10月7・8日と連夜、さいたまスーパーアリーナにて開催されたフー・ファイターズ17年ぶりの来日公演。この間、フジロック2015、サマーソニック2017、フジロック2023にヘッドライナーとしての出演はあったものの、やはり単独でのショウが実現したのは実に感慨深い。
すでに海外では完全にスタジアム級のビッグ・バンドとなった彼らの圧倒的なパフォーマンスを、ついに日本でも体感することができた。

初日および10日の神戸公演は「Enough Space」で気分を上げてから、「All My Life」「Rope」「The Pretender」と畳み掛けていく構成。一方2日目は「Enough Space」なしで、いきなり「All My Life」でブッ飛ばし、代わりに「Have It All」を入れたので、その後「Stacked Actors」を「White Limo」に変えたのも合わせて、さらに序盤の疾走感が増した印象を受けた。絶対やらなければいけない定番曲が並ぶセットリストに、見れたら嬉しいディープカッツがどう混ぜ込まれてくるか、熱心なファンにはこのあたりも興奮ポイントになったことだろう。

そういえば「Stacked Actors」を久々に生で聴いて、17年前には幕張メッセで、この間奏部分を延々と長回しして引っ張り、正直、途中で少しダレてしまったことを思い出した。今回のスーパーアリーナではビシッとタイトに演奏しており、限られた持ち時間のうちに演れるだけの曲を演るために、ジャムっぽい展開やMCをなるべくコンパクトにまとめようと工夫した様子がうかがえた。アンコール無しとなったのも、「Best of You」でいったん閉めてまた出てくるという無駄な時間を節約したかったからだと推測する。最新アルバム『But Here We Are』収録曲を演奏しないという思い切った判断も含め、結果的に、このキャリア濃縮セットは、(身内ノリ空気が濃いライブハウスとは違う)日本の大型アリーナに集まったオーディエンスにとって、より有効なアプローチになったと思う。

今日も元気いっぱいデイヴ・グロールの、ようやく「屋根のある会場」でコンサートできるのが嬉しいぜ、というMCを挟み、セカンド・セクションは「Times Like These」で始めて、「These Days」~「Walk」と『Wasting Light』収録のグッとくる2曲までで前半のフックを作る。ちなみに「Walk」は、事前のアンケートで「今回の公演でやってほしい曲」第1位に選ばれていた曲だ。また、7日には、当日サポート・アクトを務めたおとぼけビ~バ~へ捧げるとコメントして「La Dee Da」も披露。実は、昨年ロスキレ・フェスティバルに出演した時にも、フー・ファイターズは、彼女たちのために同曲を演奏している。
なぜ「La Dee Da」なのか?はデイヴ自身に訊いてみないとわからないが、おそらく、この曲が象徴するエモーション、あえて表現するとしたら「過剰なヤバさに対するワクワク感」が、おとぼけビ~バ~に対する評価と通じる部分があるのかもしれない。ちなみに「La Dee Da」スタジオ版の最後では、テイラー・ホーキンスが「Too Much!」(「どんだけ?!」みたいなニュアンスか)と叫んでいたりする。

フー・ファイターズ来日公演を総括 デビュー30周年に証明したバンドの絆と圧倒的実力

Photo by Kazumichi Kokei

後半戦に向けて、クリス・シフレットのギター・ソロをフィーチャーしたメンバー紹介コーナー。先日、加入が発表されたばかりのニュー・ドラマー=イーラン・ルービンが大きな歓声を浴びる。長らくナイン・インチ・ネイルズのライブ・ドラムを務めてきたイーランだが、同期演奏も多く、時にはピアノやベースまで弾かされていた(※イーランも数多くの楽器をこなすマルチ・プレイヤー)NINでのパフォーマンスとはまた違い、ドラマーとしての圧倒的な力量が前面に出て、それがフー・ファイターズにズッぱまりであることを完璧に証明する素晴らしい叩きっぷりだと、誰もが認めたはずだ。主軸となるビートに関してはもちろん、曲の終盤にジャムっぽく崩すところでも、イーランのドラムが終始プレイを引き締めていた気がする。

そして、ニルヴァーナ時代にツアーをともにした少年ナイフとボアダムス、その次に発見したというギターウルフ、第1回フジロック出演時に目撃したハイロウズ、さらに改めておとぼけビ~バ~の名をあげ、「彼ら、素晴らしい日本のバンドに捧げる」と「My Hero」を演奏。ラミ・ジャフィの見せ場にもなっている同曲だが、サビの部分ではアリーナ中に大合唱が沸き起こった。

圧倒的なクライマックス

初期の人気シングル「Learn to Fly」と「This Is a Call」に続けて、前々作『Medicine at Midnight』コーナーとも言える「No Son of Mine」と「Shame Shame」(加えて、2日目と神戸公演では『Concrete And Gold』から「Sky is a Neighborhood」も間に演奏)は、近年のフー・ファイターズが、グレッグ・カースティンの協力を得て積み上げた音楽的な成果を示す場と言ってもいいかもしれない。前者はモーターヘッドの「Ace of Spades」を盛り込んでバリバリに加速させ、対照的に「この曲を歌うのが好きだ」とコメントした後者では、アップテンポではないナンバーをじっくり聴かせる。アルバム発売直後のライブでは女声コーラス隊が担っていた厚めのバック・ボーカル部分も、この晩はクリスとイーランできちんと形にしていた。

そういえば、クリスのサイド・ボーカルが過去一くっきりと聞こえてきたのも印象深いシーンのひとつだった。
スーパーアリーナの音響は実際かなり良くて、スタンド席の最後方にいた初日だけでなく、フロアの中央から見た2日目も、以前は気になった反響・残響がほぼ解消していた。ボーカルと各ギター、そしてネイト・メンデルのベースまで分離してそれぞれクリアに響いていたことも、クリスの声が前に出ていると感じた要因のひとつではないかと思う。

GOOD TIMES TOKYO!!!

Teppei Kishida pic.twitter.com/GGncfYLNke— Foo Fighters (@foofighters) October 9, 2025
最終セクション、初日は1stアルバムからデイヴお気に入りの「Big Me」。ここで「30周年」について言及され、背景にはFFヒストリー名場面集が映し出される。そこからド定番「Monkey Wrench」でラストにはイーランのドラムの見せ場を作り、さらにテイラー・ホーキンスに捧げる「Aurora」で胸をギュッと掴んだ後、会場中が大合唱の鉄板「Best of You」と見事なクライマックス。いったん引っ込んでまた出てくるのは省略して、不動の大団円「Everlong」へ。

ちなみに10月7日は、フー・ファイターズのマネージメントを長らく手掛けてきたジョン・シルヴァの誕生日だったそうで("柔軟なマネージャー、ジョン・シルヴァ"と覚えよう?)、35年にわたる付き合いに感謝するMCが挟まったためか、この日だけカットされてしまったが、他の公演ではオーラス「Everlong」前に、1stアルバムの最終曲である「Exhausted」を入れてきたのも興味深かった。30周年を意識した超初期曲をセットリストに組み込むにあたり、この位置(「Best of You」と「Everlong」の間)にハマると捉えたのだろうか。

ライブ・バンドとしての実力の高さ=メンバー間の絆の太さが、テイラーの不在を超えて今なお強く保たれていることを確認できた事実が何より大きかったのに加え、個人的には、過去30年間のうちに生み出されてきた楽曲のクオリティの高さをいっそう実感させられたライブだった。次回は、そう遠くない未来に再び機会が巡ってくると信じて、生きていこう。

フー・ファイターズ来日公演を総括 デビュー30周年に証明したバンドの絆と圧倒的実力
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FOO FIGHTERS : LIVE IN 2025 セトリプレイリスト
https://bio.to/FooFightersLIVEIN2025TW

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