中国共産党中央紀律委員会監察部はこのほど、大手通信会社の中国聯合通信(中国聯通、チャイナ・ユニコム)高級幹部に多くの不正があると発表した。中国聯通は、江沢民元国家主席の息子である江綿恒氏が深くかかわってきた企業として知られている。
強大な権勢を誇った江元主席の「ファミリー」に腐敗摘発が迫ったことで、共産党上層部で「権力闘争」が現在も進行中である可能性が高まった。

 中国聯通については1月初旬までに、幹部職員2人を調査した結果、「腐敗にかかわっていたことが判明」との発表があった。

 同発表は、中国共産党中央政治局の前常務委員である周永康容疑者を摘発した際の「手法」と同様であることでも注目を集めた。腐敗問題で“大物”を追い詰めようとすれば、「擁護」する勢力が出てくると考えねばならない。そのため、最初は“小物”をありとあらゆる方法で調べ上げ、摘発を阻止したい勢力も問題となった“大物”について「不正がここまで露見してしまえば、擁護できない」という状況にする方法だ。

 中国聯通の幹部2人が起訴されることになり、江綿恒氏についても、「このままでは終わらない」との見方が強まった。

 江綿恒氏は科学および技術の研究組織である中国科学院上海分院の院長も務めていたが、1月6日に退任することになった。退任は自主的なものではなく、理由は「年齢のため」とされた。江綿恒氏は1951年4月1日生まれで現在は63歳だ。年齢を退任の理由とするのは「絶対に不自然」とまでは言えないが、中国聯通を巡る問題が表面化した時期だけに、「なぜ、この時期に退任させたのか」との疑問が残る。

 江綿恒氏の父親である江沢民元主席は胡錦濤前主席に地位を譲ったあとも巨大な権力を行使したとされる。江元主席と胡前主席は政治手法でも考え方でも大きな違いがあった。
さらに、「ポスト江沢民」に胡前主席を指定したのはトウ小平氏であり、人事が「頭越し」であったために感情的なしこりもあったとの見方が強い。

 しかし習近平政権が発足してから、中央軍事委員会建物にあったオフィスが撤去されるなど、江主席の権限縮小の動きも進行している。また、1926年8月17日生まれの江沢民元主席はすでに88歳であり、年齢に起因する行動力の低下もあると考えることが自然だ。

 中国では、親などの権力を利用して高い地位を得た政治家の子が「太子党」と呼ばれる。習近平現主席も「太子党」のひとりだが、「太子党」は政治家よりも、むしろ財界に多い。江綿恒氏はその1人だ。他の代表例としては李鵬元首相の娘で、中国電力国際発展有限公司の会長を務める李小琳氏などがいる。

 「政界の長老」に振り回された胡錦濤政権を見ているだけに、習近平主席は、「引退した者の政治的影響力はできるだけ削減したい」との考えを持つと思われる。習近平主席の「1つ先輩」に当たる胡錦濤前主席は共産党総書記を退任すると同時に党中央軍事委員会主席も退任した。本人の「固い意志」によるものとさる。総書記退任から2年近くも軍事委員会主任にとどまった江元主席とは対照的な身の処し方だった。

 温家宝前首相についても、首相退任の直前に執務室を整理する写真が発表され、話題になった。
前政権担当者が「政治的影響力の行使は控える」姿勢を見せているとすれば、現政権にとって問題になるのはもう1つさかのぼって江沢民元主席の世代ということになる。

 仮に、「江綿恒が不正を行った明らかな証拠がそろった」ことになれば、直接の処罰はできなくとも、現政権にとっては、江沢民元主席やその周辺の影響力を排斥する「大きな武器」を手に入れたことになる。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:123RF)


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