日本では、主食としての米(コメ)の消費量が減退する「コメ離れ」がいわれているが、中国では日本米のような「粳米」(米粒が比較的丸いジャポニカ種)の消費が年々拡大している。すでに、中国は、米の生産量と消費量で世界最大国となっている。
この8月16日には、大連商品交易所で「粳米」の先物取引が開始されるが、それを機にコメの流通市場が一段と整備され、コメの生産・消費の拡大に弾みがつくと期待されている。

 中国では、「粳米」(ジャポニカ米)よりも「インディカ米」(長粒種、日本ではタイ米とも呼ばれる)の生産が多い。中国で生産されるコメのうち、ジャポニカ米の比率は2018年で33%を占めるにすぎない。それでも年間生産量は概算で4700万トンとなり、世界のジャポニカ米の生産量の68%を占める。現在、年率平均4.2%増のペースで生産高が拡大しており、中国産のジャポニカ米の存在感は一段と高まる見通しだ。

 中国の省別のジャポニカ米の生産シェアは、黒竜江省が34.5%でトップ。次いで、江蘇省の26.1%、吉林省の9.7%、遼寧省7.1%が続く。江蘇省は、元はインディカ米の主要産地の一つだったが、ジャポニカ米に栽培移行した。

 ジャポニカ米の消費量の上位は、江蘇省、遼寧省、山東省がベスト3だ。日本の農水省の調査によると、北部の都市住民や農村住民の主食が小麦からジャポニカ米に移行する動きが続いている。上海市、江蘇省、浙江省のコメ消費は既にインディカ米からジャポニカ米へほぼ移行し、湖北省と四川省もジャポニカ米消費量が比較的大きい地域となり、広東省、広西自治区などのジャポニカ米消費も近年増加しているという。

 新たに、大連商品交易所で開始される「粳米先物」は、コメの価格変動が比較的大きいため、その価格変動リスクを低減する役割が期待されている。
たとえば、過去3年間で黒竜江省富錦市のジャポニカ米の工場出荷価格は、最低価格がトンあたり3240元から最高価格は4500元と、最大で39%の開きがあった。コメの加工利益は製造コストと労働価格の上昇により、トン当たり80~100元、利益率にして約2%~3%になってしまっており、出荷時期による価格の変動がコントロールできなければ、たちまち赤字になってしまうというリスクがあるという。

 中国の3大先物市場の一角である鄭州商品交易所には、既にジャポニカ米の先物市場があるが、売買は活発とはいえない状況だった。今回、より規模が大きな大連で「粳米先物」の取引が開始されることが刺激となって、鄭州のジャポニカ米先物も活性化することが期待されている。

 日本で「コメ離れ」が続いているのは、日本のコメ市場が「ブランド」や「産地」を限定して販売されることが一般的で、人気ブランドの価格が高騰してしまったことが一因になっている。また、需要が減退しても価格が一定水準以上に維持されていることもあって、デフレ時代に食料品としての価格が割高に感じられるようになったのだろう。それと比較すると、中国のコメは、「工場出荷価格」で価格が示されるほど、コモディティ化している。価格も日本での流通価格の数分の1だ。今後、中国のコメにも、日本同様に「ブランド米ブーム」がやって来ることがあるのだろうか?(イメージ写真提供:123RF)


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