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板倉が考える、他人の評価との向き合い方

オフシーズンは自身の社会貢献活動KCPと休養に充てた板倉 滉。欧州の名門クラブへの移籍報道も伝えられる中、当の本人はそもそもメディアや他人からの評価について、どう感じているのか。

その本音に迫る。

■実はエゴサーチをしていた時期も

連日、僕の〝移籍〟に関する話題がメディアで取り沙汰されている。取り上げていただくのはありがたいけれど、僕自身はどうかといえば、そういった報道をあまり気にしていない。

移籍というのはご縁だし、必要とされる場所で結果を出すだけだ。なので、今はひたすらに来季へ向けたコンディションづくりを始動している。

時々、聞かれることがある。メディアの評価は都度チェックしたりするものですか?と。答えは「NO」。いちいち一喜一憂したくないからだ。

確かに、「素晴らしい活躍をした」といった良い評価をされるのは、素直にうれしい気持ちになる。逆に「全然ダメだった。相手攻撃陣の突破を許してしまい、いいところがなかった」といったマイナスの評価をされるのは、もちろんいい気持ちにはならない(苦笑)。不出来だったとしたら、それを一番痛感しているのは自分自身だから。

ドイツ国内でどう評価されているのか、ニュースを見ることはほとんどせずに過ごしてきた。そもそも、僕はドイツ語がほんの少ししかできないので、幸か不幸かなんと書かれているのかわからない。

だから、どれだけ痛烈に批判されたとしても精神的なダメージを受けることはない。とにかく、僕がすべきはDFとして失点せずに、チームを勝利に導くこと。そうやってサポーターを喜ばせることだ。ただ、そんなことを言いつつも実はエゴサーチをして、ネット上の評価を確認していた時期もあった。

ちょうど、18年に期限付き移籍でベガルタ仙台に加入した頃だっただろうか。2月の開幕戦にスタメン出場、チームを勝利に導く決勝弾を決めることができたものの、3月のYBCルヴァン杯で一発退場、しかも大ケガをしてチームを離脱し、みんなに迷惑をかけたときですらエゴサをしていた。

チームメイトたちと一緒に報道をチェックして、「滉、めっちゃ言われてるじゃん」といじられたこともよく覚えている。

■板倉流の厳しい意見への向き合い方

エゴサをしなくなったのは、特にこれという理由はないけど、A代表に招集され出した頃だったと思う。

日本代表のメンバーにもなると、注目度は桁違いだ。招集期間中だとか、東京五輪2020やW杯カタール大会などといったビッグイベントの前後は報道の数がハンパじゃなかった。

それは肌で感じた。さすがにドイツ語ではなく日本語だから、ちょっとネットを見るだけで、嫌でも自分たち、日本代表の話題が目に飛び込んできた。

取り上げられること自体は、こんなにありがたい話はない。日本サッカーが盛り上がるためには、メディアの力は必要不可欠。それに、僕らが勝利することでサポーターや僕を応援してくれている人たち、家族にいいニュースが届けられるのは本当にうれしい限りだ。

でも、一方的で頭ごなしに批判するメディアに対しては思うところもある。もちろん、批評を否定するつもりはない。いろんな意見や見方があることは理解している。

振り返ってみれば、W杯カタール大会のグループリーグでドイツやスペインとの対戦が決まった際、僕らの決勝トーナメント進出は極めて困難という厳しい報道があったのも事実。でも、結果はどうだったか。それは皆さんが見てくれたとおりだ。

だから僕は、あえて報道をほとんど見ないようにしている。

フォーカスすべきは自分自身のプレー、そしてチームに対してだ。

ちなみに僕は、小学生時代から他人の評価はまったく気にしてなかった。自分自身をブラジル代表のMFロナウジーニョだと思い込んで、彼のように魅せるサッカーができればそれでよかった。

唯一、多少気にしていたのは、当時の川崎フロンターレ・アカデミーの恩師、髙﨑康嗣コーチに怒られないようにすることくらい。とはいっても、僕は負けん気が強かったので、ほかの子たちよりも、コーチ陣に食ってかかる回数がかなり多かった。

実際、髙﨑さんも「もっと主張してこい」という懐の深い指導者だったので、遠慮なく思うことは言って、主張しまくっていた。

だから、今現在サッカーをやっている子供たちに対して、これだけは言いたい。他人の目や評価を気にしすぎると、自分が本来持っている力の半分も出せなくなるよと。萎縮しちゃダメ。殻を破らないと、その先には進めない。

それは僕自身にも言えることだ。絶対に批判なんて気にしない。

現状に満足なんてしない。自分を成長させるため、もっと上を目指す。僕のここから先、そして来年のW杯を楽しみにしていてほしい。

【サッカー日本代表 板倉 滉の「やるよ、俺は!」】第41回 板倉が考える、 他人の評価との向き合い方

板倉 滉

構成・文/高橋史門 写真/アフロ

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