作家の張一一さんが16日、自らのブログで「屈原は偉大なロマン主義愛国詩人か?」と題する文章を発表したことで、同ブログなどに批判の声が集まった。

 屈原は中国戦国時代の楚国の政治家。
友好を求める秦国の申し出を謀略と見抜き楚王をいさめたが聞き入れられず、楚王は秦の虜(とりこ)になった。急遽(きゅうきょ)、擁立された新王は屈原と対立する人物を重用。屈原は政界の中央から退けられた。結局、楚は秦に攻め込まれ、自国の都が陥落した日に屈原は汨羅江(べきらこう)に入水自殺した。

 屈原が残した「楚辞」は、愛国の情と幻想が入り混じる傑作として評価され、現代の中国でも屈原は偉大なロマン主義愛国詩人として高く評価されている。小学校でも愛国教育の目的で、屈原の故事は必ず学ぶ。

 張一一さんは、まず屈原の「愛国」に疑問視。「彼が愛したのは、現在の湖南・湖北の2省で、たかだか『愛省』」、「(全国統一に向け)大きく前進していた時代の車輪を食い止めようと妄想した、封建官僚」と酷評。「(秦の本拠地だった)陝西省の人は、屈原をどう思っているのだろうか」と記した。

 また、屈原が作品の中で、自らを「美人」と称し、花とたわむれる様子が描いていることには同性愛者であり自殺した、俳優のレスリー・チャン(張国栄)を引きあいに出し、楚王に対する忠誠心なども、(屈原にとって)自然な感情だったと論じた。そして「屈原の詩歌は現在の同性愛者からみれば、ロマンチックな色彩があるが、死に方は少しもロマンチックでない」として、「自分の思いがかなわないから、遠い世界に飛び立とうとした。悲惨で惜しむべきことであり、崇拝の対象になるものでは、絶対にない」などと論じた。


 屈原への総合的評価としては「我が国に『個人崇拝』の悪例を作り出した人物で、後世によくない影響を与え続けた」などと批判。特に自殺者である屈原を讃美していることに反対し、若者に「いつになったら、自分の頭で考えることができる。風に吹かれるままに盲従することをやめる。これは極めて大きな社会の課題だ」と論じた。

 さらに2008年から屈原が死んだとされる旧暦5月5日の「端午節」が祝日に指定されたことに対して「屈原を神聖な祭壇に供えるために無意味な3連休を作り、春節(旧正月)の連休が圧縮された」と批判した。

 同ブログに寄せられた意見には、張一一さんに強く反発するものが多い。「屈原の作品をさっぱり分かっていない、どうせ原文では読めないのだろう」、「あんたの意見を受け入れたら、それは盲従ではないのかね」、「中国が滅亡しそうになったら、賢明なる張一一は歴史の流れには逆らわずさっさと降伏するのだろう」、「有名になろうとしているのだろう。カネが儲かるからな」といった書き込みが続いている。

 また、同ブログを紹介した中国新聞社の記事に寄せられた意見も「こいつは、自分の父親も悪人よばわりする奴だ」、「このろくでなし。我々の偉大な先人を汚すな」、「人面獣心」などといった非難が多い。(編集担当:如月隼人)

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