「死せる孔明、生ける地下鉄を止める」――とでも言いたくなるような事故が香港で発生した。中国では伝統行事の晩に、「孔明灯」と呼ばれる。
薄い紙や竹ひごで作り、内部で小さな火を灯す1種の熱気球だ。香港で9日未明、降下してきた「孔明灯」が地下鉄の大埔墟駅(地上駅)で電車のパンタグラフに引っかかった。ショートしてパンタグラフで爆発発生。電車はしばらく運転できなくなった。同日、香港地下鉄では故障が相次ぎ、列車の運転が計3回できなくなった。中国新聞社が報じた。


 「孔明灯」は薄い紙や竹ひごなどで作る。コップを伏せたような形状で、下に開いた口のやや内側で火を灯す構造だ。一種の「無人熱気球」であり、熱源を持つのでかなり長時間にわたり空をただようこともある。三国志の諸葛亮・孔明が戦争時の通信手段として発明したとの伝説から「孔明灯」と呼ばれる。他に、「天灯」との呼称もある。

 最も有名なのは旧暦1月15日の「元宵」の晩の「孔明灯」だが、その他の伝統祝日の晩にも「孔明灯」を放すことがある。
香港では8日夜、「中秋節」を祝って一部公園などで多くの人が孔明灯を放った。停車中の地下鉄車両のパンタグラフに落ちたのは、そのうちの1つと見られている。

 いきなり「バーン」といってはじけ飛んだ。閃光が走った。乗客は驚いた。上から大きな音が鳴り響いた。
窓の外の火花が飛び散るのが見えた。夜の闇が照らされた。乗客約100人はあわてて車外に逃げた。ショートのため、大埔墟-粉嶺駅間で電車の運転ができなくなった。

 午前8時半ごろには、香港地下鉄・観塘線の太子駅で停車中の電車のパンタグラフが砕け散った。高電圧がかかっていたパンタグラフのすり板(集電部分)が損傷し、火花をまき散らしながら爆発したとみられている。
車内にいた約100人が、あわてて逃げた。

 香港地下鉄では同日朝、別の電車も故障で運転ができなくなった。同じくパンタグラフの故障で、大音響で火花が飛び散るなどで、車内の100人が外に逃げた。

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◆解説◆
 「孔明灯」は「元宵」など伝統行事の晩、地域ごとに特定の場所に多くの人が集まって放すことが多い。夜空を無数の「孔明灯」が昇って行く光景は幻想的で、かつ壮大だ。

 しかし「火を灯して空に放す」だけに、燃え尽きずに降下して火災などの原因になる「孔明灯による空襲」の被害も後を絶たない。
そのため地方ごとに禁止の動きも出ている。

 それとは別に鉄道施設や、航空路の近くでは「孔明灯」が禁止されているが、それでも放す人がいる。(編集担当:如月隼人)


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