PM2.5の発生源はさまざまだ。発電や熱利用のための石炭燃焼が問題にされることが多いが、地表面からの「土ほこり」も影響していると考えられている。
そのため多くの都市で、撒水車を出動させ、道路に水を撒き続けている。河南省の省都、鄭州市では1-6月の2015年前半の180日強のうち、「空気の質が良好」と判断された日は、わずか39日だった。全国74カ所の重点都市中、「下から数えて3位」だったという。
そのため市政府は、PM2.5対策に力を入れることにした。方策の1つが「水撒き」だ。道路清掃の回数を増やした上に、主要道路では「2時間に1回」の水撒きをしている。甘粛省蘭州市、山西省太原市も水撒きを頻繁に実施。鄭州市にある撒水車のメーカー関係者によると、河南省、山西省、内モンゴル自治区、甘粛省、河北省など多くの地方から注文が殺到し、生産が間に合わない状況という。
中国北部は水資源の確保に苦労する都市が多い。ダムによる確保ではとうていまかなえず、水道用に地下水を大量に使う都市も珍しくない。北京市の場合、2010年ごろの状況で、水道水の年間量は30億キロリットルあまりで、うち地下水は20億キロリットルあまりという。地下水がいずれ底を打つことは明らかで、「北京の地下で砂漠化が進行」などと報じられることもある。
鄭州市も水資源に乏しく、1人当たりの水資源量は全国平均の10分の1程度とされる。そのため、大量の撒水について批判的な意見も相次いでいる。「もとから水不足なのに、水道水を大量に用いている」などの批判が発生した。
さらに「雨の日にも水を撒いていた」という指摘もある。中国だけの話ではないが、いかにも「役所的」な物事の進め方で、「杓子定規な規則を設定し、現場も規則をそのまま適用した」ということらしい。
北京晨報によると、専門家からも、「水撒きは地表から高さ5メートル以上の大気には無効」、「大気中の微粒子のうち、土ほこりによるものは全体の10%-20%」、「効果がないわけではないが、費用対高価を考えるならば、科学的にもっと有効な方法を探る努力をつづけるべきだ」などと、水撒きを全否定はしないが、とりたてて有効ではないとの主張が多いという。
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◆解説◆
水が豊富な日本ではやや想像しにくいが、淡水の確保は今後、国際的にもさらに大きな問題になる可能性がある。中国で水不足が深刻なのは北部だ。
水資源の確保と利用に熱心な中国は、自国内を流れるメコン川上流部分に、多くのダムを建設してきた。その結果、下流のカンボジアやラオス、ベトナムでメコン川流量の変化などで船の航行が困難になったり漁獲量が大幅減になったとして中国を非難する声が出た。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:CNSPHOTO。大気汚染対策としての道路での撒水作業。山東省済南市で撮影)
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