中国では旧暦8月15日を前に、親しい人や世話になった人に月餅を贈る習慣が「事実上の賄賂授受」になる場合が多いとされている。当局は規制と監視を強めているが、今年(2014年)には月餅券が出回っている。
券であれば「換金」という手段が容易に成立する。月餅券を利用した贈収賄が発生する可能性があるという。中国新聞社が報じた。

 中秋の名月。旧暦8月15日の宵だ。中国では家族そろって月餅を食べる習慣がある。丸い月を「円満」のシンボルとして、家族の幸せを願っての行事だ。やがて、月餅を親しい人、世話になった人に贈る習慣が発生した。やはり「あなたのご一家の幸せを祈ります」という麗しい気持ちの表れだった。ところが、今ではどうだ。高価な月餅を贈って、相手の家族の幸せではなく「自分の幸せ」を願うケースが増えた。

 非常識な「おまけつき」月餅も登場。
「高級酒つき月餅」に続き、「家電つき月餅」や「自動車つき」、はては「マンションつき」の月餅も登場した。

 中国当局は禁止や規制を続けている。非常識な「おまけつき月餅」は姿を消した。月餅をネタにした「贈収賄」を、どの程度撲滅できたかには疑問が残る。今年は「月餅券」の登場も確認された。換金が容易と“重宝”される可能性も高いという。

 月餅の価格は、事実上のプレミアムがあり、他の菓子類よりはかなり高価だ。多くの商店では1個100-200元(約1688-3375円)の商品が主流。高価な物は400元前後だ。

 そして今年は「月餅券」も発売されているという。月餅商品との引換券だ。1例として「価格1299元(約2万1920円)。
月餅13個入りセットと交換」という券が発売された。

 そしてインターネットでは、「月餅券を現金で回収」とする掲示が登場した。菓子類販売の有名ブランド企業による掲示もある。「月餅券」を販売価格より安い価格で「回収」すれば、月餅を製造・販売しなくても利ざやを稼げる。

 利用者にとれば、月餅券をを頂戴することは「心を込めて月餅を選んでもらい、贈ってもらう」こととはもはや何の関係もなく、現金をもらうことと同じになる。

 月餅関連の業者側は「月餅券のよさ」として、「ご利用になる方が、ご自分のほしい商品をお選びになれる選択肢が増えます」と説明する。しかし一方では「私どものお客様は、政府機関や国有企業関係が極めて多いです。もちろん、秘密はお守りいたします」と、“きわどい”言い方をする業者もいたという。(編集担当:如月隼人)

**********

◆解説◆
 中国には、「事実上の賄賂授受の仲介をする美術商がいた」との言い伝えもある。清朝時代、高官への賄賂が厳しく取り締まられた時期の話だ。書画など美術品について、「愛好者間でのやりとりは、高尚な趣味を反映するものであり、規制の対象にはしない」ということになった。

 すると「身元のよほどはっきりした人でないと、商品を売らない」ということに営業方針の美術商が出現。
美術品を購入した人は、高官への「贈り物」とする。贈られた高官はしばらくして、美術品を販売した業者に買い取らせる。高官は厳禁を得る。美術商は“手数料”を得る。

 身元のはっきりした人にしか売らなかったのは「もし、本当に美術愛好家だった場合、手放さないことになる。商品の“循環の輪”が途切れると、再び仕入ねばならないから」だったという。

 高尚な趣味、麗しい精神性があったはずなのに、「賄賂授受の修羅場」がたちどころに発生してしまう構図は、昔も今も変わらないということになる。(編集担当:如月隼人)


【関連記事】
妻は資金を洗いつつ、夫は賄賂を稼ぎつつ・・・中国中央銀が報告
買収に1000万円も使ったのに落選!・・・その場で気絶する候補者、中国「腐敗選挙」の実態明らかに
中国軍、新兵採用絡みの「腐敗現象」・・・当局が神経とがらせる
周永康処分に中国共産党内部に「温度差」か・・・積極評価は18省
卒業証書でっち上げ、偽大学60カ所を「今年第1回分」として発表=中国
編集部おすすめ