中国で、大学教授など大学関係者が、兼任していた企業の社外取締役を辞任するケースが相次いでいる。中国国内上場企業だけで、11月27日から12月21人までに274人が辞任したという。
中国メディアの経済網が報じた。

 中国における社外取締役は、国有企業系などで大株主の株式保有率が多いことに対応するために、儲けられてきたという。中小の投資家の利益や公益性を配慮するためとの理由で、中国中央政府の証券監視管理委員会は企業における大株主の保有株式比率が多いほど、役員会における社外取締役の比率を増やすよう求めてきた。

 当初は、共産党関係者や地方政府高級幹部の社外取締役就任が多かったが、中国共産党は2013年10月、党及び政府関係者の社外取締役就任について、資格や報酬などを厳しく規制する通達を出した。すると「党幹部・政府幹部系」の社外取締役が次々に辞任した。

 中国共産党の「通達」は腐敗撲滅運動の一環と考えてよい。政治的な権力者と財界の癒着構造を改善しようとの考えによるものだ。

 党や政府幹部が企業から離れると、企業側が社外取締役の欠員を充填するために、大学教授などを迎えるケースが増えた。2015年12月2日時点で、中国国内A株上場企業で、社外取締役は合計で9000人近く存在し、うち約3000人が大学の現職教授または元教授だったという。

 企業としては、社外取締役に大学教授が名を連ねれば、イメージ上もよいという事情があった。大学教授側も、実際にはビジネス界で活躍している者が多かった。特に専攻が経済関連などの場合、ビジネスを行っている者が多いという。


 ただしこのところ、大学教授が社外取締役兼任で受け取る報酬の大きさが問題になってきた。規則に違反して数社の取締役を兼任し、日本円で2000万円相当の報酬を得る例もあるとされる。さらに、「報酬隠し」で処罰を受けるケースも発覚した。

 中国共産党は2015年になり、大学関係者が手を染めた腐敗の摘発にも力を入れるようになった。大学教授らの社外取締役兼任も「腐敗の温床」との見方を固めてきた。11月初旬には中央政府・教育部が、大学幹部の兼職状況を検査するよう通知。その直後から、教授の社外取締役辞任が急増したという。

 中国では社外取締役を、「独立董事」と呼ぶ。「董事」とは、企業の役員や団体組織の理事を指す。南海大学で経済学を専門とする劉志彪教授は、社外取締役の存在そのものは重要として「上場企業が自ら『独立董事』を選ぶのではなく、第三者機関が『独立董事』を選抜することで、『独立董事の独立性』を保証する制度が考えられる」と提案した。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:123RF)


【関連記事】
腐敗幹部などの取り調べ施設を公開  壁一面に「自殺防止用」クッション
中国軍幹部、腐敗で47人が失脚 うち5人は中将以上
「大物腐敗犯」の死刑減刑  殺人事件の薄谷開来受刑者、鉄道汚職の劉志軍の受刑者=中国
中国の公務員が共産党に反逆 会議中に「ルールなぞクソくらえ」、「どいつもこいつも腐敗している」と気勢
日本ではそれを「目××、鼻××を笑う」と言う・・・中国メディアが米政界の腐敗を報道
編集部おすすめ