今年3月、岡山県製粉製麺工業協同組合の理事長に、スズキ麺工社長の鈴木保夫氏が就任した。岡山県西部の鴨方地区は良質な原料と温暖な気候に恵まれ、古くから手延べ麺の生産が行われてきた。
ただ、他の産地と同様、高齢化や後継者難という問題を抱え、生産量は減少傾向にある。

乾麺にとどまらず、全国のあらゆる麺業者とのつながりが深い麺機メーカーの社長でもある鈴木理事長に、組合の現状と業界の展望を聞いた。

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――組合について。

鈴木 当組合の設立は明治10年で、全国の中でも歴史が古い。現在はほかの産地と同様、高齢化という問題を抱えている。生産者の平均年齢が毎年1歳ずつ上がっており、その中で生産量を確保するのが難しい状況にある。


一方で、新しく始めようとする若い人もいる。既存の中小生産者も含めて「組合として一緒にやりましょう」「情報交換しましょう」と声をかけ、組合員数を増やすことが大事。

――取り組むべき課題は。

鈴木 一番重要なのは生産者の確保と掘り起こし、そして生産効率を高めるための取り組みだ。手延べ麺の生産は朝が早く、それが若い人の意欲にマッチしていない。そこをもう少し改善できないだろうか。


――麺業界の展望を。

鈴木 手延べ麺は、全国的に製品の供給がタイトになっている。そのため、麺メーカーには手延べにチャレンジしたらどうかと提案している。

労力はかかるし苦労もあるかもしれないが、麺のトレンドは冷凍麺と手延べ麺だと見ている。コンビニも機械麺から手延べ麺へ切り替えており、需要は十分にある。

――貴社(スズキ麺工)の概況を教えてください。


鈴木 前12月期は減収増益で計画通り。減収は大型プラントの新設がなかったことと、食品部門がコロナ特需の反動で減少したため。

今期も前年並みを計画しているが、固定費の増加が見込まれる。近隣に異業種の新しい工場の建設が予定され、人員確保のハードルも高くなっている。ただ指をくわえて見ているのではなく、働きやすい環境を作ることが大事。最近は夏場の気温が上昇しているため、工場の屋根を改装した。
遮温性を高めて、工場内の温度を抑える狙いだ。また、新たな包装機を導入し、快適な環境づくりと生産性の向上に取り組んでいる。

商品開発においては、岡山理科大学や近隣の職業能力開発大学校との共同開発を進めている。アカデミックなコラボレーションによって、社内の限られた人材では難しい、新しい視点での開発につながっている。

売上の大幅な増加を求めるのではなく、着実に収益を上げる。われわれはギア1つから作ることができる。
何かあった時に相談してもらえる、宮大工のような存在でありたい。