日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが新作映画をレビューする『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』。かつて米国を恐怖と混乱に陥れた「悪魔の書」に迫るドキュメンタリー* * *『サタンがおまえを待っている』評点:★3.5点(5点満点)

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「サタニック・パニック」を生んだ書籍の真相とは?

1980年代から90年代にかけて、「サタニック・パニック」と総称されるモラル・パニックが全米を襲った。

「サタニック・パニック」の中心にあったのは「おそろしく力のある悪魔崇拝者の地下グループが全世界にネットワークを張り巡らせており、彼らが子供を誘拐し虐待し殺害したり、あるいはロック音楽やゲームなどを通じて青少年を悪の道に引きずり込もうとしている」という荒唐無稽な妄想だが、当時それは「身近にある、れっきとした現実」であるとみなされ、その結果、罪もない幼稚園の先生や両親が次々と告訴されて有罪判決を受ける事例が続出した。

その直接のきっかけになったのが1980年に出版された『ミシェルは覚えている』という書籍である。

この本はミシェルという女性が精神科医の催眠療法によって抑圧され忘れていた記憶を「回復した」過程の記録で、それによればミシェルは幼い頃に悪魔崇拝者の両親によって儀式に差し出され、拷問され、レイプされ、殺人を強制的に目撃させられ、人肉を食わされ、手足を切断された(怪我は天使や聖母マリアがのちに治してくれたという)。

その真相に迫るドキュメンタリーが本作だが、果たして嘘つきは誰だったのか?

STORY:80年代北米を襲った未曽有の悪魔パニック。そのきっかけは「悪魔の書」だった。ひとりの被害者が幼い頃に経験した悪魔崇拝の儀式。カトリック教会やローマ教皇、FBIをも巻き込み、悪魔崇拝の恐るべき実態がついに明るみに!

監督:スティーヴ・J・アダムズ、ショーン・ホーラー
出演:ミシェル・スミス ローレンス・パズダーほか
上映時間:90分

全国公開中

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