湖北省メディアの〓楚網はこのほど、「高速道路でトラックの水タンクが爆発、ソウギョ500kgを奪い去られて泣く漁民」と題する記事を発表した。(〓は「刑」に草かんむり)

 日本でも「棚からぼたもち」とは言う。
しかし、高速道路上で「トラックから魚」という事態に遭遇しても、通りかかった車が次々に急停車して、ドライバーらが「いただこう、それっ!」と持ち去る現象が発生することは、あまり考えられないのではないか。

 日本などとは違い、トラックなどが事故を起こした場合、たいていの場合に人々が集まって持ち去ってしまうことが多いのが中国だ。湖北省襄陽市市内の高速道路で24日午前11時40分ごろ、警察車両でパトロールしていた警察官が、路上に大量の魚が落ちているのを発見した。

 落ちていたのは体長30-50センチメートルの、コイ科のソウギョという魚だった。周辺には、多くの車が急停車していた。人が下りてきて、ソウギョを拾い集めては自分の車の中に持ち帰る。高速道路の外側の地面にも魚が落ちている。もちろん拾いに行く。くわえたばこだ。魚を抱えて意気揚々と戻ってくる。

 そのそばで、年配の男性が泣いていた。警察官は事情を尋ねた。
男性は、一家でソウギョを養殖していると説明した。襄陽市内で売ろうと、トラックで運んできた。荷台にタンクを据え付けて、生簀とした。ところが走行中にタンクが破裂した。気が付いてすぐに停車したが、魚の大部分は落ちて路上に散乱していた。

 男性の息子はすぐさま降りて、魚を道路外の草むらに移し始めた。後続車が来ると、魚が踏みつぶされると思ったからだ。スリップなどの危険が発生するかもしれない。

 踏みつぶされる魚は多くなかった。魚が落ちている場所に差しかかった後続車は次々に停車した。中から人が出てきた。すぐに人だかりができた。
魚を運んできた2人は声をからして「やめてください」と叫んだが、何の効果もなかった。父親の方は泣けてきてしまった。年配の男性が泣く姿を見ても、人々は魚を持ち去り続けた。

 中国では路上に車の積み荷が散乱し、集まった人々が一斉に持ち去りはじめた場合、駆けつけた警察官も制止するのは困難だ。「多勢に無勢」で阻止できない場合が多い。ソウギョの持ち去りに直面した警察官は人々を制止しようとせず、周囲に停車している自動車1台1台の写真を急いで撮影した。まず「略奪行為」の証拠として応分の弁償をさせ、魚を落としてしまった2人の損失をできるだけ減らすためだ。

 警察はさらに、魚を持ち去った者に“お灸”を据える意味もあり、「緊急時でないのに車道に車を停めた」、「停車時にハザードの標識を立てなかった」などの理由で罰金と違反行為に対する点数を科すという。罰金は200-400元(約3470-6950円)になるとみられる。

 トラック荷台のタンクが破裂した理由については明らかでない。泣いていた男性は「あんなにスピードを出し過ぎたからだと思います」と説明した。警察官は、スピード違反の疑いについては不問にしたようだ。
(編集担当:如月隼人)(写真はケイ楚網の25日付報道の画面キャプチャー)


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