それは初心者だからだろう。こう思われかねませんが、そうではありません。投資経験の長い人でも、「踏み上げ」が何を意味するのが分かる人は意外にいません。信用取引をしていない人が多いからです。していても売り手と買い手の攻防戦には関心がない。こんな人も数多いのが現実です。
では、「踏み上げ」とは何か。信用取引でカラ売りをして場合、見込みが外れて株価が上がると、やむなく株を買い戻さねばなりません。それは株を買うことになるため、そのパワーによって株価はさらに上がることになります。買い手がこの原理に着眼し、カラ売りが多く、しかも売り手が損勘定になっている銘柄を狙い、さらに株を買ったらどうでしょう。株価は上がるためカラ売りをしてい投資家はさらに損が拡大するのを恐れて、株を買い戻そうとします。
それにより株価はさらに上がるため、他の売り手もそれを見て、じっとしていられなくなり、市場から逃げ出そうと株を買い戻しにかかります。それにより株価はさらに・・となるのが「踏み上げ」です。
現在の東京市場がさほど好材料があるとも思えないのに急回復中なのは、カラ売りをしていた人たちの買い戻しがあるからです。それは同時に「踏み上げ」にもなるため、主力大型株を中心に、こんなに上がるはずがないのに、と思えるほど上昇していることになります。
そこで投資作戦としては、カラ売りの多い銘柄を狙えばよいことになります。それはどこで調べればよいのか。簡単なのは日本経済新聞の水曜日に掲載される「東証信用取引銘柄別残高」を見ます。ネットで取引している場合は、証券各社が提供していますし、ヤフーやヤフーファイナンスでも提供されています。
それらのどこを見るか。買い残と売り残の増減、比率を見ます。「踏み上げ」に期待する場合は、「売り残」が「買い残」を上回っているのがもっとも好ましく、次には上回らないまでも接近している銘柄。これが合格となります。
「売り残」とはカラ売りの量を示すからです。「買い残」は信用取引で買われている株の量を示しています。「売り残」がそれを上回るか、接近し、しかも株価が上昇しているなら、カラ売りをしている投資家の多くは損勘定になっていることを意味します。
そんな状況にある投資家は、株価がこれ以上上がるとさらに損失が拡大する、と恐れているため、株価が少しでも上がると落ち着かなくなり、いつでも買い戻して逃げ出せる準備をしている。こう考えてよいのです。狙うべきはそんな投資家が多そうな銘柄。こうなります。
現在どんな銘柄があるか。まずはキャノン があります。直近データでは同社の「売り残」は3882千株。「買い残」は1483千株です。明らかに「売り残」が「買い残」を圧倒的に上回っています。
最近株価がよく上がるソニー 株はどうか。「売り残」5482千株。「買い残」3653千株です。これまた「売り残」が「買い残」を大きく上回っています。最近の上昇要因にこのことが関わっていると考えてよさそうです。
他にもありますのでぜひ調べてみて欲しいものですが、「踏み上げ」狙い。これは今後も有効ながら、それでも株式投資に絶対はありません。「売り残」が「買い残」を上回るか、接近していれば必ず株価が上がるとは限りません。上がる確率が非常に高いということであり、この点誤解のないようお願いします。(執筆者:北浜流一郎 株式アドバイザー)
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