スーダン系のルーツを持つ彼は、幼少期は物静かな一人っ子だったそうで、英国オックスフォードのボトリーという静かな街で、ひとりソウルやR&Bの探求に没頭。その後、ボーンマス大学の文芸学科で詩を専攻した。転機は2021年。友人宅で撮影したディアンジェロ「Untitled (How Does It Feel)」のカバー動画がSNSでバイラルを巻き起こした。これがクエストラブやミッシー・エリオットの目にも留まり、たちまち音楽業界の注目の的となる。
さらにその数カ月後、当時未発表だったデビューシングル「Golden」が、ヴァージル・アブローのラスト・ショーに起用される。「Golden」の鮮烈な反響を経て、ティンバランド、シド(Syd)、D・マイル、サラーム・レミ、ストームジーなど大物たちとのコラボも経験。これまで発表してきたEPも高い評価を獲得してきた。
そして、満を持しての『sounds for someone』で、彼は「決定打」という言葉すら生ぬるいほどの、圧倒的ポテンシャルを提示している。繊細かつエモーショナルな歌唱と豊かな音楽性は、ダニー・ハサウェイやスティーヴィー・ワンダー、プリンスやディアンジェロの系譜に連なる革新性を宿しており、旧知の間柄であるサンファ、音楽シーンの最前線に立つMk.gee、Dijonとも共振するモダンな感性も秘めている。
8月に控える初の日本ステージを前に、エルミーンとのインタビューが実現。アルバム制作秘話に加えて、藤井 風と意気投合するまでのエピソード、さらに誰もが知る少年漫画への思い入れを雄弁に語ってくれた。
アーティスト・プロフィール動画
人生を変えたデビューシングル「Golden」
スティーヴィー、ディアンジェロからの学び
―デビューアルバム『sounds for someone』は、これから何年先もレコード棚に置かれるべき傑作だと思います。まずはアルバムのコンセプトを教えてください。
エルミーン:このアルバムの背後にあるコンセプトは、僕自身が父との関係を見つめ直し、そこにあるあらゆる側面を探求することにありました。良い面も悪い面も、個人的な感情も、それ以外のどんな些細なことも含め、一曲ごとにそのすべてを掘り下げていこうと考えたのです。
制作のかなり後半になるまで自分でも気づかなかったのですが、結局そのテーマこそが、27曲もあった候補を12曲へと絞り込む決め手となりました。選ばれた12曲は、それらの感情をこれ以上ないほど正確に表現していると感じたからです。
タイトルを『sounds for someone』とした理由もそこにあります。ここでの「someone(誰か)」とは、僕にとっては父を指していますが、同時にこの作品が持つ多彩なサウンドや、感情の多角的な側面も意味しています。それと同時に、このタイトルはあえてオープンなままにしておきたかったんです。聴いてくださる方が、それぞれにとっての「誰か」――恋人であっても、兄弟や叔父、叔母であっても、その空白に自由に当てはめてもらえるように、という願いを込めています。
「sounds for my father」とすることもできましたが、僕はもっと幅広く捉えてもらいたいと考えました。なぜなら、僕が父に対して抱き、向き合ってきた感情は、きっと多くの人々がこれまでに経験したことのある、極めて普遍的なものだと感じているからです。
―そのテーマは自然に生まれてきたもの、ということですかね。
エルミーン:そうですね。最初から計画していたことなんて一つもありません。僕の活動のほとんどは、実はそれほど計画的なものではないんです。今思えば、去年12月にたまたま休暇で日本を訪れたことが、今こうして日本のメディアに取り上げてもらえるきっかけになりました。このご縁に感謝しています。藤井 風さんとの出会いは、僕にとって全く新しい世界を切り開いてくれました。本当に素晴らしい出来事です。突然、自分の動画に「これ、すごくいい!」といった日本語のコメントがたくさん寄せられるようになったんです。
―藤井さんとのお話も、ぜひ後ほど聞かせてください。スティーヴィー・ワンダーの『Songs In The Key Of Life』が大きなインスピレーションになったそうですね。
エルミーン:1つ目の理由はタイトルです。「sounds for someone」というコンセプトは、『Songs in the Key of Life』が持つ、圧倒的にオープンかつインクルーシブな佇まいに心からインスパイアされています。個人的に、あのタイトルはあらゆるプロジェクトの中で史上最高だと思っています。驚くほどシンプルでありながら、同時に複雑さも兼ね備えている。
また、『Songs In The Key Of Life』の中で、スティーヴィーは「このアルバムではこのサウンドを追求する」といった特定の枠に自分を当てはめることは決してしませんでした。あのタイトルの証明とも言える通り、彼は自分が伝えようとする感情の赴くままに、あらゆる領域を探索しています。どの楽器を使うべきかといったこだわりよりも、「その楽器がどれだけ深くこの感情を伝えられるか」ということだけを大切にしているんです。
例えば、「Have a Talk with God」から「If It's Magic」へと続く流れのように、一曲一曲が独自の音の世界観を持っています。さらに「Another Star」へと続くように、それぞれの曲が独立した宇宙を持っているのです。必要であればハープを使い、心から必要だと思えばその音を追求する。
僕のアルバムでも、そうした彼のロジックを指針にしています。周囲がどう思うかや、アルバムのジャンルが何であるかは気にしません。
―このアルバムを聴いて、ソウルミュージックのオーセンティックな側面と、革新的でオルタナティブな側面を、高度なレベルで両立させているように感じました。そんなあなたの核の部分に影響を与えたのは、どんなアーティストでしょう?
エルミーン:今回のプロジェクト全体において、ディアンジェロは最大の影響源の一人です。彼もまた、先ほどお話ししたスティーヴィーにも通じる信念を持っています。彼が発表した3枚のアルバムは、どれもまったく異なる響きを持っています。『Brown Sugar』から『Voodoo』、『Black Messiah』へと至る彼の旅路を辿れば、いかにしてファンとの絆を築き上げてきたかがよくわかる。僕のアルバムが大胆で、これまでとは異なるサウンドを打ち出しているのも、そうした背景があるからです。
僕の目標は、ディアンジェロがファンと築き上げたような関係性を持つことです。ファンが彼という表現者を心から信頼しているからこそ、彼がサウンドを劇的に変化させても、「彼が作るものなら、どんな形であれ間違いなく素晴らしいはずだ」と信じて愛し続ける。そんな関係に強く惹かれますし、僕も自分のファンベースとそういう絆を築いていきたい。例えば、もし次に僕がパンク・アルバムを作ったとしても、「彼が作るのだから、再生ボタンを押せばクオリティの高い音楽が流れてくるはずだ」と、僕のアイディアそのものを信頼してもらえるような。
ディアンジェロ「Untitled (How Does It Feel)」カバー動画
内向的な「自叙伝」、盟友サンファとの絆
―「Reclusive」はまさしく、スティーヴィー、プリンス、ディアンジェロの系譜に連なる名曲だと思います。日本のラジオでもすでにヘヴィローテーションされてます。制作面にまつわるストーリーを聞かせてください。
エルミーン:その曲を書くのは、本当に苦労しました。というのも、あまりにも飾り気のない、気恥ずかしいほど私的な内容だったからです。非常にパーソナルな、いわば僕自身の自叙伝のような一曲にすることが、この曲の核心でした。
そこには僕のリアルな日常が綴られています。朝、何をしているか。時折、どれほど自堕落な気分になるか。内向的で、殻に閉じこもってしまう自分……。特定のストーリーや劇的な感情について語るというよりは、僕のパーソナリティそのものをさらけ出すような内容です。
でも、プロデューサーがこの曲をすごく気に入ってくれて、彼が最後まで導いてくれたおかげで完成させることができました。僕一人の力では、とてもあそこまで辿り着けなかったでしょう。というのも、「自分の性格や日常なんて、誰が興味を持ってくれるんだろう?」という思いが拭えなかったんです。これまでは、少なくとも何らかの物語や、作品として成立させるための「詩的な要素」が必要だと思っていました。そうすることで、芸術的で価値のあるものになると思っていたので。
ですが、この曲はあまりにもシンプルすぎて、「こんな内容で、みんなはどう思うだろう?」と不安でたまりませんでした。最終的には、そうした自分自身のエゴを乗り越えて、この表現を受け入れる必要があったのです。
―いつ頃から書き始めた曲なんですか?
エルミーン:アルバム制作もかなり終盤に入ってからのことでした。アルバム自体が完成したのは、昨年の9月頃だったと思います。
実は「Reclusive」を書いたのは、前作のEP『Heat The Streets Some Mo'』(2025年)の楽曲を量産していたのとちょうど同じ週だったんです。あの1週間は本当に濃密でした。プロデューサーのジェフ・”ギティ”・ギテルマンと一緒に制作に没頭していて、まさに「乗りに乗っている」状態だったんです。月曜日に「Reclusive」を書き、火曜日には「Damage Control」、そして水曜日には「Useless (Without You)」を書き上げるといった具合に。
ただ、そんな勢いの中でも「Reclusive」を書いた時は、アルバムの他の楽曲に取り組んでいた時よりもずっとリラックスしていて、肩の力が抜けた状態でした。それが結果的に、この曲に絶妙なスウィート・スポットをもたらしてくれたのだと思います。
曲調が明るめなのも、アルバムの他の曲を書いた時とはマインドセットが違っていたからです。本来なら、雰囲気的には『Heat The Streets Some Mo'』に収録されるべき一曲だったのかもしれません。でも、内容があまりにパーソナルなものだったので、この曲は今回の『sounds for someone』にこそ相応しいと感じ、こちらに入れることにしたんです。
―「Saviour」に参加しているサンファも、プログレッシブとオーセンティックを両立させてきた人だと思います。彼との出会い、この曲における貢献について聞かせてください。
エルミーン:彼とはずいぶん前に出会いました。僕のキャリアの最初期に出会った一人です。当時、僕のマネージャーが担当していたアーティストで、自分にとってメンターのような存在だったリル・シルヴァ(Lil Silva)というプロデューサーがいました。彼こそが、僕が人生で初めてスタジオという場所に足を踏み入れたとき、そこで迎えてくれたプロデューサーだったんです。
僕たちはすぐに意気投合しました。当時、彼は『Yesterday Is Heavy』というアルバムを制作中で、そこにはサンファも参加していました。彼とサンファは密接な協力関係にあり、やがて僕にも曲を書いてほしいと声をかけてくれたんです。そこで僕が書いたのが、「About Us」というスポークンワード(朗読詩)の作品でした。本当に楽しい経験でしたね。それが「Golden」と並んで、世に出た僕の最初の楽曲だったと思います。
その後、アルバムのリリース記念ライブが行われることになり、参加アーティスト全員が集まってそれぞれの曲を披露することになりました。その日のバックステージで出会ったのが、サンファだったんです。彼は本当に素敵な人で、その日を境にスタジオに入り、制作を共にするようになりました。以前、僕のプロジェクトのために「Mama」という曲を共作したこともあります。
そして数年が経った今、ピアノで「Saviour」という曲を書いたときのことです。この曲はバラードですが、制作に取り掛かる前から、僕には確信めいたものがありました。「この曲を完成させてくれるのは、サンファしかいない」と。そして彼は、まさに僕が思い描いていた通りの場所へと、この曲を導いてくれたんです。
音楽への「執着」が生みだす魔法
―「Cry Against The Wind」のサウンドは、DijonやMk.geeとも共振しているようにも感じました。その両者とコラボレーションしているアンドリュー・エイジドも参加していますが、この曲ではどんなことにトライしたかったのでしょう?
エルミーン:この曲で挑戦したかったのは、曲の中盤で劇的に姿を変える、クラシックな名曲たちが持つような魔法です。伝えたい焦点や感情があまりに複雑なとき、物語のすべてを語り切るためには、どうしても曲調のシフトが必要になることがあります。
たとえばフランク・オーシャンの「Pyramids」や、プリンスの「The Cross」のように。そうした曲は数多くありますが、個人的なお気に入りはジョージ・クリントンの「Super Spirit」です。物語の全貌を語るために、あるいは「風に向かって叫ぶ(cry against the wind)」ために、形を変えざるを得ない曲というものがあるのです。僕はずっと、そんな曲を書きたいと願ってきました。けれど、それは向こうから自然にやってくるものであって、無理に作り出せるものではありません。普段の制作では、「このストーリーなら、同じコード進行のままでも十分に伝わるはずだ」と判断することの方がずっと多いのです。
しかし、「Cry Against the Wind」で語るべき物語に向き合ったとき、それは違いました。これは、父からの最後の電話に出られなかったことへの罪悪感、そしてその直後に彼が亡くなってしまったこと……そうした経験を綴った物語です。これほどまでに重いテーマを背負った時、ようやく気づいたのです。「ああ、この物語のすべてを語り尽くすには、今の自分には後半のセクション、つまり第2部が必要なんだ」と。
―過去のインタビューで「僕の夢は、自分たちの世代のソウルクエリアンズを作り上げること、その一部になること」と語っていましたよね。今日のソウルミュージックを進化させているのは、エルミーンさんやDijon、Mk.geeといった新世代だと思います。あなたたちの世代のソウルクエリアンズは、どの点において革新的で、お互いをどのように高め合っていると考えていますか?
エルミーン:ソウルクエリアンズがあれほどまでに素晴らしかったのは、結局のところ、彼らがただの「音楽オタク」の集まりだったからだと思うんです。たまたま同じ場所に、とてつもないオタクたちが居合わせた。それが、あの輝かしい音楽を生み出した理由ではないでしょうか。
メンバー全員が、自分たちの選んだ道において信じられないほど卓越していました。それぞれが独自のスキルセットを持っていたんです。エリカ・バドゥはどこまでもエリカらしく、ディアンジェロはディアンジェロにしか出せない音を鳴らしていた。ザ・ルーツも、コモンも、みんな自分たちだけの「何か」を持っていました。それぞれの際立った専門性と、音楽に対する普遍的で絶対的な愛情が組み合わさった、完璧な融合でした。正直なところ、彼らほどのレベルの(日本語で)「otaku」には、長いあいだ出会えていない気がします。
でも、結局のところ必要なのはそれだけなんです。音楽に執着し、取り憑かれたようなオタクたちを見つけ出し、一つの部屋に長いこと閉じ込めておけば、そこから必ず素晴らしい何かが生まれます。なぜなら、僕らはただ、音楽を愛してやまないからです。本当に、それだけでいい。
一時期、R&Bやソウルミュージックは、少し違う方向へ向かっていたように感じます。R&Bやソウルの歴史、その系譜、あらゆるサウンドに対して完全にのめり込むような「執着(obsession)」が、以前ほど重視されなくなっていました。例えば、スライ・ストーンの古い楽曲の、たった一つのスネアの音にまで病的にこだわるような姿勢です。しかし今は、そうした「執着」が戻ってきた気がします。世界中のあらゆる音楽に簡単にアクセスできる現代だからこそ、すべてを学び、理解することが容易になりました。あの情熱が、再び息を吹き返しているんです。
―ソウルクエリアンズといえば、その界隈と近しいラファエル・サディークが参加した「Light By The Window」も印象的です。彼とのデュエットはどんな経験になりましたか?
エルミーン:本当に、最高に楽しい時間でした。何しろ、彼は僕のヒーローですから。実を言うと、一緒に曲を書き始めるまでに何度かセッションを重ねたのですが、最初は緊張して音楽を作るどころではありませんでした。結局、ひたすらお喋りして終わってしまう、なんてこともあったんです。
ようやく「Light by the Window」の制作に取り掛かったのは、4回目くらいのセッションだったと思います。その頃になって、ようやく落ち着きを取り戻せました。「今は一人のファンとして浮き足立つのはやめて、ちゃんとプロとして仕事をしよう」と自分に言い聞かせたんです。
いざ書き始めると、本当に素晴らしい体験でした。彼は、メロディや歌詞を書くという僕の役割を心から信頼して任せてくれました。そして彼自身は、彼にしかできない役割に専念する。ラファエルのような存在が、僕を頼り、僕の可能性を信じてくれている……その事実に、言いようのない喜びを感じました。
彼は僕の作業に一切口出しせず、「君ならできる。最高のものにしてくれ」と言って任せてくれたんです。そして彼も自分の仕事をし、お互いの成果を突き合わせた時に「ワオ、最高だね!」と言い合う。彼と肩を並べて、ただ純粋にクリエイションに没頭できた時間は、本当に格別なものでした。
―シンガーとしての魅力が全開になっているアルバムでもありますよね。テクニカルな面で、今作において、最も「新たな自分を発見した」と感じた歌唱シーンはどこですか?
エルミーン:いい質問ですね。「Dont Say Maybe」は……何と言えばいいか、表現が難しいのですが。例えるなら、あれはチャント(詠唱)」のようなものなんです。歌うのがそれほど難しいわけではありません。(口ずさむ)〈♪I always hated the way you treated me…〉(君の僕への接し方が、ずっと嫌いだった……)
うーん、どう説明すればいいでしょう。誰を例に出すのが適切かな。そうですね、クイーンの『Bohemian Rhapsody』の歌い方に近いかもしれません。あの曲には、どこか非常にイギリス的というか、奇妙なほどに「古典的なイギリス英語」の響きがありますよね。「Dont Say Maybe」は、僕にとってそうした領域に初めて足を踏み入れた曲です。
―客観的に見て、自分の歌の魅力や強みはどんなところにあると思いますか?
エルミーン:「繊細さ(sensitivity)」こそが、僕が持つ真のスーパーパワーだと思っています。それは聴き手に、とても親密な印象を与えるんです。特にレコーディングの時は、マイクに極限まで近づいて歌うようにしています。自分の声の「その領域(至近距離での響き)」を誰よりも信じているからこそ、あえてその場所にとどまろうとするんです。
この手法は、ベイビーフェイスから学んだものでもあります。彼もまた、同じような魔法を持っていました。どこか壊れそうでいて、それでいて甘く心地よい……そんな絶妙なラインに漂い続けることができる。僕にとっても、そこは一日中だって歌っていられるような場所なんです。それこそが、自分のスウィート・スポットなんだと感じています。
―過去のインタビューでは、「ムスリムとしてのアイデンティティと、音楽の世界で生きていくこと。その二つの間で生じる葛藤にしばしば直面し、悩み続けています」という発言も印象的でした。今作の制作を通じて、自身のルーツやアイデンティティとどのように向き合ったのでしょう?
エルミーン:それは、ただ自分自身をより深く掘り下げるためのプロセスだったのかなと思います。それが将来、具体的にどう役立つのかはまだ分かりません。ですが、こうした思索を重ねることで、いつの日か自分を救ってくれるような「正しい問い」に辿り着けるのではないか、そんな気がしているんです。確かなのは、これが僕の人生において、おそらく一生をかけて向き合い、格闘し続けていくテーマだということです。
藤井 風と過ごしたクリスマス、サマーソニック出演に向けて
―では改めて、藤井 風さんとのセッションについて聞かせてください。どのように彼のことを知り、どういう経緯でセッションが実現したのでしょうか?
エルミーン:実は数年前、彼が僕の曲をいくつか気に入ってくれたことがきっかけで、繋がりができたんです。ただ、そこから実際に会う機会はずっとありませんでした。
今回、休暇で日本へ行くことになったとき、「彼が今どんな活動をしているのか、ぜひ会って確かめなきゃいけない」と思ったんです。それで実際に会ったのですが、クリスマス当日だったので、二人でKFC(ケンタッキー)を探し回るはめになりました(笑)。そんなふうに街を巡っているうちに、結局スタジオに行き着いたんです。
そこでは本当に楽しい時間を過ごしました。お互いの曲を歌い合ったり、ただ純粋に一人の「音楽ファン」として過ごしたり。僕たちが愛してやまないR&Bについて語り合って……最高に楽しかったです。
―クリスマスに「音楽オタク」が集まったと(笑)。セッションで一緒に演奏した「Different Too」は、ありふれた日常の中で、他の誰とも違うユニコーンと出会ったときの衝撃を歌った曲ですよね。エルミーンさんと藤井さんもユニコーンだと思いますが、実際に交流してみて、彼のどんなところに共感しましたか?
エルミーン:一番共感したのは、彼のルーツの話です。彼は広島の近くにある、岡山の出身だと言っていました。都会で育ったわけではない。彼にとって音楽を見つけ出すことは、一つの「才能」であると同時に、自分自身の「アイデンティティ」を見つけ出すための唯一の手段だったんです。でもそれは同時に、周囲の人々から彼を「孤立」させるものでもありました。周りの人たちとは、そんなふうに音楽で深く繋がることができなかったからです。
オックスフォードで育った僕も、まったく同じ経験をしてきました。僕の周りには、自分がのめり込んでいるような音楽に執着している人なんて、一人もいませんでした。それは、僕だけが学び、探求する「自分だけの世界」だったのです。誰も気にかけていないものを、自分一人で愛し、楽しむ方法を学ぶ……。その孤独なプロセスこそ、僕たちが深く共感し合えた部分でした。
だから、実際に出会ったときは驚きました。「うわ、嘘だろ! まさか世界の反対側で、同じ時期に、君も全く同じ経験をしていたなんて!」と、運命的なものを感じずにはいられなかったのです。
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―サマーソニックで初来日が決まっています。どんなライブになりそうですか?
エルミーン:もう、最高にエキサイティングなステージになるはずです。楽しみで仕方がなくて、待ちきれない思いですから。日本でショーができるなんて、今でも信じられないくらいです。きっとステージの上では、その高揚感がずっと溢れ出していると思います。
あ、それから、間違いなく『ONE PIECE』のネタをたくさん盛り込むことになると思います。だって、ついに日本に来られたんですから。興奮を抑えきれるわけがないでしょう!
―『ONE PIECE』が大好きで、かなり影響を受けているそうですね。好きなキャラは?
エルミーン:間違いなく白ひげです。彼こそが僕のヒーロー、ナンバーワンですね。正直なところ、『ONE PIECE』は僕の人生で最も長く、変わらずにそばにあり続けてくれた存在なんです。音楽にのめり込むよりもずっと前、6歳の頃から毎週欠かさず漫画を読み、アニメを観続けてきました。
だから、あの物語の登場人物たちは、文字通り僕を育ててくれた家族のようなものなんです。ルフィは僕にとっての「兄貴」。そして白ひげは、僕にとっての「親父」でした。彼ら全員が、僕の考え方そのものを変えてくれたんです。それから、ドラム王国のDr.ヒルルクも大好きなキャラクターの一人です。彼が遺した『人はいつ死ぬと思う…?/……人に忘れられた時さ…!!!』というあのセリフ……あれこそが、今の僕の生きる指針になっています。本当に、信じられないほど素晴らしい言葉ですよね。
―サウンドトラックか何かを、ぜひ手掛けるべきですよ。
エルミーン:ぜひやってみたいですね! 今、実写版も新しく始まってますよね。実は今の目標は、演技学校に通うことなんです。いつかあの世界の一員として、出演者として参加するために。
―素敵です。サマーソニックでのパフォーマンスを通して、観客にどのようなことを感じてほしいですか? 何かサプライズも用意されているのでしょうか?
エルミーン:サプライズ、何か用意できているといいな……と思っています(笑)。とにかく、みんなに楽しんでもらいたい。それが一番です。日本の観客と僕は、今回が文字どおり初対面になるわけですから。みなさんがどれくらい僕の曲を知ってくれているのか、そしてどれだけ深く繋がれるのか。その瞬間を、心から楽しみにしています。
@elmiene 『ONE PIECE』を読みながら歌うエルミーン
エルミーン
デビュー・アルバム『sounds for someone』
発売中
再生・購入:https://umj.lnk.to/EM_sfs
SUMMER SONIC 2026
2026年8月14日(金)・15日(土)・16日(日)
東京会場:ZOZOマリンスタジアム & 幕張メッセ
大阪会場:万博記念公園
※エルミーンは8月15日(土)東京会場、16日(日)大阪会場に出演
https://www.summersonic.com/


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