
製品を無菌状態にして常温流通や長期保存を可能とするレトルト殺菌は、加圧加熱処理を経るため、水分や熱に弱い一般的な紙素材では不可能とされる。
そうした中、テトラ・リカルトは、レトルト殺菌に耐えることのできる世界初の紙容器となる。
約70%が再生可能な素材(原紙)で構成され、この原紙にアルミ箔、プラスチック(ポリプロピレン)を合わせた6層構造とすることで、酸素や光から製品を守り、高圧・高温での殺菌にも耐えられるようになっている。
2003年に販売開始以降、長らく展開され、コロナ禍を契機に脚光を浴びる。
欧州を中心に引き合いが強まり2020年から需要が大幅に拡大している。
テクニカルセンター(静岡県御殿場市)で小ロットでのテトラ・リカルトのテスト を可能とするプロダクトディベロップメントセンター(PDC) その拡大要因には、コロナ禍の巣ごもり消費により「ハサミを使わずに開封できる」「軽量で収納しやすい」「開け口が大きく注ぎやすい」「使用後はコンパクトにたためてかさばらない」といったテトラ・リカルトの価値が浮き彫りになったことが挙げられる。
日本テトラパックは、この点に着目したほか、サステイナブルや環境への関心の高まりなど環境の変化を好機と捉え、食品企業などに向けて提案を強化。
7月、テクニカルセンター(静岡県御殿場市)で小ロットでのテトラ・リカルトのテストを可能とするプロダクトディベロップメントセンター(PDC)のサービスを開始した。
7月13日、テクニカルセンターで発表した鍜治葉子マーケティング部執行役員マーケティングディレクター日本・韓国担当は「テトラ・リカルトは世界のテトラパックが発売している容器の中で、過去5年間、最も伸びの大きい容器。家での食事が増えると、その分ゴミも溜まる中で、容器使用後にぺたんこにたためるといった利便性が改めて見直されている。一度使っていただくとその利便性をご理解いただき使い続けて下さるお客様が非常に多い」と語る。

環境面では輸送効率が高まりCO2の排出量を削減につながる。
一柳亮マーケティング部マネージャーは「メーカー様にテトラ・リカルトを納品する場合、非常にコンパクトにたためて運べるため、充填前空容器(空缶)の輸送に比べてトラックの台数は9分の1で済み、
パウチ容器と比べても3割ほど輸送効率がいい」と胸を張る。製品・サービスの資源採取・原料生産から生産・流通・消費・廃棄・リサイクルまでのライフサイクルアセスメント(LCA)の指標でみても、缶容器に比べCO2排出量が抑えられるという。

営業部・ビジネス開発部営業担当の小林礼珠氏は、テトラ・リカルトの採用によって売上拡大が図れた豪ロゼラ社の事例を紹介する。
ロゼラ社は1895年に創業し長きにわたり国民的スープブランドを販売してきたが、原材料・製造コストの高騰を受けて2021年7月に終売を余儀なくされる。
その後、消費者からの販売継続を望む声を受けて、従来の缶容器に代わりテトラ・リカルトを新たに採用して22年3月に再発売に踏み切ったところ、トラック積載効率アップといった環境優位性のアピールにより新たな購買理由を創出。加えてSNSを活用した様々なマーケティング活動が奏功して価格転嫁にも成功した。

今年6月現在で、日本には国内製造品と輸入品あわせて約50品目のテトラ・リカルト商品が発売されている。
カテゴリー別出荷数量は、トマトが最も多く、次いで多い順にコーン、ビーンズとなる。
容器サイズは100ml・200ml・340ml・390ml・440ml・500mlの6種類。
製造ラインは1時間当たり最大2万4000個製造可能な高速ラインと、1時間当たり最大6000個製造可能な標準ラインの2種類を用意している。
テトラ・リカルト商品の製造工程は、包材投入→容器成形→充填→シール密閉→レトルト釜での加圧加熱処理→X線での異物検査の順で進められる。
スタンダードタイプの充填機(フィラー)は3種類あり、製造の中身に合わせて組み合わせていく。

スタンダード3種類に加えて、オプションとして15ミリ角以上の固形物の充填に対応したウェイトフィラーも用意している。
「日本でも既にウェイトフィラーで充填されたホールトマトが販売されている。1番のホッパーが100g、2番のホッパーが120gといった具合に各ホッパーに最適な重量が入れられるようにコントロールしている。ホールトマトだけではなく、桃を半分にカットしたものもウェイトフィラーで充填できる」(坂尾氏)という。
テトラ・リカルトのテストを可能とするPDCには、テスト用の容器成形・シール機とテスト用のレトルト釜を設備。

鍜治執行役員は「お客様がテストしていただけるユニットを導入して、より国内でテトラ・リカルトの製造ラインを導入していただける製造委託先様やブランドオーナー様を増やしていく」と意欲をのぞかせる。
テトラ・リカルトが缶容器に及ばない点はリサイクル率と強度。前者については、アルミ付き紙容器リサイクルのネットワークを広げるなどして取り組んでいく。

