上海証券取引所のメインボードへの上場を目指す、江蘇華辰変圧器(603097/上海)が4月28日、新規公開(IPO)に向けた公募を開始する。4000万株を発行予定で、公募価格は8.53元。
同社は2007年設立の民営企業で、17年に株式会社化した。送配電および制御設備の研究開発、生産、販売を主業務とし、主要製品は乾式変圧器、油入り変圧器、キュービクル式受変電設備、電気設備で、電力ネットワーク、風力・太陽光などの新エネルギー、軌道交通、電気自動車の充電スポット、インフラ建設、建築など幅広い分野に利用されている。2021年12月期の売上構成は乾式変圧器が58.69%、油入り変圧器が22.07%、キュービクル式受変電装置が13.66%、電気設備が5.32%。20年における同社の中国国内変圧器市場シェアは生産量ベースで0.52%となっている。
中国の電力使用量は2011年の5兆キロワット時弱から21年には8兆3128億キロワット時にまで増加した。これに伴い送配電・制御設備の市場規模も年々拡大している。20年の中国の変圧器市場規模は約29億8700万米ドルで、世界の17.17%を占めている。27年には38億米ドルに達し、成長ペースは年平均3.5%となる見込みだ。また、中国の電力ネットワークプロジェクト投資額も2013年の3849億元から21年には4951万元にまで成長した。
さらに、中国政府は石炭や化石燃料に代わる新エネルギーの普及を強力に推進しており、風力発電、太陽光発電の規模が急速に拡大している。特に、エネルギー貯蔵産業は目覚ましい進歩を遂げており、2020年には2.7ギガワット分設備が新たに稼働を開始し、稼働中の設備は累計33.4ギガワットに到達した。
同社は中国国内の業界において先進的な生産設備を揃え、高品質で信頼性の高い製品を提供している。また、現在までに子会社を含めて98件の特許を取得するなど、研究開発にも積極的に取組んでいる。さらに、江蘇省をはじめとする華東地域を中心に充実した販売・アフターサービスネットワークを構築し、顧客から高い認知度、満足度を得ていることなどが強みだ。
一方で、さらなる成長を望む上で必要な生産能力の拡張、生産設備のスマート化、デジタル化、新製品の設計、新技術の開発、そのための優れた人材育成を行う資金力が不足しており、新規上場による資金力の強化により、競合する上場企業に対する劣勢を跳ね返したいところだ。また、銅や方向性ケイ素鋼、絶縁材料などの原材料価格上昇、海外の有力メーカーや中国国内メーカーとの競争激化といった経営リスクを抱えている。
2021年12月期の売上高は8億7105万元(前期比27.82%増)、純利益は7841万元(同5.22%減)。22年1~3月期の業績予測は、売上高が1億7000万~1億8000万元(前年同期比0.9~6.84%増)、純利益が2000万~2100万元(同90.96~100.5%増)となっている。(編集担当:今関忠馬)(イメージ写真提供:123RF)