新華社は31日、「中国戦場で活躍した『日本人の八路』を記念する」と題した論説を発表した。日中戦争時に共産党軍に参加した日本人の功績を紹介し、「中国の官民において、中国人民の抗日戦争史の中で、欠かすことのできない一部分であると、ますます重視されるようになっている」と論じた。
9月2日の戦勝記念日を前に、反日感情の高まりを抑制する意図の可能性がある。

 日本では8月15日が「終戦記念日」と呼ばれるが、国際的にはむしろ、東京湾に停泊する米戦艦ミズーリで大日本帝国全権代表が降伏文書に署名した9月2日を「戦勝記念日」として重視している。中国でも同日前後には「抗日戦争」の話題が多くなるが、“反日感情”の盛り上がりは現政権の方針にそぐわないことになる。

 新華社は、(共産党軍である)八路軍に初めて日本人が加わったのは1939年1月2日で、捕虜になった日本兵3人だったと説明。「私が八路軍に参加したのは、教育を通じて日本軍の野蛮な行為を自ら目にしただけでなく、捕虜になって以来、八路軍が人道主義にもとづき心をこめて扱い、八路軍の本質が他の軍隊とは違うということを、感じざるをえなかったからだ」などの言葉も紹介した。

 その後、革命運動家の日本人も八路軍に加わるようになり、日本人による反戦連盟も結成された。彼らは、日本軍将兵に対する反戦宣伝や、生産活動、軍事技術の伝授、衛生、教育で貢献したという。論説は、当時、反戦連盟に加わった日本人の「私は祖国である日本を愛している。中国も愛している。平和も愛している。反戦兵士は売国奴と言えるのか?」との言葉も紹介した。

 論説は、温家宝首相が2010年5月に訪日した際、戦争時に反戦連盟などで中国共産党を支援した日本人が主催したパーティーに出席したことにも触れ、第11期全国政治協商会議民族宗教委員会の趙金鐸副主任の「われわれは今もなお、中国において反戦活動をした日本人の人間性や文明的な覚醒、人類の正義や平和を求めるたゆまぬ闘争精神を必要としている」との言葉を引用して、文章を締めくくった。

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◆解説◆
 論説にある内容は、すでに中国では紹介されてきたもので、新発表ではない。戦争中に中国共産党に協力した日本人の話題を繰り返すことは、中国政府・共産党が1972年の国交正常化前から繰り返してきた「中国への侵略戦争は、日本の一部の軍国主義者が発動したもの。日本の多くの庶民は生命や財産を失うなど、被害者だった。したがって、日本人全体を恨むべきでない」との主張を、改めて示す効果があると考えられる。(編集担当:如月隼人)

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