合格率1割未満の狭き門・伊藤園ティーテイスター 働きながら学んで提案力UP 中谷美紀さんや有村架純さんとの晴れ舞台でも活躍
伊藤園ティーテイスターの学科(筆記)試験の様子
 伊藤園では、人材育成とお茶の啓発活動を目的に厚生労働省認定社内検定・伊藤園ティーテイスター制度が設けられている。
 試験は、学科(筆記)・検茶・口述で行われ、茶文化からおいしいお茶の入れ方など幅広い知識と技能が求められる。


 狭き門で、伊藤園の社員数5409人(単独)のうち資格保有者は1級17人、2級367人、3級1762人(21年5月時点)。
合格率は3級・2級がともに1割未満となる。
 1級はさらに難易度が高い。
 1級受験資格を得るための試験を突破した後、1年間の研修期間を経てから受験に至る。毎年数人が受験するものの合格者ゼロの年もある。

 合格には働きながら向上心を持って学び続けなければならない。

 伊藤園ルートセールスの営業社員は、日中は担当の店舗や自動販売機への営業活動に従事しているため、近年は効率化が進んでいるとはいえ、日々の業務を行いながらの勉強時間の捻出はたやすくない。

 そうした中、入社4年目という異例の早さで2級を取得したのが横浜泉支店(神奈川県)の金山翼さん。
その前向きな姿勢がティーテイスターの食育活動を担当する販売促進部の目にとまり、このほど中谷美紀さんが生出演したオンライン茶会のスタッフに抜擢された。

 同じくスタッフとして中谷美紀さんにお茶のいれ方を教える講師役に大抜擢されたのが入社18年目のベテランで青梅支店(東京都)のグループリーダーを務める島巻明さん。

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伊藤園ティーテイスターの学科(筆記)試験の様子  島巻さんは4年前に2級を取得し、現在は1級を目指しつつ、所属の青梅支店内でのティーテイスター育成にも一役かっている。

 中谷美紀さんのオンライン茶会終了後に取材に応じた島巻さんは「有資格者がいると支店のメンバーもやる気になる。
私も2級取得の先輩の存在がとても刺激になった。青梅支店では茶葉と飲料の競合製品との飲み比べや、茶の勉強会を定期的に行い、みな勉強熱心」と説明する。

 一方、2級を取得して間もない金山さんは、中谷美紀さんのオンラインイベントが、ティーテイスターの活動デビューとなった。

 今年の8月からは、業務内容も広がり、これまでの自動販売機中心の営業活動に加えて8月から小売店も担当。

 「資格を取得したことで、おいしいお茶のいれ方講座などお茶の啓発活動を積極的にやっていきたい。そうすることでお客様とのつながりがより強固になり、さらには、お茶のある豊かなくらしの提案をしていくことができると信じている」と意欲をのぞかせる。

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伊藤園ティーテイスターの検茶試験の様子
伊藤園ティーテイスターの検茶試験の様子  ティーテイスターは1つの通過点であり、ティーテイスターを目指して向学心を持つことが営業力・提案力に直結すると島巻さんと金山さんは口をそろえる。

 「お茶の知識があると話が弾みやすい。商品知識を吸収しながら、業務の合間を縫ってのお茶の勉強に加え、帰宅後、毎日1時間くらいお茶の勉強に割いていた」(金山さん)

 「お店を回るにも知識がないと上手く説明できない。同じ茶葉でもいれ方次第で味わいや効果・効能が変わるといったことはあまり知られておらず、営業していく中で知識を得るのは凄く楽しい」(島巻さん)とそれぞれコメントする。

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お茶の歴史・分類・品種・栽培から製造などを盛り込んだ「茶の本」
お茶の歴史・分類・品種・栽培から製造などを盛り込んだ「茶の本」  知識の習得には、お茶の歴史・分類・品種・栽培から製造などを盛り込んだ「茶の本」で勉強し、テイスティングや水色(すいしょく)を見極める力も養う必要がある。

 お茶セミナーや大茶会など、お茶の歴史やお茶の機能性といった知識やお茶のおいしいいれ方を伝える各種イベントの最前線に立つのが2級だが、コロナ禍以降、リアルでの活躍の場が失われていた。


 その間、島巻さんはオンラインで活動。

 伊藤園ではティーテイスターによる「#IeTimeOEN(家タイム応援)」プロジェクトを昨年5月1日に開始し、日々さまざまな切り口でお茶の楽しみ方をツイッターやYouTubeでのオンライン茶会等で発信している。

 島巻さんもその一人で「自分が出演する店頭動画を全国の営業員が活用し、店頭に設置したモニターを通し、お茶の魅力を発信している」。

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オンライン茶会「中谷美紀さんとお茶のいれ方体験」に出演した中谷美紀さん
オンライン茶会「中谷美紀さんとお茶のいれ方体験」に出演した中谷美紀さん  中谷美紀さん出演のオンライン茶会「中谷美紀さんとお茶のいれ方体験」もコロナ禍の新たな試みだが、リアルタイムで、全国の視聴者と双方向にコミュニケーションすることができ、これまでの発信と異なる点となった。

 「中谷さんをお相手にかなり緊張したが、本当にいい経験で次に活かせる。お茶セミナーや大茶会が再開できたとしてもリアル・リモートの両輪で双方向のやり取りは、今後主流になっていくと思う」との見方を示す。

 イベントでは急須や湯のみのセッティングなど裏方に回った金山さんも「お茶の道具のセッティングにも、ティーテイスターの知識が活かされている。今回の経験を踏まえオンラインでもおいしいお茶のいれ方講座をやっていきたい。イベントを通じて多くの方と関わり、自分の名前を覚えてもらえる。活動の幅も広がり資格は絶対持っていたほうがいい」と主張する。

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伊藤園ティーテイスターの口述試験
伊藤園ティーテイスターの口述試験  ティーテイスター制度は、上級者を目指すにつれて求められる知識も増え視野が広まる仕組みになっている。

 2級から1級への1年間の研修期間には、国内茶産地研修・日本紅茶協会のティーアドバイザーの資格取得・裏千家「入門」の許状取得が求められ、この3つが1級受験への条件となる。


 1級取得に向けて週末、茶道を習い始めた島巻さんは「茶道を始めてみて、物凄く奥深く、知らないことばかりだと感じた。関心の幅が広がり、いろいろ勉強していきたい」と語る。
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