「みそなどの発酵食品を次世代に伝えたい」。その思いを具現化しようと、新庄みそ(広島市)の山本美香社長が構想するのが「発酵ランド」だ。
みそにとどまらず、発酵食品を製造する地元メーカーや大学と連携したプロジェクトが進行している。構想や業界の現状について山本社長に聞いた。

――「発酵ランド」とはどういうものですか。

山本 一昨年、創業100周年を迎えたのを機に、構想を具体的なものにするため動き始めた。当初はみそに関する見学施設を作ろうと考えていたが、広島には発酵食品を製造するメーカーが多いことから、みそだけでなく日本酒の賀茂鶴酒造、醤油の川中醤油、酢のオタフクソースに声をかけ、発酵を切り口に輪を広げた。

例えば、麹に扮した自分自身がトンネルに入りお米と出会い、塩のシャワーを浴び、いろいろな過程を経て、出てきたらみそになったり、醤油になったりする。こうしたテーマパークのようなものをイメージしている。まずはバーチャルなものをと、広島工業大学と連携。昨年、学生たちと「バーチャル発酵ランド」を制作するプロジェクトが始まった。今年も継続している。

こうした学生との交流を通し、食品業界に興味を持ってもらいたいという思いもある。

――現在のみそ業界をどのように見ていますか。


山本 人口減少という問題もあるし、毎日みそ汁を飲まない世代も増え、食卓にみそ汁が登場しにくい環境になっているのは間違いない。

われわれが手間暇かけて作っていること、体にも良いということをもっと多くの人に知ってもらい、日本の伝統的な調味料の一つとして次世代に伝えたい。こうした強い思いがあり、それが「発酵ランド」にもつながる。

――そのほか普及のために取り組んでいることは。

山本 みそ作りの体験会や、みそ玉作りなどの活動を行っている。親子で参加できるみそ玉作りは商業施設などで実施し好評だ。

みそ玉のバリエーションを広げながら、より手軽に楽しめるよう提案したり、みそまる普及委員会とも連携したりと浸透に努めている。

――最近は全国的に、甘口のみそが好まれる傾向が見られます。

山本 甘口のみそが、特に若い世代に受け入れられているようだ。業界全体でも、そのような商品が増えている。麹の割合が多いほど、うまみと甘みが強くなる。

当社が重点商品と位置付ける「あまくち麦と米生あわせ」も麹歩合が高く甘いのが特徴で、好調に推移している。


――海外市場について。

山本 海外の日本食ブームや健康志向を背景に、みその需要が高まっており、業界として輸出が伸びている。全体では米国、韓国向けが多いが、当社はヨーロッパが多い。ヨーロッパでは一般家庭での消費が増え、小容量の需要が高まっている。

みそを使った調味料や加工品も、国内外で評価を得ており、当社では塩こうじやみそピーナッツが人気だ。こうした周辺商材も含め、市場を活性化させたい。
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