7日付東方網によると、9月にも有人宇宙船「神舟7号」が打ち上げられた通称「酒泉衛星発射センター(酒泉衛星発射中心)」をめぐり、「所在地は内モンゴル。甘粛省酒泉市の名を使うのは不当」として、内モンゴル自治区側が動きを本格化しはじめた。


関連写真:そのほかの神舟7号に関する写真

 「酒泉衛星発射センター」の所在地は、内モンゴル自治区最西部のアルシャン・アイマグ(阿拉善盟)内のエジナ・ホショー(額済納旗)。建設されたのは1959年で、最も近い都市が甘粛省酒泉市だったことから、「酒泉衛星発射センター」と呼ばれるようになった。

 内モンゴル側によると、1992年に同センターを訪れた江沢民国家主席の命名よる「東風航天城」との正式名称を使用すべきで、「酒泉」の地名を使うのはおかしい。中国で最も権威ある辞書のひとつ「辞海」の1999年版には、「酒泉衛星発射センターは甘粛省酒泉市の北東部にある」などの記載があるため、同辞書を発行する上海辞書出版社に訂正を求めた。

 内モンゴル側が躍起になるのは、酒泉市が「宇宙への窓口」などとのキャッチフレーズで観光客誘致を行い成功していることがある。2003年の神舟5号で始まった中国の有人宇宙飛行、07年の月探査線「嫦娥1号」の打ち上げで、宇宙開発への関心が高まったこともあり、酒泉市への観光客は急増。02年の同市GDP(地域内総生産)に占める観光業の割合には3.8%だったが、07年には8.4%の16.4億元に膨らんだ。

 また、酒泉市は同じ甘粛省内にある敦煌莫高窟の壁画にある「飛天」を宣伝に組み合わせた。同市で06年に出版された写真集「中国宇宙飛行の都―酒泉」では、「1000年前、酒泉の人は敦煌莫高窟に美しい飛天を書いた。1000年後、神舟5号は酒泉で離陸。天空に中国第1号の宇宙飛行士を送り出した」などと記載されていることも、内モンゴル側の神経を逆なでした。

 酒泉市では旅行会社65社が、「酒泉衛星発射センター」の見学ツアーを売り出している。
同市中心部から「センター」までの距離は約280キロメートルだが、いくつかの施設を見学する日帰り旅行で、料金は400元程度。多くの観光客が利用しているという。

 一方、内モンゴルでも観光客誘致の動きが本格化。エジナの中心街から「東風航天城」までの約150キロメートルの道路を2.4億元を投じて整備して、2008年8月19日に開通させた。また、見学ツアー受け入れを行なう「東風航天城」の事務所はこれまで酒泉市にしかなかったが、エジナでも事務所を開設することになった。

 内モンゴル側は、神舟5-7号の着陸地点が同自治区内のオラーンチャブ市内だったことから「有人宇宙飛行は出発も帰還も内モンゴル」などとして、売り込みを強化する方針だ。

 内蒙古文盛法律事務所の苗栄盛主任弁護士によると、衛星打ち上げの地名は現地によって名誉であり、ビジネス面で大きな利益をもたらすため、正しい使用を求める法的な権利が発生するという。

 写真は東風航天城=酒泉衛星発射センター。ロケットは神舟7号を打ち上げた長征2号F型ロケット。神舟7号部分を含め組み立てを追え、発射塔に据えつける直前の写真。中国新聞社が9月22日に配信。(編集担当:如月隼人)

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