投手の守備について語った山本キャスター
5月11日、ヤクルトvs巨人戦を現地で観戦しました。試合は2対1でヤクルトが勝利したのですが、今季2勝目を手にした先発の吉村貢司郎投手のあるプレーが心に残りました。
それは4回表のこと。巨人の若林楽人選手が一・二塁間を抜けそうな当たりを放ちましたが、ファーストのオスナ選手が逆シングルで見事にキャッチ。すかさず送球してアウトになったシーンです。
この時、吉村投手はマウンドから一塁へとベースカバーに入り、俊足の若林選手と競走になりながらも、ギリギリのタイミングで間に合いました。
テレビ中継で観ていたら、「ギリギリで危なかった」としか思わなかったかもしれません。しかし、私が座っていたバックネット裏からは、打球が一塁方向に飛んだ瞬間、吉村投手がダッシュするシーンが見えました。その初動と、ベースカバーの速さが印象に残ったんです。
投球でボールをリリースしたあとの投手は"9人目の野手"になります。ゴロを自らさばいて送球することもありますし、ベースカバーに走ることも。一塁だけじゃなく、状況に応じて三塁や本塁のベースカバーをすることもあるので、打球が飛んだ瞬間に状況判断をする必要があります。
長い時間をかけ、練習や試合などで蓄積した経験がモノをいいます。ファン目線では、ついつい当たり前のように思ってしまうこともあるでしょうが、プロ野球選手にとっても難しいプレーなんでしょう。

この日は母の日。両親と最高の試合を観戦できました。
投手は9人目の野手、と表現しましたが、守備力の評価としてひとつの基準となるのがゴールデングラブ賞です。これまで受賞してきた多くの投手たちは、みな野手に劣らぬ守備力を備えていました。
ベースカバーは、ダッシュが遅れてアウトにできなくても投手のエラーにはなりませんし、数字として残ることはありません。ただ、出塁を許して苦しむのは投手自身です。こういった小さなプレーの成功の積み重ねが、いい投球リズムを生み出し、勝利につながる側面もあるはずです。ちなみに、私が観戦した試合の吉村投手は、8回1失点10奪三振で勝利を手にしています。
余談ですが、投手の守備力でいうと、ピッチャー返しをどうさばくかも大事ですよね。番組でご一緒していた黒木知宏さんは、「ピッチャー返しが多い投手はコントロールがいい」と教えてくれました。
投手の守備力は、単純なフィールディングだけでは測れないことがわかったのは大きな収穫でした。そして、勝利を見届けることができて楽しい試合でした。
球場に足を運ぶたびに、毎回、新しい発見があります。ぜひみなさんも球場に行きましょう。
それでは、また来週。

構成/キンマサタカ 撮影/栗山秀作