(DJ SET) / ONJI
Sam is Ohm / セク山 / 矢部ユウナ
【10月19日(日)】
AZUMA STAGE
Dragon Ash / 04 Limited Sazabys / 木村カエラ / ⿊夢
RIP SLYME / 湘南乃風 / sumika / WEST.
PARK STAGE
D.A.N. / Hammer Head Shark / in-d / Kohjiya / 礼賛 / SIRUP / ZION
ECHO STAGE -Entrance Free-
【LIVE】有田咲花 / Doramaru / Summer Eye
【DJ】DJ BAKU / 原島 ”ど真ん中” 宙芳 / JUBEE /DJ NANASHIMA
RiO / shakke / TOMMY(BOY)
(alphabetical order)
<チケット>
-入場券-
【2日通し券】:22,500円(税込)/ スタンド席付:26,000円(税込)SOLD OUT!
【1日券】:12,000円(税込)/ スタンド席付:14,000円(税込)
-中高生入場券-
【2日通し券】:14,000円(税込)/ スタンド席付:17,500円(税込)SOLD OUT!
【1日券】:7,900円(税込)/ スタンド席付: 9,900円(税込)
-スタンド自由席チケット-
【2日通し券】:5,000円(税込)
【1日券】:3,000円(税込)
-駐車券-
【大駐車場2日通し駐車場券】:6,000円(税込)SOLD OUT!
【大駐車場1日駐車券】:3,000円(税込)SOLD OUT!
【場外臨時駐車場2日通し駐車券】:5,000円(税込)SOLD OUT!
【場外臨時駐車場1日駐車券】:2,500円(税込)19日分はSOLD OUT!
【サイクル民家園駐車場2日通し駐車券】:6,000円(税込)SOLD OUT!
【サイクル民家園駐車場1日駐車券】:3,000円(税込)19日分はSOLD OUT!
【大駐車場バイク2日通し駐車券】:4,000円(税込)
【大駐車場バイク1日駐車券】:2,000円(税込)
<各プレイガイドチケット一般発売中>
※駐車券の販売はイープラスのみとなります
イープラス:https://eplus.jp/live-azuma/
ローソンチケット:https://l-tike.com/liveazuma/
チケットぴあ:https://w.pia.jp/t/liveazuma-25/
楽天チケット:https://r-t.jp/liveazuma
インバウンド用チケット:https://eplus.tickets/live-azuma/