中国市場における4月のIPOは低調だった。中でも、上海科創板と香港は、初値の公開価格に対する平均騰落率がマイナス圏に転落してしまった。
上海科創板の新規上場銘柄数は16銘柄と前月(3月)実績を上回ったものの、11銘柄の上場初値が公開価格を割り込んだ。また、香港市場ではIPO銘柄がわずかに2銘柄だけだったが、ニューヨーク市場(NYSE)と重複上場になったQ&Aサイト運営の知乎(ZHIHU)が大幅な公開価格割れになった。ただ、4月29日に開催された中国共産党の中央政治局会議において「プラットフォーム経済の規範化と健全な発展に向け、具体的な支援措置を実施する方針」が発表された。アリババ(09988/香港)やテンセント(00700/香港)などを対象とした「特別な是正作業」の完了も確認されている。このことによって29日の香港株式市場は大幅な上昇になっている。これによってネット関連企業のIPO状況が改善することも期待される。

 上海市場では、科創板に新規上場した16銘柄のうち、5銘柄は前期赤字の銘柄であり、7銘柄が前期決算基準で公開価格のPERが3ケタだった。業績面で厳しい局面にある銘柄に対する市場の期待感は薄らいでいる。月後半には、公開価格を前期末PER水準で30%台に抑えた銘柄が上場したが、初値が公開価格を上回ることができなかった。市場全体のIPOに対するセンチメントの後退が感じられた。

 深セン市場では、上海に比べると新規上場はスムーズに進展した。創業板では新規上場16銘柄のうち、公開価格割れの初値になった銘柄は7銘柄と、過半数の銘柄が公開価格を上回った。
これは、深セン市場においては公開価格の値決めが、前期PER基準で2ケタ台に抑えられ、中にはPER20%台で公開価格を決定する例もあるほど、慎重な値決めをしていることが奏功していると見ることもできる。

 北京は、新規上場が1銘柄にとどまり、上場審査そのものが慎重に行われている印象だ。北京市場のIPOは、上海の科創板、深センの創業板という新興企業向けの市場に増して若く伸び盛りの企業に開かれた市場だが、昨今の新型コロナのまん延に対する主要都市のロックダウンなどの措置によって、中国経済の先行きに不透明感が強まっており、北京への上場案件が減少している。

 また、香港市場では、米国に上場しているQ&Aサイト運営の知乎(ZHIHU)(02390/香港)が重複上場で登場したが、初値は公開価格を22%超下回る低調なスタートになった。(表は、中国4市場の過去3カ月間のIPOの初値騰落率の状況)
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