この映画は、数々の映画賞に輝いた『7月と安生(原題:七月與安生)』(2016)の曾国祥(デレク・ツァン)が監督。主演は、『七月と安生』で金馬賞最優秀主演女優賞を受賞した周冬雨(チョウ・ドンユィ)と、中国で大人気の男性アイドルグループTFBOYSのメンバー、易?千璽(イー・ヤンチェンシー)が務めた。主演の二人は『少年的?』でも芝居であることを感じさせない迫真の演技と大絶賛されている。
映画の主題である「学校のいじめ」は、中国でもますます深刻化している。中国最高検察院の史衛忠検察庁長が今年5月、「2018年から今日に至るまでに、検察庁は学校のいじめに関わる事件で3407人を逮捕し、5750人を起訴した」と述べ、学校のいじめの深刻さを訴えたほどだ。
今回の映画でも被害者が丸坊主にされ、服を脱がされ動画に撮られるという過激で屈辱的なシーンがリアルに描かれている。実際のいじめでも、殴る蹴るという単純な暴力よりも、屈辱的な場面をネットで拡散するやり方が主流になりつつあるようだ。
政府は関連法規の整備やいじめ防止のための取り組みを強化している。10月21日から北京で開催された第13回全国人民代表大会(全人代)常務委員会の第14回会議で、学校のいじめ対策強化に関する内容が含まれた未成年保護法の改正案が提出された。これは、2013年同法が公布されてから初めての改正案だ。改正案では、学校はいじめをなくすための制度を確立し、いじめ加害生徒への指導教育を強化し、いじめを発見したらこれを無くすために迅速に対応しなければならないと規定している。
また、国務院教育監督指導委員会弁公室が主導し、学校のいじめを重点課題とした実地指導することなども行われている。
これまで中国では、いじめの原因をいじめの加害者と被害者双方の家庭の問題とする論調があった。しかし、日本の例を見ても分かるとおり、いじめは教育現場での人間関係の希薄化など社会全体の風潮にも起因し、加害者だけを責めても解決しない。いじめが社会問題化して以来、30年以上にわたって社会全体、学校全体で意識的にいじめ防止に取り組み、制度を整えてきた日本でさえ、いじめによる自殺者や不登校児童生徒が後を絶たないといった現状である。「少年的?」の中でもいじめ問題に具体的な解決方法は示されていない。悲しい現実と言えるかもしれない。(イメージ写真提供:123RF)
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