新疆トルファン学研究院は1日、トルファン勝金店の古墓群で見つかった2200-2060年前の麦わら3100株を調べたところ、1株当たり平均で10粒の種子を収穫していたことが分かった。中国新聞社が報じた。
当時のヨーロッパにおける小麦は、まいた種1粒当たりれ2、3粒しか収穫できなかった。トルファンで見つかった小麦は、前漢(紀元前206-紀元8年)時代の中国や周辺地帯における高度な農業技術の「謎(なぞ)」を解明する手がかりになる可能性がある。

 小麦は人類が最も早く栽培を始めた穀物とされるが、収穫率は低い状態が長く続けた。古代ローマでも種1つを植えて、収穫できるのは2、3粒程度だった。中世ヨーロッパもほとんど同様だった。

 収穫率が目に見えて向上するのは10世紀以降で、ヨーロッパ地域で「まいた種の10倍の収穫」が見込めるようになったのは19世紀になってから。現在は多くの場合、20倍程度かそれ以上の収穫が望めるようになった。

 中国では歴史的に、ヨーロッパ地域と比べて小麦の収穫率が驚異的な高さだったとされる。当時のトルファンは車師国と呼ばれるオアシス都市国家で、漢と抗争を繰り返していたが、収穫率10倍という小麦の発見は、当時の中国と周辺地域における農業技術の高さを示す証拠のひとつと言える。

 小麦はトルファンなどシルクロードを経由して、4000年ほど前に中国で栽培が始まったとされるが、当時のシルクロード地帯における農業の実態には不明な点も多い。発見された小麦は、現地における農業の歴史と、中国などへの伝播の状況を解明する大きな手がかりになる可能性がある。

 発見された麦わらは、新疆トルファン学研究院と中国科学院が共同で研究する。
2014年内にも、詳しい報告書を発表する考えだ。

**********

◆解説◆

 現代の新疆ウイグル自治区は歴史的に、トルコ系、ペルシャ系、モンゴル系など、さまざまな民族が興亡を繰り返した土地だった。各民族の文化も、オアシスなどでの定住を基盤とする場合、遊牧にともなう移動を主体とする場合などの違いがある。

 現在は、漢族を除けば人口が多いのはテュルク(トルコ)系民族だ。ウイグル族もトルコ系民族で、主要な産業はオアシス農業と交易だった。オアシスごとに分散して歴史を積み重ねて来たので、同じウイグル人でも出身地により気質などがかなり違うとされる。農耕を盛んに行ったので、料理は穀物や野菜、スパイス、肉など豊富な食材を使う。

 同じトルコ系民族でもカザフ族は遊牧の民で、食べ物の多くは乳製品や肉製品で、発酵の技術も発達しているが、食材の種類はそれほど豊富とはいえない。遊牧系民族の場合、口承文芸が特に発達している場合が多いなどの特徴がある。

 トルファンは同地区の代表的なオアシスのひとつ。土地の大部分が海面下という、内陸部の大きな「くぼみ状」という地形だ。トルファン市郊外にあるアイディン湖の水面は海抜がマイナス154メートルで、中国で「最も低い部分」として有名。
(編集担当:如月隼人)


【関連記事】
2000年前の墓を調査、「失われた医学書」を発見=四川
諸葛孔明も見ていた?…四川・成都で8.5トン巨大石獣が出土
2000年前の牛肉料理…青銅容器内に山盛り状態=陜西
工事現場で大量の古銭…人々集まりたちまち「それっ」=新疆
明代の沈没商船3隻を発見、陶器破片なども…天津・北運河
編集部おすすめ