中国メディアの中国新聞社は22日、「学びは海のごとく限りなしと常に言われるが、日本では96歳の高齢者が学ぶことを大変に好み、11年をかけて京都造形芸術大学を陶芸課程を卒業した」と報じた。環球網、捜狐、網易、騰訊新聞、大洋網、光華日報などさまざまなサイトも同話題を紹介した。


 晴れて「大学卒業生・学士」となったのは高松市在住の平田繁實(しげみ)さん(96歳)。19日の卒業式には、満面の笑みを浮かべて臨んだという。2005年にに5歳で京都造形芸術大の通信教育部陶芸コースに入学し、自宅でリポートを書いたり、京都の大学キャンパスまで通って陶芸作家や研究員が大学で指導を受けるなどで、11年かけて卒業した。

 中国新聞社は「自らを奮励:日本の96歳の老翁が、世界で最年長の大学卒業生になる」の見出しで、その他のメディアも同様の文言で伝えた。

 中国人と言えば「金儲けに血眼」のイメージが持たれることが多いが、「学習すること」を重視する気質も強い。そのため多くの中国メディアが注目したと考えられる。「学習重視」には、古くからの儒教の伝統が根強いと同時に、中華人民共和国が成立してからも、現在から見れが方向性に問題はあったとはいえ「学習」そのものに大きな価値が認められてきた背景がある。

 さらに中国人の間では、高齢者を尊敬する気持ちが強い。高齢者が「幸福」だったり「成功した」との情報は「よい話」として、人々は喜んで受け入れる。記事は平田さんの大学卒業を、素直に評価した。

 中国新聞社など中国メディアは、平田さんについて「広島に生まれ、第二次世界大戦時には海軍に従軍」と紹介。中国メディアは日本人について、「従軍経験がある」だけで否定的に扱うことがあるが、平田さんについては事実として紹介するにとどめた。
さらに、「現在は5人の孫と4人のひ孫がいる」などと、平田さんが充実した人生を歩んだことを強調した。

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◆解説◆
 中国人の「学習重視」については、興味深い逸話がある。第二次世界大戦後にソ連は国際的な勢力拡大のため、アジア・アフリカ諸国にトラクターなどの農業機械を提供した。たいていの国の場合には故障などで使えなくなると、ソ連に対して改めて追加の提供を求めた。

 中国人は当初から、入手した機械のうち一定数を分解して徹底的に研究し、自らも作れるようにしたという。今から見れば知的財産権を無視したコピーということになるが、中国人の間では「他者にできることなら、自らも絶対にできる」との自信が極めて強いことを示す逸話だ。この自信が「学習重視」の一因と理解できる。

 もちろん、現在においても中国人が、さまざまなな分野での「世界最先進」と自国を比べれば、歴然とした差があるのは明らかだ。中国人は米国や日本にたいしてしばしば、強烈な敵愾心を示すが、「できるはず」と「できていない」のギャップに苛まれる心情が、中国人の先進国に対する「愛憎が相互に出現する」反応の背景にあると言ってよい。

 なお、「外国からもたらされた機械類を徹底的に研究して自らのものづくりに生かす」ことは日本人も「戦国時代の鉄砲づくり」、「明治から戦後しばらくの間の工業製品づくり」などで、徹底して行っていた。(編集担当:如月隼人)(写真は中国新聞社の22日付報道の画面キャプチャー)


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