19日付中国青年報によると、雲南省人民代表大会の謝家放代表(議員)はこのほど、警察官の職務上の負担が大きすぎることが不祥事の原因のひとつになっているとの考えを明らかにした。謝代表によると、中国では警察官の10.56%に心理的障害があるという。


■警察官がけんか相手を射殺。揺らぐ庶民の信頼

 雲南省では13日、酒酔い運転をした警察官が別の自動車と衝突。けんかになった相手を、勤務後も所持していた拳銃で撃ち、死亡させた。警察当局は、退勤時に銃を返却しなかったことは、重大な規則違反と説明した。

 中国ではこれまでにも警察官の不祥事が発生しているが、同事件は、警察・警察官への信頼をさらに損ねることになった。

 謝代表は、13日の事件は極端な例だが、警察官全体が持つ心理面の問題が背景にあると主張。中国の警察官の10.56%に心理的障害があり、2.11%は重度の障害を持つ。障害は強迫症状、敵対性、偏執、うつ、対人関係での過敏性などとして発現し、警察官はアルコール依存、自殺、離婚の率が高いという。

■過大な負担。人口当たり警察官数は先進国の3分の1

 謝代表によると、心理的障害を持つ警察官の多さは、勤務上の過大な負担による。「中国全国の警察官は160万人。人口1万人当たり12人で、西側諸国の3分の1にすぎない」という。


 さらに、治安維持や肉体的トレーニング、爆発物取り扱いなどの技能訓練など、通常業務とされる仕事以外に、集中取り締まりや資格取得・試験など、期限を決められた臨時の仕事が延々と続く。残業も過多で、規則どおりに休憩や休暇を取れる保証もない。

 公務執行中に群集に罵られたり、殴られたりすることも多い。事件が解決できなかったり、ミスをすると、社会から容赦なく批判される。事件現場で残酷な場面を目にすることが多いことも、警察官の心理的重圧になっているという。

 謝代表は雲南省人民代表大会に、警察官の心理問題についての意見書を提出。警察官の精神の健康を重視し、カウンセリングなどを実施することや、育成期間や新しい任務の訓練期間や昇進の際には、心理的チェックをするよう提案した。

■続く不祥事、証拠偽造で冤罪の男性が死刑に

 中国で、警察の不祥事が発生したのは今回だけでない。2003年には広東省広州市で身分証を所持していないとして拘留された男性が、警察署内で3日間にわたり暴行を受け死亡した。

 1994年には河北省で、強姦殺人容疑で男性を誤認逮捕。同男性は有罪となり死刑を執行されたが、05年に「真犯人」が逮捕されたことで、冤罪と判明した。警察は裁判にあたり、94年に逮捕した男性の日記を証拠として提出したいた。
日記は保存されておらず確認できないが、死刑になった男性の家族は、同男性に日記をつける習慣はないと証言。警察が証拠を偽造したと考える人が多い。

 その他、山西省太原市の警察官が北京の警察官とけんかをして相手を殺害した事件や、黒龍江ハルビン(哈爾浜)市で警察官6人が一般人4人と争い、1人を殺害した事件もある。05年には四川省の成都駅で警官数十人が窃盗(せっとう)グループと「猫鼠同盟」を結び、犯罪に加担していたことが発覚した。(編集担当:如月隼人)

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