東京・谷中の「一寸亭(ちょっとてい)」に来たピエール瀧
ピエール瀧さんが大好きな「もやしソバ」だけを紹介するこの連載。2回目にして早くも「もやしソバの専門店(!?)」に突入。
***
――ピエール瀧さんがラーメン屋さんに行くと、なぜかいつも頼んでしまう〝もやしソバ〟。なぜ頼んでしまうのかという引っかかりを掘り下げる連載が、この『萌え萌やしソバ探訪録』です。2回目の今回は、東京都台東区の谷中にやって来ました!
ピエール瀧(以下、瀧) 「谷中ぎんざ商店街」は活気があっていいね。昭和の下町の雰囲気が残っているからなのか、パッと見インバウンドの人たちも多い。彼らにしてみるとローカルな市場に行くような感じなのかな?
――瀧さん、見えてきました。あそこが、今回お邪魔するお店です。
瀧 えっ!? あそこなの? 今は手前を工事しているからまだ見えるけど、普通に歩いていたらなかなか遭遇できない細い道だよね。この辺は狭い路地が入り組んでいて、家と家がひざを突き合わせてるみたいな所だし。
――あまり目立たない場所ですね。
瀧 道の向こうから人が歩いてくるから抜け道みたいになってるんだろうけど、知らない人が奥まで行ったら戻ってこられないかもね。建物に枯れ草が絡まってる場所もあるし迷宮みたい。
――本日のお店「一寸亭」です!
瀧 噺家さんがちょっとした寄席イベントをやるような飲食店に見えなくもない。激渋なお店だわ。
――お店の横に、もやしの段ボール箱が置いてありますよ。
瀧 「分福もやし」って書いてある。栃木産だって。それに店頭のメニューを見たら、もやしソバとチャーハンと焼餃子しか書いてないよ。すごっ!
――入ってみましょう!
瀧 こんにちは。めっちゃ渋い。渋すぎる店内だ。ほら、酒もあるよ。酒があるってことは、焼餃子で一杯やって、シメにチャーハンかもやしソバってことだよね。もやしソバは当然頼むよ。
――せっかくですからね。
瀧 申し訳ないけど、この感じだったら全部食べるべきだよね。だって、あとライスしかないでしょ。ライスって、たぶん焼餃子を2人前とか頼む人用でしょ。
――餃子定食的な感じですね。
ラーメンがお品書きにない。 もやしソバがメインの店!
瀧 驚いたことに、この店はもやしソバがメインの店なんだな。だって普通のラーメンがお品書きにないもん。この連載をやる限り、もしかしたらもやしソバだけの店に出会うかもしれないと思ったけど、こんなに早く現れるとは思ってもいなかったな。それにほら、メニューの裏側に英語バージョンも書いてある。「ビーンスプラウトヌードルスープ」だって。
――海外でももやしソバは人気があるってことですかね?
瀧 谷中に来たインバウンドのインフルエンサーの人がこの店にたどり着いて、もやしソバしかないから頼んでみたら、それが意外と広まったってことかもしれない。勝手な読みだけど。
――3品とも来ました。
「もやしそば」(900円)
瀧 今回のもやしソバの第一印象は、ごま油がいい感じに香るね。麺は平打ちでちぢれ麺。うん、歯応えがあっていいです。スープはかつおだし? 和風っぽい味がする。あんは醤油味で、具はもやしと豚バラのみ。もやしのシャキシャキ感がすごくいい。
――本当にシャキシャキしてます。
瀧 まだ、もやしの細かい違いがわかるような舌を持ち合わせていないから説明が難しいけど、もやしを噛んだときのシャキッという音が脳まで響く感じだね。

もやしを噛んだときの シャキッという音が脳まで響く
――もやし、うまいっす!
瀧 1回目に食べたもやしソバは、きれいなフォームで投げてくるって言ったけど、こっちもきれいなフォームなんだよ。
――チャーハンも食べてみますか。
瀧 見た目は、多くの人が想像する〝ザ・チャーハン〟だね。うまい! あれ? 焼豚が入ってるよ。ということはチャーハンの具用に特別に焼豚を作ってるってことだよね。こだわりがすごいな。
――だったら、チャーシューメンをメニューに入れてもいいのに。
瀧 餃子は皮が薄めで、具がいっぱい入ってる。ちょっと甘みがあるな。うまい! 店主さんにお話を伺ってこようかな。すみません。
店主の大塚貞夫さん はい。

なんで「一寸亭」という名前なんですか?
瀧 お店の名前を「一寸亭」にしたのは理由があるんですか?
大塚さん 最初に出したお店は4坪しかなかったんです(現在は12坪)。それで、路地をちょっと入った所にある小さな店なので〝ちょっと〟ということで「一寸亭」にしました。
瀧 3品に絞ったのはいつ頃からですか?
大塚さん 2年くらい前です。コロナ禍のときにお店を閉めていて、お客さんもあんまり来ないのでやめようかなと思ったんですけど、お客さんから「もやしソバだけでいいからやってくれないか」って言われたんです。
瀧 昔からもやしソバをメインでやってたんですか?
大塚さん いえ、昔は100種類以上のメニューがありました。
瀧 なぜもやしソバだけになったんでしょう?
大塚さん 昔から一番人気があったんです。それで、もやしソバとチャーハンと焼餃子の3点だけにしたら、変えるに変えられなくなっちゃって。
瀧 もやしがすごくシャキシャキしてたんですけど、こだわってますか?
大塚さん うちでは昔から「分福もやし」を使ってるんですけど、このもやしは長くてきれいなんですよ。やっぱり、もやししか具が入っていないので、出したときに折れていたりするとどうしても見栄えが悪くなる。だから、分福もやしを使ってます。
瀧 なるほど。
――分福もやし、気になりますね。
瀧 なるよね。もう少し回を重ねたら生産元に乗り込んでみようか。
***
■一寸亭
東京都台東区谷中3-11-7
電話:03-3823-7990
※営業日時、メニュー、価格などは変更になる場合があります
※この連載は隔号で掲載予定です
■ピエール瀧(ぴえーる・たき)
1967年生まれ、静岡県出身。ミュージシャン、俳優、声優、タレント。
「無駄こそ宝なり」が信条。好物はもやしソバ。
公式Instagram【@pierre_taki】
構成/TAKA-HO