生まれつき顔面中央が落ちくぼむなどで重い障害を持っていた王娜さん(22歳)の4年にわたる手術が、このほど完了した。王さんは17日、養母とともに取材に応え、喜びを語った。
中国新聞社など、中国の各メディアが報じた。

 王さんを育てたのは、陜西省渭南市合陽県の農村部に住む王友仁さん・李景雲さん夫婦。王さんは生後すぐに、親に捨てられた子だった。障害を持ち、女児であることが原因だったと思われる。王娜さんを拾った王友仁さんらは、とにかく育てることにした。しかし、王娜さんは乳が正常に飲めず、長い時間をかけて一滴、一滴与えたという。

 離乳期になっても、王娜さんは咀嚼(そしゃく)できなかった。そのため、流動食を与えるか、王友仁さん・李景雲さんがかみ砕いたものを食べさせるしかなかった。王娜さんは小学校に入っても周囲の子にいじめられ、8歳のときに、通学をやめてしまった。李景雲さんによると、とにかく自分の容貌のことで苦しみ、鏡を見ることをしなかったという。

 王友仁さん・李景雲さんにはもともとふたりの子がいた。上の子は障害児だった。
家族に王娜さんが加わったことで、苦しかった家計はさらに圧迫された。夫婦は「障害を持つ子を、放棄するわけにいかない」として、健常だった次男を他家に養子に出すことにした。夫婦にとってはわが子を手放す苦渋の決断だったが、次男は傷つき家出してしまった。2009年になり、やっと連絡が取れるようになったという。

 2006年4月、王友仁さんは王娜さんを連れ、西安市内の解放軍第四軍医大学病院を訪れ、改善の可能性がないか相談した。病院が診察したところ、王娜さんには先天的に左右の上顎骨(じょうがくこつ)が欠落していることが分かった。顔面頭蓋の中央を占める骨がないため、眼窩・鼻腔・骨口蓋がすべて影響を受けていた。世界的にも珍しいケースという。

 医師らは検討を重ねた結果、3段階に分けて手術を繰り返せば、修復は可能と判断。しかし莫大な費用がかかる。病院は、王さんらの家の経済状態も考慮し、無料で治療することに決定した。

 手術と手術の間には期間を置かねばならないので、王娜さんの治療には、計4年間がかかった。
最後に行ったのは、口腔科医師団が担当した義歯の手術。すべての手術が終わり取材に応じた王娜さんは、真新しい白い歯を見せて笑った。鏡を見ることができるようになっただけでなく、ビスケットを食べられたことが、うれしかったという。王娜さんにとっては、生まれて初めて、ものをかんで食べる経験だった。

 養母の李景雲さんは「私たちは、美しい娘を持つことになったのです」と語った。笑顔だったが、両目からは涙が流れ落ちた。

 上側写真は、手術前の王娜さん(左)と李景雲さん(右)。王娜さんは発声も困難だったため、「みなさんありがとう」と書いた紙を持っている。写真下は手術後の王さんと李さん。5月17日に撮影。(編集担当:如月隼人)

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