中国の衛生分野の専門家はこのほど、1990年代に河南省で発生したエイズウィルス(HIV)感染拡大について、共産党指導者の失政に責任があると名指しで糾弾した書簡を公表した。ドイチェベレ(中国語版)と中国の複数語のメディアが伝えた。


 胡錦涛国家主席に宛てたこの書簡を公表したのは、中国健康教育研究所所長、中国健康教育協会会長などを務めた経験を持つ陳秉中氏。河南省では、1990年代に地方政府によって血液売買が奨励され、多くの貧しい農民らが血液を血液バンクに売り、不衛生な環境での献血によってHIVが急速に拡大したという経緯がある。

 1992-1998年に河南省トップの省党委書記を務めた李長春氏と、1998ー2003年に河南省長だった李克強氏は、事件の責任を問われることなく、現在は中国共産党中央政治局常務委員という要職にある。

 陳秉中氏は書簡の中で、李長春氏が河南省党委書記を務めていた1990年代前半に、省政府がいわゆる“血液経済”を推進した結果、10万人以上の農民がHIVに感染し、1万人以上が発症して死亡したが、感染者の救済は不十分で、抗議を行った活動家は弾圧を受けたと指摘。さらに、「“毒ミルク事件”などよりも深刻な事態であるにもかかわらず、当局が真実を隠蔽し続けた結果、エイズ感染が爆発的に拡大し、全国へ蔓延した」として、李長春と李克強の両氏の責任を問い、厳正かつ公正な処罰を行うよう強く求めている。(編集担当:中岡秀雄)
 
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