江西省九江市九江県警察はこのほど、17年前の殺人事件の容疑者の男1人の身柄を2010年11月に浙江省内で確保したことを明らかにした。男は仏教寺院の住職になっていた。
高僧として国外逃亡の機会が何度もあったが実行しなかった。「罪は償(つぐな)わねばならないと分かっていた」、「(仏教が説く)因果応報ということです」などと話しているという。中国新聞社が報じた。

 男は1973年生まれ。中学(初級中学)卒業後に自動車修理の仕事をしていたが、1994年になり知人と「海南に行ってデカい金もうけをしよう」と相談した。資金稼ぎのために計6人で民家に押し入り夫婦2人を殺害、幼児1人に重傷を負わせたとされる。5人はすべて逮捕されたが、男1人が逃走した。

 男は安徽省内で出家し、95年に福建省内の仏教学院に入学。3年後に卒業し、修行の旅で全国を回った。

 仏法の修行を進めると同時に、自分には知識がなかったと悩み、浙江大学で社会人教育のコースに進み学士号や2級の土木建築技師も取得。書道も学び、作品コンクールで入賞したこともあるという。浙江省内の寺に勤めるようになってからは修行の成果が認められ、僧侶としての位を1年に1階級引きあげられるなど異例の“出世”をし、副住職になった。


 2008年には新たに寺を作ることになり、責任者になった。2010年には同寺の住職に任じられ、2011年には他の寺の監督責任者にもなった。現地で政府に対する顧問機関である政治協商会議の委員に何度も推薦されたが、仏教に専念したいとして固辞し続けた。

 男は実家には連絡せず、送金もしていなかった。しかし、専用の乗用車を運転し、携帯電話も所持するなど、物質的には恵まれた生活をしていた。

 説法をするため、欧州やアジア各地に何度も足を運んでいた。中国では重大事件の容疑者が国外逃亡をすることが多いが、男は身柄拘束後、「機会を利用するつもりはなかった」などと述べた。

 未解決事件の捜査を進めていた九江県警察は、浙江省内にいる高僧が「17年前の殺人事件と関係しているらしい」との情報を得て、捜査を開始。聞き込み捜査や戸籍の調査を行い容疑者と断定した。2010年12月28日夜に「消防の検査」と称して男がいる寺院の門を開けさせて踏み込み、身柄を拘束した。

 男は警察官に「何をしに来たのか」と尋ねたが、事情が分かるとそのままおとなしく身柄を拘束された。

 男は取り調べに対して、自分の犯行を認め「すべて自分がまいた種です」と述べた。
拘置所内では毎日座禅を組み、仏教の修行を続けている。他の収監者にも「因果応報ということです。罪はいつか償わねばならないということです」などと仏教の道理を説いている。周囲の収監者は精神的に感化されはじめたという。(編集担当:如月隼人)
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