サントリー「ボス」 イエナカ市場へ大攻勢 働き方変化に細かく対応
大塚匠課長(サントリー食品インターナショナル)
ポイントは“ご自愛”と“まとめ買い”

サントリー食品インターナショナルは、「ボス」ブランドの戦略の一つとして、イエナカ(家庭内)需要の開拓を強化する。

コロナ禍の外出自粛で、RTDコーヒー飲料(PET・缶など容器入りコーヒー飲料)市場は、家庭内飲用でレギュラーコーヒーなどの手いれのコーヒーの好調に押されて一時減少したが、夏以降、復調傾向にある。
この動きについて、3日発表した大塚匠ジャパン事業本部ブランド開発事業部課長は「リモートワークが浸透するにつれ『意外に忙しい』ということで、より簡便なものが求められるようになりRTDコーヒー飲料の追い風になっている」と商機を見いだす。

サントリーのイエナカ商品も好調に推移。イエナカ主力アイテムの濃縮タイプ飲料「ボス カフェベース」シリーズは20年、前年比約40%増の販売数量を記録した。「クラフトボス」シリーズもリモートワークの浸透に伴い、ケース販売と1人当たりの購入本数が拡大している。

今後、在宅を起点とした働き方が一過性ではなく新しい生活行動様式として定着するとの見立てのもと、「仕事とプライベートの境界が曖昧になりメリハリがつけにくい」「自宅や同じ場所に留まることで孤独やストレスを感じる」といった生活者の意識の変化に着目して商品・マーケティングプランを組み立てた。

イエナカ消費の今後のキーワードに“ご自愛需要”と“まとめ買い需要”の2つを挙げ、この2つの需要に共用・パーソナルの軸と、ご褒美・日常の軸を組み合わせた4つの領域でそれぞれ商品を強化していく。

この中で「カフェベース」は、この4つ領域を横断する中核商品として強化していく。中長期的には「『カフェベース』を中心に早期にポジションアップを図り、イエナカ商品計でイエナカRTDコーヒー飲料市場のシェアを現在の約2%から10%以上へ引き上げていく」ことを目標に掲げる。

「カフェベース」は昨春、「無糖」と「甘さ控えめ」で、同社専用焙煎工場で高温短時間焙煎したアラビカ豆100%を複数回連続抽出した濃厚エキス(非濃縮コーヒー)を増量し、同社独自のエスプレッソでコーヒーの香り立ちを強化。ラテ(牛乳割り)でもブラック(水割り)でも楽しめる“2WAY”を訴求している。

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大塚匠課長(サントリー食品インターナショナル) この結果、「無糖」が牽引役となり新規のブラックコーヒーユーザーの獲得に成功。「アイス・ホットの2WAYもあり、濃さや量を調節できるといったこのカスタム性の高さが価値として認知されつつある」とみている。


今年はこのような濃縮タイプ飲料の強みを生かして販売方法とコミュニケーションを強化していくとともに、無糖紅茶へと領域を拡大して「オンリーワンのポジションを強固なものにする」。

9日に紅茶カテゴリーから、「ボス ティーベース 無糖紅茶」「同 紅茶 甘さ控えめ」の2品を新発売するとともに「カフェベース」の「無糖」と「甘さ控えめ」の中味とパッケージに磨きをかけてリニューアル発売した。

「ボス ティーベース」は、「リプトン」のインド産紅茶を100%使用し希釈後の飲用時にRTD紅茶に比べ約3倍の紅茶原料を使用しコクと香りを打ち出している。販売チャネルはメーンのスーパー、量販店に加えて、コンビニを強化する。

「昨年、7杯分サイズを先行投入したところ、一部のチェーンさまの嗜好品部門でトップクラスとなった。女性比率も高くユニークな顧客接点になったとご評価をいただき、今年4月から取り扱いチェーンを強化していく」と述べる。

濃縮タイプ飲料以外では、共用・パーソナルの軸とご褒美・日常の軸を組み合わせた4つの領域のうち、共用と日常の「水のごとしのコーヒーユーザー」に向けて2ℓの大容量アイスコーヒー「ボス ホームカフェ」2品を4月13日に新発売する。

「当社の調べによると、ボトルコーヒーヘビーユーザーの一週間の当たり平均消費量は約3.3ℓ(約3.5本)。水のごとく飲まれる方に向けて、われわれの技術を駆使し2Lながら香料を使わずにコーヒー感がありながら飲みやすい味わいを実現した」と胸を張る。

2ℓの大容量でまとめ買い需要に対応することで、価格競争が激化する900㎖前後のボトルコーヒー市場とは一線を画する考えだ。

そのほか、パーソナル・日常の“ちびだら飲み”の領域には「クラフトボス」で対応。ご褒美需要の共用領域には、コーヒーハンターの川島良彰氏と共同開発した付加価値ボトルコーヒー「プレミアムボス コーヒーハンターズセレクション」、パーソナル領域には「クラフトボス ポケットラテ」をそれぞれ育成していく。
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