国内外からサイバーセキュリティ研究者や実務家が集まる国際会議「CODE BLUE 2024」が 11 月 9 日から開催されている。
CODE BLUE は2014 年 2 月から開催され今年で 12 回目。
今年の CODE BLUE は基調講演の『AIによる形式検証と形式検証におけるAIの役割』にはじまり AI をテーマとした研究報告が充実している。小勝 純 氏の『Piloting Edge Copilot』は、外から Edge Copilot を制御する研究だが、斎藤氏いわく「今年の Black Hat USA 2024 で Copilot に関する研究が複数発表されているが比肩しうるオリジナリティのある研究」だという。
台湾の OT セキュリティ企業、TXOne Networksの 3 名による「意味検出に必要なのは注意力だけ:ニューラル・シンボリック・アプローチによる新しい変換器」はこれまで専門家の稼働が必要だった難読化されたマルウェアの分析等を大規模言語モデル(LLM)を用いて自動化を試みた研究で、「新しいニューラルネットワークベースのシンボリック実行 LLM である CuIDA を提案」するという。
また、アーポ・オクスマン氏の『PlayStation 5のネットワーク暗号化を突破する』のゲームコンソールにはじまり、ダビド・メレンデス氏の『レガシー鉄道信号システムの悪用』のなんと鉄道信号、ニコライ・エレンコフ氏とヴィンセント・チェン氏の『Pixelセキュリティの内部解析』の Google Pixel スマホなど、研究テーマとした対象も多様性に富んでいる。
来場者には、配付資料がおしなべて電子化される潮流の現在、80 ページの紙のパンフレットが配布されるという。篠田氏によれば、合計 39 セッション(企業講演含む)に及ぶ各セッションを聞き逃して欲しくない配慮だという。
CODE BLUE の企業講演は「OpenTalks」と呼ばれるが、「スポンサー講演も面白い」のが CODE BLUE の特長のひとつ。リード獲得だけが目的のしょぼい講演が少なく、講演者自身もまるで年一のお祭のように楽しみながら、丁寧に準備してきたと感じられるものが多い。
たとえば国内のセキュリティ文脈での AI 研究の第一人者である高江洲氏が MBSD から出るのだが、同氏は下手をすると Palo や Okta クラスのユニコーン企業の日本法人が行うイベントに主役として呼ばれてもおかしくない格の研究者である。そもそも高江洲氏に限らず MBSD は、事業上のつながりでもない限り、チンケな企業イベントになどたとえ基調講演枠で呼ばれても鼻もひっかけない孤高の方針。
年々数が増える応募論文を審査するレビューボードには、中島 明日香 氏や米内 貴志 氏など若い研究者の登用も積極的に行われている。サイバー犯罪担当の特別レビューボードには福森 大喜 氏の名前も見える。
そのサイバー犯罪に関する講演では、ルーカス・ステファンコ氏、ヤクブ・オスマニ氏による『NGate:NFCを中継してATMから不正引き出しを行う新型Androidマルウェア』、大規模なフィッシング攻撃に迫った、マンガタス・トンダン氏の『V フォー・ヴェンデッタ:フィッシング被害を受けた後のグローバル・フィッシング・プラットフォームの解剖』、ロエイ・シャーマン氏の『SnowflakeからSnowstormへ:侵害と検知の対処』の 3 講演が特にレビューボードの評価と期待が高かったという。
CTF などのコンテストやワークショップ、Training などの併設イベントが 11 種類と多いことも CODE BLUE の特徴。14 日と 15 日に開催される「Kunoichi Cyber Game(くのいちサイバーゲーム)」は、若年層の女性セキュリティ技術者育成を目的とした CTF 競技で、CODE BLUE 事務局の篠田 佳奈 氏が企画し、各国に呼びかけ、日米英欧の若手女性技術者で構成された 4 チームが戦う。
「子供たちが将来の夢を描く幼少期から働きかけることが有効。日本では STEM Girls Ambassadors のような試みはあるものの、そこからはサイバーセキュリティがすっぽりと抜け落ちている(篠田氏)」
篠田氏によれば、海外ではサイバーセキュリティに携わる女性の人材育成が積極的に国の方針のもとで行われており、英国では 7 年前から女子中学生向けのセキュリティ教育プログラムが存在し、イタリアでは 4 歳から女性のセキュリティ技術者育成を目指した教育が行われているという。本誌 ScanNetSecurity 編集長 上野は、父親が経営していたパソコンショップの屋号が「ハッカーズ」で、自宅には何十台もパソコンが転がっているという英才教育的環境で生育し、いまではすっかり「あんな風」になってしまったが、この事例からも人格形成初期から接触することの意義が大きいことがわかる。
CODE BLUE 2024 の当日入場料は 128,000 円とお安くはないが、メイントラック以外のセッションがすべて聴講可能なビジターチケットは 3 万円台で登録できる。日本のセキュリティカンファレンスとしては海外からのガチ勢の来場者がおそらく最も多く、最も国際的知名度もリスペクトも高い CODE BLUE で新しい仲間や技術を発見してほしい。
CODE BLUE は2014 年 2 月から開催され今年で 12 回目。
高い応募倍率(14.5 倍)を経て採択された研究論文が発表されるカンファレンスは、11 月 14 日 (木)、11 月 15 日 (金)の 2 日間にわたりベルサール高田馬場で行われる。開催直前の CODE BLUE 2024 の見どころについて、事務局の篠田 佳奈 氏(写真)と斉藤 健一 氏に話を聞いた。
今年の CODE BLUE は基調講演の『AIによる形式検証と形式検証におけるAIの役割』にはじまり AI をテーマとした研究報告が充実している。小勝 純 氏の『Piloting Edge Copilot』は、外から Edge Copilot を制御する研究だが、斎藤氏いわく「今年の Black Hat USA 2024 で Copilot に関する研究が複数発表されているが比肩しうるオリジナリティのある研究」だという。
台湾の OT セキュリティ企業、TXOne Networksの 3 名による「意味検出に必要なのは注意力だけ:ニューラル・シンボリック・アプローチによる新しい変換器」はこれまで専門家の稼働が必要だった難読化されたマルウェアの分析等を大規模言語モデル(LLM)を用いて自動化を試みた研究で、「新しいニューラルネットワークベースのシンボリック実行 LLM である CuIDA を提案」するという。
また、アーポ・オクスマン氏の『PlayStation 5のネットワーク暗号化を突破する』のゲームコンソールにはじまり、ダビド・メレンデス氏の『レガシー鉄道信号システムの悪用』のなんと鉄道信号、ニコライ・エレンコフ氏とヴィンセント・チェン氏の『Pixelセキュリティの内部解析』の Google Pixel スマホなど、研究テーマとした対象も多様性に富んでいる。
来場者には、配付資料がおしなべて電子化される潮流の現在、80 ページの紙のパンフレットが配布されるという。篠田氏によれば、合計 39 セッション(企業講演含む)に及ぶ各セッションを聞き逃して欲しくない配慮だという。
CODE BLUE の企業講演は「OpenTalks」と呼ばれるが、「スポンサー講演も面白い」のが CODE BLUE の特長のひとつ。リード獲得だけが目的のしょぼい講演が少なく、講演者自身もまるで年一のお祭のように楽しみながら、丁寧に準備してきたと感じられるものが多い。
たとえば国内のセキュリティ文脈での AI 研究の第一人者である高江洲氏が MBSD から出るのだが、同氏は下手をすると Palo や Okta クラスのユニコーン企業の日本法人が行うイベントに主役として呼ばれてもおかしくない格の研究者である。そもそも高江洲氏に限らず MBSD は、事業上のつながりでもない限り、チンケな企業イベントになどたとえ基調講演枠で呼ばれても鼻もひっかけない孤高の方針。
こういう人が CODE BLUE OpenTalks にはゴロゴロいるから面白い。
年々数が増える応募論文を審査するレビューボードには、中島 明日香 氏や米内 貴志 氏など若い研究者の登用も積極的に行われている。サイバー犯罪担当の特別レビューボードには福森 大喜 氏の名前も見える。
そのサイバー犯罪に関する講演では、ルーカス・ステファンコ氏、ヤクブ・オスマニ氏による『NGate:NFCを中継してATMから不正引き出しを行う新型Androidマルウェア』、大規模なフィッシング攻撃に迫った、マンガタス・トンダン氏の『V フォー・ヴェンデッタ:フィッシング被害を受けた後のグローバル・フィッシング・プラットフォームの解剖』、ロエイ・シャーマン氏の『SnowflakeからSnowstormへ:侵害と検知の対処』の 3 講演が特にレビューボードの評価と期待が高かったという。
CTF などのコンテストやワークショップ、Training などの併設イベントが 11 種類と多いことも CODE BLUE の特徴。14 日と 15 日に開催される「Kunoichi Cyber Game(くのいちサイバーゲーム)」は、若年層の女性セキュリティ技術者育成を目的とした CTF 競技で、CODE BLUE 事務局の篠田 佳奈 氏が企画し、各国に呼びかけ、日米英欧の若手女性技術者で構成された 4 チームが戦う。
「子供たちが将来の夢を描く幼少期から働きかけることが有効。日本では STEM Girls Ambassadors のような試みはあるものの、そこからはサイバーセキュリティがすっぽりと抜け落ちている(篠田氏)」
篠田氏によれば、海外ではサイバーセキュリティに携わる女性の人材育成が積極的に国の方針のもとで行われており、英国では 7 年前から女子中学生向けのセキュリティ教育プログラムが存在し、イタリアでは 4 歳から女性のセキュリティ技術者育成を目指した教育が行われているという。本誌 ScanNetSecurity 編集長 上野は、父親が経営していたパソコンショップの屋号が「ハッカーズ」で、自宅には何十台もパソコンが転がっているという英才教育的環境で生育し、いまではすっかり「あんな風」になってしまったが、この事例からも人格形成初期から接触することの意義が大きいことがわかる。
CODE BLUE 2024 の当日入場料は 128,000 円とお安くはないが、メイントラック以外のセッションがすべて聴講可能なビジターチケットは 3 万円台で登録できる。日本のセキュリティカンファレンスとしては海外からのガチ勢の来場者がおそらく最も多く、最も国際的知名度もリスペクトも高い CODE BLUE で新しい仲間や技術を発見してほしい。
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