しかしこれは独立運動でも民族蜂起でもない。携帯電話をかけながら、手をふりながら、談笑しながら、ペットボトルで水を飲みながらぞろぞろ老若男女がただ行進しているだけだ。デモの目的はあくまで広東省における事件の公正な裁きだ。しかしやがてそのデモ行進の映像が激しくぶれたかと思うと、武装した警察がばらばら駆けてくる姿が写される。悲鳴や叫び声が聞こえて、カメラは横転したかのようにあらぬ方を映して映像は終わった。それがその後、バスやタクシー260台以上が焼き討ちにされ、新華社発表で少なくとも156人が死亡、1000人以上の負傷者をだした「大暴動」となるのだ。
中国当局は事件発生から約9時間後の6日未明に新華社を通じて一報を報じ、外国メディアの現場取材も歓迎し、現地でプレスセンターを開きプレスツアーで封鎖中の発生現場を視察させ、各メディアに「暴動の映像」DVDも提供するなど異例の便宜を図った。
しかし、それら当局提供の情報では、あの平和的デモがなぜ大暴動に発展したのかそのプロセスがわからない。中国当局は、事件の首謀者をノーベル平和賞にノミネートされたこともある「ウイグルの母」ことラビア・カーディルさんが総裁を務める「世界ウイグル会議」と決めつけた。
だが、ユーチューブなどにあふれる当局発でない無数の映像情報をみると、さまざまな疑問が起きてくる。たとえば、これは非武装の平和デモを装甲車で踏むつぶした1989年の天安門事件と同じ種のものではないか、とか。
世界ウイグル会議側は「平和デモに1万人の軍を派遣し武力鎮圧し、400人以上のウイグル族を殺害した」と中国政府を激しく非難している。
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