ニコニコ動画の誕生から20年、TikTokのスタートから10年が経った2026年。ボーカロイドや歌い手、VTuberといったカルチャーは、もはや多くの人にとって馴染みのある存在のひとつとなった。
オンラインを活動の主軸にするアーティストも増加し、ネット音楽市場はどんどん勢いを増している。

そんななか生まれたのが、音楽ドキュメントバラエティー『うぶごえ』だ。類まれなる才能を持った、令和のJ-POPを牽引するボカロP・シンガー・絵師をマッチングし、次なるヒット曲が生み出される瞬間に密着。番組が表現者に新たなきっかけをもたらすとともに、それぞれの魅力に迫る。これまでにも、picco ×青妃らめ×〇たろう。による「マンネリマンネ」や晴いちばん×Ourin-王林-× tabiによる「Please or Please」など、数々の名曲が世に放たれてきた。そしてまた、同番組から新たな傑作が誕生した。それが、水槽 × Daoko × 萩森じあによる「FILTER//BUBBLE」だ。

3月12日の『うぶごえ』では、「FILTER//BUBBLE」のMVが出来上がっていく過程が放送。水槽・Daoko・萩森じあのコラボレーションにかける想いや制作の様子が、視聴者に届けられた。本稿では番組内容と楽曲について、掘り下げていく。

コラボレーションごとに、創作意欲が刺激されそうな楽曲テーマを、番組側が提示しているのも『うぶごえ』の面白さのひとつ。
第5回となる今回は「過去の行動履歴の分析により、好みそうな情報以外から隔離されて、バブルに包まれたように偏った情報に囲まれる現象」を表す”フィルターバブル”がテーマだ。社会的な分断や固定観念の助長が懸念される、かなりシリアスなワードだが、水槽は「ワードのポップさと意味の不穏さを掛け合わせ、警鐘を鳴らすよりもリピート向きの曲にしたい」と話していた。

かくして始まった楽曲制作。まず水槽が取りかかったのは、音素材のサブスクリプション『Splice Sounds』を用いた仮ビートの作成である。ストックされた素材のなかから音を選び、1分くらいでサクサクと土台となるトラックを作り上げていった。

最低限の準備を整えると、おもむろにiPadを取り出し、第一印象で浮かんできた言葉をマインドマップに書き出す工程へ。”フィルターバブル”を中心として、”SNS”や”泡”、”情報過多”といった親近感のある言葉から、深刻さが香る”常識と前提の危うさ”や”てか、何それ”といった心の声まで、固定観念にとらわれないフレーズが並ぶ。

ここから緻密に楽曲を組み立てていくのかと思いきや、なんと書き出したワードを見ながら、即興で歌い始めた。臨機応変に造語を作ったり、軽やかに韻を踏んだり、アドリブとは思えないメロディーが生み出されていく。今回のシンガーが、自身で作詞も手掛けるDaokoとのことで、ラップパートに頭を悩ませる一幕もあったものの、たった2時間で1番の歌詞が完成。出来上がった作品を聴くとわかるのだが、撮影中に生まれてきた歌詞やメロディーがそのまま反映されているパートも多く、水槽の直観的な発想力の豊かさには驚かされた。

いよいよ、Daokoを招いてレコーディングへ。
歌い始めるやいなや、想像以上のクオリティを叩きだすDaokoに、水槽も「今の感じすごいよかった。本物や」とご満悦な様子。Daokoが多彩なアプローチを持っているからこそ水槽が判断に迷う場面は、お互いの才能に刺激を受けることで、まだ見ぬ世界が作り上げられていくことを物語るよう。また、Daokoから「ラップパートでは韻を踏んでいる箇所に、声を重ねてみては?」と相談を持ち掛けるなど、一方通行ではない能動的なレコーディングが行われていった。

楽曲を彩るイラストについては、”インターネットのデジタルな世界”がコンセプトに決定。萩森から「いつも青っぽいイラストを描いているから、青っぽいのどうかな?」と提案すると、水槽からは「泡をドットで描いてほしい。いつものじあちゃんの女の子がいて、周りに不自然な荒いオブジェクトがあるイメージ。デュエットなので、全く同じ顔で左右対称、色違いの双子みたいなのでもいいかも」と要望が上がる。どちらも意見を押し付けることはなく、お互いの希望を聞き入れながら、最高の表現を追い求める姿が印象的だった。

水槽との打ち合わせをもとに、萩森もイラスト制作へ。ラフ、色塗り、表情、バブルと次々に描き進めていく手つきは慣れたもの。また、特色のひとつである青について「青は私のなかで未熟さの象徴みたいな色。
私が表現したい思春期とか未熟な時代、大人になってもずっと核になるものを表現できたら」と語っていたり、あまり表情をつけない理由について「見ている人の解釈の幅を狭めることになってしまうから、想像の余地を残した表情が多い」と口にしたり、垣間見える哲学も興味深い。5時間かけて描きあげられたイラストは、水槽とDaokoを彷彿とさせる女の子がふたり並んだ1枚。水槽の要望を丸ごと聞き入れるのではなく、自分の意思を尊重する姿勢には、クリエイターとして任されたことを全うする誇り高さが表れていた。

三者三様の個性が絡み合い、可愛さのなかに毒を感じさせる仕上がりとなった「FILTER//BUBBLE」のMV。泡がぷくぷくと弾けていく様子やデジタルの無機質さを反映させたサウンドは、激情的でないふたりの声質とも心地よく溶け合う。青を基調としたイラストも曲の持つ爽やかさや疾走感を後押しすると共に、時折マゼンタやモノクロに転ぶことで、ざわつくインパクトを視聴者に残していた。

あまりにも清涼感のあるナンバーに、スタジオで楽曲を耳にした山田涼介は「無性に炭酸水が飲みたくなる」とコメント。それに近藤春菜(ハリセンボン)も「わかる!」と同意し、「水槽さんがいうように何回も聴きたくなる」と中毒性の高さを賞賛した。さらに、ボカロPのsyudouは「聴いている人に説明的でないにせよ、想像が膨らむワードなので、解釈の余地が広い歌詞になっている」と解説。作詞を手掛けた水槽も「歌詞的にふわふわぷかぷかしていることこそが、問題提起になれば」と語っており、まさしく意図が反映された作品となった。

水槽のスタイリッシュさ、Daokoのウィスパーボイス、萩森じあの余白による化学反応が煌めいた「FILTER//BUBBLE」。コラボレーションが持つ可能性を開くだけでなく、各アーティストのカリスマ性を改めて体感できる1曲になったに違いない。


なお、この放送回はTVerやHuluで視聴可能となっている。3月22日(日)26:50(3月23日(月)午前2時50分)には再放送も予定されているので、『うぶごえ』や「FILTER//BUBBLE」が気になった人は、ぜひチェックしてみてほしい。

また、3月25日、26日には『うぶごえ』のように、それぞれのスタイルで進化してきたアーティストの世界観が交差するライブイベント『eplus presents「FAVOY TOKYO」』が、ZeppDiverCity(TOKYO)にて開催予定だ。ナナヲアカリやFantasticYouth、いゔどっとなどが出演し、それぞれのステージで魅了するのはもちろん、この日限りのスペシャルコラボレーションも行われる。さらに、26日には『うぶごえ』コラボDAYと題して、「FILTER//BUBBLE」の初披露も決定。シュワシュワとドライなオーラもまとっていた楽曲が、実際のライブではどのような表情を見せるのか、注目必須だ。

ボカロP×シンガー×絵師、その化学反応──『うぶごえ』が可視化する創作のリアル


『うぶごえ』
放送日時:3月22(日) 26:50~27:20(関東)
※放送時間は予定
出演者
MC:山田涼介
出演者:近藤春菜/syudou
ボカロP(コンポーザー):水槽
シンガー:Daoko
絵師:萩森じあ

【公式リンク】
番組公式X:https://x.com/ntv_ubugoe
番組HP:https://www.ntv.co.jp/ubugoe/
TVer番組URL:https://tver.jp/series/srn654sh7o
Hulu配信URL:https://www.hulu.jp/ubugoe

ボカロP×シンガー×絵師、その化学反応──『うぶごえ』が可視化する創作のリアル


『eplus presents FAVOY TOKYO』

会場:Zepp DiverCity(TOKYO)

開催日時:
3月25日(水)・3月26日(木)
18:00開場/19:00開演
※うぶごえコラボDAYは3月26日(木)のみとなります

出演(五十音順):
3月25日(水) 弌誠/いゔどっと/ナナヲアカリ
ゲスト:Sou/超学生
2026年3月26日(木) 水槽/Daoko/FantasticYouth
ゲスト:yowa (from CLAN QUEEN)

チケット:単日券 1F全自由 / 2F指定 ¥7,500(税込)
U-18限定通し券 1F全自由 ¥9,800(税込)

主催/企画制作:イープラス
制作協力:YUMEBANCHI(東京)
協力:日本テレビ「うぶごえ」

【公演に関するお問い合わせ】
https://eplus.jp/favoytokyo26032526/

【公式リンク】
公式サイト:https://eplus.jp/favoy/
Instagram:https://www.instagram.com/favoy_eplus/
X:https://x.com/favoy_eplus
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