タイ国内でタクシーなどに乗って走っているとエッソなどの日本でも見かけるガソリンスタンドの他に炎のロゴマークや葉っぱのロゴマークの看板を掲げているガソリンスタンドを見ることがある。

 こちらはタイの財務省が出資する、タイ国営石油(PTT)とその傘下企業のバンチャーク石油(BCP)である。
タイ国営石油はタイ株式市場において時価総額トップであり、タイでは就職希望人気ランク上位であり、有名大手企業の一つとして挙げられる。

PTT (タイ国営石油) タイ証券取引所コード PTT 

◆会社概要

 このタイ国営石油(PTT)は2001年10月、タイ石油公団が株式会社に組織転換した後に、同年12月にタイ証券取引所に上場した。タイ国内の最大のエネルギー会社として、石油・天然ガスの生産、精製、販売や子会社を通じた石油化学事業を展開している。

 タイ国内だけでは石油採掘が十分ではなく、PTTエクスプロレーション(PTTEP)を通じて外国企業との提携や共同開発でタイ近隣から中東、アフリカまでの石油探査開発も行っている。

 PTTはタイ財務省が株式の過半数を所有しているが、過去に懸念材料として、2007年の12月に民営化プロセスが違法だったとする消費者団体の裁判があった。上場廃止が危ぶまれたものの、裁判所の判決で回避されている。

 タイ国営石油(PTT)単体でもタイ証券取引所の時価総額の14%を占めている。さらに上場している子会社、関連会社を含めた場合、合計で28%まで伸び、およそ3割を占めている。(2008年9月末時点)

関連子会社などを含めた上場企業は、以下のようになる。
コード―社名―事業内容
PTTEP―PTT―エクスプロレーション―油田開発・探査企業
PTTCH―PTTケミカル―石油化学大手
TOP―タイオイル―製油事業大手
IRPC―IRPC(旧TPI)―石油化学大手
PTTAR―PTTアロマティクス―石油化学&製油事業大手
BCP―バンチャーク石油―製油事業・ガソリンスタンド経営

タイ国営石油(PTT)の事業モデルには以下のようなものがある。

1.油田・ガス田開発事業
子会社PTTEP が担当し、タイ国内、海外にある油田探査、ガス田探査などを行っている。

2.天然ガス、パイプライン事業
PTT の事業としてガスパイプライン事業だけではなく、
S&M:Supply & Marketing(天然ガスの供給とマーケティング)なども進める。


3.原油輸出入取引・小売事業
こちらでは石油の輸出入を扱う。石油のみではなく石化製品の輸出入、
原油価格の調整、ガソリンスタンドでの販売マーケティングなども含む事業。

4.精製事業
PTTの傘下企業、関連会社での扱う部門で、TOP、PTTAR、BCP、IRPCなどが扱う。

5.石油化学事業
こちらもPTT傘下企業と関連会社でPTTCHなどが扱っている。

 2008年は前半急上昇、後半より急激に下落した原油価格はタイでも大きな影響を与えた。急騰した原油価格がタイのガソリン価格にも反映され、一時はハイオクガソリンで40バーツ(日本円で120円前後)を突破する価格になった。

 そのため、業界では代替燃料開発としてエタノール混合燃料、バイオディーゼルなど次々と登場し、原油に依存しない方法を模索するとともに、消費者に向けてはタイ政府から補助金などの政策を行っていた。その後は世界経済の減速で原油価格も急落した結果、タイ国内での価格も同じく下落している。

 ただし、長期的に見てタイ国内のエネルギー消費量は右肩上がりで増加していく。タイで使用される発電所のほとんどは火力発電がその多くを占める。自動車、家電、電子部品などの産業分野で使用される石油化学製品など間接的にも、直接的にもPTTグループが関連する産業分野は非常に幅広い。

 前回のバンコク銀行(BBL)に続き、タイでの有名大手企業を取り上げてみた。
今後、世界経済が回復していき、東南アジアの経済、アジアの経済が復調してくればタイのエネルギー最大手企業、タイ国営石油の成長もさらに進む可能性が高い。(執筆者:阿部俊之 タイ経済・投資コンサルタント)

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