開幕からDHを任され、好調を維持する鈴木(カブス)。9本塁打、31打点でナ・リーグ上位を争っている
近年、大谷翔平と鈴木誠也に続く日本人野手がなかなか出てこないが、日本球界にはまだまだダイヤの原石がズラリ。
■村上、岡本、佐藤輝のメジャー適性は?
大谷翔平(ドジャース)が「打者」よりも「パパ」としてニュースになった4月。代わって大谷以上に打点数を稼いでいるのが鈴木誠也(カブス)だ。お股ニキ氏も開幕直後、
「ヤンキース時代の松井秀喜級かそれ以上」と鈴木の躍進に期待を寄せていたが、まさにそのとおりの活躍ぶりと言える。
鈴木の活躍は喜ばしいが、日本人投手のメジャーでの奮闘ぶりと比べると、いかんせん日本人野手の人数が少ない。右肩手術からリハビリ中の吉田正尚(レッドソックス)も復帰時期は未定だ。
贅沢な悩みとわかりつつも、そろそろ大谷、鈴木に続く日本人野手のメジャーでの活躍を見たいところ。そこで、次にメジャーで活躍できそうな日本人野手は誰なのか、お股ニキ氏に考察していただこう。
まずはすでに来季からのメジャー挑戦を宣言している村上宗隆(ヤクルト)について。今季は開幕から上半身のコンディション不良で出遅れ、1軍復帰したその日に再故障。復帰時期は未定だ。
「ヤクルトでの最終年でもありますし、ケガ人が続出しているチーム状況も踏まえると焦りが出たのかもしれません」とその心境を慮るお股ニキ氏だが、打者としての資質で気になる点もあるという。
「村上は速い球に差し込まれ気味で、速球派の多い阪神相手だと打てないことが多い。この点はメジャーで成績を残せなかった筒香嘉智(DeNA)と重なります。
メジャーの投手は日本よりも球速が速いだけでなく、モーションもテンポも速いので、その点に対応できるかが大きな課題です。メジャーを意識して今季から外野守備に取り組んでいますが、そもそもサードの守備が徐々に悪化しているのも気になります」

開幕から上半身のコンディション不良で出遅れた村上(ヤクルト)。1軍復帰したその日に再故障となった
その村上以上にメジャー適性がありそうだとお股ニキ氏が語るのは岡本和真(巨人)だ。
「岡本はパワーも飛距離もあり、高めを打つ力も備えているので通用しそう。サイ・ヤング賞右腕のトレバー・バウアー(DeNA)相手に過去6打数3安打ですべて本塁打、という点もひとつの指標になります。
また、WBCを思い返しても、不振にあえいだ村上とは違い、外国人投手相手も苦にせず打っていて、飛距離も十分でした。キャリアハイを記録してメジャーへ挑戦すると思い描いていただけに、大ケガは非常に残念ですが、万全の復活を願います」

外国人投手も苦にしない岡本(巨人)。5月6日の阪神戦で負傷した左ひじが回復するまで時間がかかりそうだ
その岡本を抑え、セ・リーグ本塁打部門と打点部門でトップを走るのが佐藤輝明(阪神)だ。5月1日に両リーグ最速で10号を放つなど、キャリアハイのペースで打ちまくる佐藤もメジャー適性を持つ打者だとお股ニキ氏は語る。
「もともとフィジカルや体格面などアスリート資質が高い。私は以前から『もっと軽く振ればいいのに』と指摘してきましたが、今季、軽く振っても飛距離が出る感覚をつかんだようです。
その一方で、相手に恐怖心を植えつけるため、時々あえてフルスイングをする工夫もできる。

4月半ばから4番に座る佐藤輝(阪神)。11本塁打、31打点は両リーグ断トツの圧倒的な成績だ
■注目スラッガーはセ・リーグにいる!
村上以上にメジャー適性を感じる打者として、岡本と佐藤に注目するお股ニキ氏。ほかの気になる打者を尋ねたところ、セ・リーグの主砲の名前が続々と挙がった。
「パ・リーグ勢は柳田悠岐(ソフトバンク)や浅村栄斗(楽天)の後がなかなか育っていません。
一方のセ・リーグ勢は、バンテリンドームや甲子園など本塁打の出にくい球場で、レベルの高い日本人投手たちとの対戦を繰り返すことによって、素材やポテンシャルの高い打者が次々に育ってきています。今のセ・リーグの主砲クラスは軒並みレベルが高いです」
そのひとりは、まさに広いバンテリンドームを本拠地としながら、2年連続で20本塁打超えを記録する細川成也(中日)だ。
「細川はパワーに加えて、意外と柔らかさもある。そのため、変化球に泳がされても片手でバンテリンドーム中段まで持っていける。佐藤同様に反対方向にも飛ばすことができ、岡本同様にバウアーを攻略しているのも魅力的です」
甲子園を本拠地とする阪神の打者では、佐藤以外に森下翔太にも期待を寄せる。
「森下はケガが多いのが難点ですが、純粋な打撃能力はかなりレベルが高い。パワーこそ岡本や佐藤、細川に比べると見劣りするものの、巨人時代の菅野ですら、ピンチの場面では投げにくそうにしていたほど、打撃の才があります」

セ・リーグ首位打者争いトップの森下(阪神)。4試合連続本塁打を記録するなど覚醒中だ
DeNAの主砲、牧秀悟はどうか?
「牧は少し体が大きくなりすぎているところが気になりますが、その割には守備の動きも悪くなく、盗塁もできる。
ただ、打撃は一番いいときと比べると若干落ち気味かもしれません。また、メジャーで勝負するとなるとセカンドでは厳しく、どこを守るのかという問題が出てきます。これは村上も佐藤も同様です」
広島にも期待の和製大砲、末包昇大がいる。
「鈴木誠也以来となる待望の右のスラッガー。コンタクトも良くて、パワーではほかの日本人大砲に引けを取りません。
こうして見ると、やはりセ・リーグのスラッガーは軒並みポテンシャルが高い。『パ・リーグのほうがパワーピッチャーぞろいで力勝負をするからいい打者が多いはず』という先入観のある人も多いでしょうが、もう古い。今すぐ更新すべきですね」
■パの注目株と期待の一芸選手
では、パ・リーグの野手に可能性はないのか?
「面白いのは水谷瞬(日本ハム)。フィジカル的資質や打ち方はいいのに、意識が旧来的というか、どの球もおっつけてカットしようとする点は改善したほうがいいでしょう」
4月に打率4割超、本塁打と打点でもパ・リーグ上位を争う活躍を見せた太田椋(オリックス)も、以前からお股ニキ氏が注目してきた選手だ。
「新人の頃からいいなと思っていた選手でしたが、本格的に覚醒しましたね。全盛期の山田哲人(ヤクルト)に近いというか、バットを寝かせながらコンパクトなスイングができています。
スラッガー系以外で「トップパフォーマンスであれば......」と評価するのが周東佑京(ソフトバンク)だ。
「正直、全盛期よりも徐々に脚力は落ちてきています。ただ、一番調子がいいときならメジャー級。セカンド、ショート、サードを守れる第4外野手として、メジャーでベンチ入りを十分狙える選手です」
城島健司(元マリナーズ)以降不在の日本人捕手への期待がかかる選手は?
「山本祐大(DeNA)がチームメイトの牧秀悟くらい打てれば、まさに城島になりえるのですが......」
来年3月にはWBCもあり、選手たちの海外志向はますます高まるはず。メジャーで活躍できるレベルの野手が今後さらに台頭してくれることを期待したい。
*成績は日本時間5月7日時点
文/オグマナオト 写真/時事通信社 アフロ