フロントデザインは、電動化時代にふさわしい洗練さを表現。歴代のスポーティさを継承しつつも、よりクリーンで先進的な印象に
"スペシャリティクーペ"の象徴として、一時代を築いたホンダ・プレリュードが、令和の今、6代目に進化して帰ってきた。
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■新スペシャリティカー、令和に爆誕!
クルマ好きを一瞬で魅了!
そんな一台が、今年9月、ホンダから登場予定だ。その名はプレリュード。1978年に初代が登場し、80年代には格納式ヘッドライトと低く構えたスタイルの2代目・3代目が〝デートカー〟として若者の憧れを集め、大きな話題を呼んだ。
2001年に惜しまれつつ販売を終了して以来、長らくその名は封印されていたが、23年のジャパンモビリティショーで突如姿を現したコンセプトカーに会場は騒然。そしてこの秋、ついに市販モデルとして復活を果たす(価格は今後発表予定)。

後ろ姿は、柔らかな曲線美が印象的。実用性も兼ね備え、トランクはしっかり荷物が積める

ルーフラインは滑らかに弧を描きながら後方へと流れ、流麗なシルエットを際立たせる

内装は、視認性の高い水平基調のデザインが特徴。メーターパネルは液晶ディスプレーを採用
この6代目プレリュードは、ホンダ初のハイブリッド専用モデル。搭載されるのは、北米カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したシビック・ハイブリッドと同じ2モーターハイブリッド電動システム。
さらに注目すべきは、新開発の走行制御技術「Honda S+Shift」。要は、ハイブリッド車でもスポーツカーのような走りを楽しめるのだ。試作車を試乗した専門家らも、鋭い加速と繊細な操作性、日常使いの快適性が見事に融合していると評価していた。
■プレリュードが担う役割とは!?

ホンダ6代目プレリュード開発責任者の山上智行 11代目シビックの開発も手がけた山上氏が、ホンダの技術と情熱を結集させ、電動化時代にふさわしいスペシャリティカーに!
というわけで、週プレ自動車班は6代目プレリュードの開発責任者・山上智行氏を直撃してみた!
「新型プレリュードは、過去の焼き直しのクルマではありません。歴代モデルの魅力を受け継ぎながら、現代にふさわしい形で新しく生まれ変わりました」
開発コンセプトは〝アンリミテッドグライド〟。グライダーのように滑らかでクリーン、そして時にアクロバチックな動きもこなす、多面的なスペシャリティスポーツを目指したという。ちなみに開発チームは実際にグライダーに搭乗。走りの感性を空から引き出すその姿勢は、もはや本気の域を超えている。
気になるのは24年ぶりに復活したプレリュードという名前。山上氏はこう振り返る。
「開発中に『クルマとの時間は、ある意味デートでは?』という話になり、『それってプレリュードだよね』と自然に決まりました」
ただ、現在のニッポン市場では、軽スーパーハイトワゴン、ミニバン、SUVが主役を張る。ホンダの国内市場を支えるのも、軽新車販売で10年連続トップのN-BOX。今年上半期(1~6月)も10万台超を売り上げ、登録車を含めた新車販売台数で堂々の第1位に輝いた。さらにミニバンのフリードやステップワゴンが堅調に推移している。
一方、2ドアクーペは〝絶滅危惧種〟状態......。なぜ今なのか? その問いに山上氏は、迷いなくこう言い切った。
「マグロは泳ぎ続けないと死んでしまうといわれますが、ホンダも同じ。2ドアのプレリュードのようなクルマがなければ、それはホンダではありません」
6代目プレリュードは、日本国内にとどまらず、グローバル市場へ展開していく。中でもハイブリッド車の需要が高まるホンダの〝ドル箱〟北米市場では、〝ブランドの象徴〟としての役割を担う。
「開発に没頭していたので、最近ようやく〝とんでもない役目を背負ったクルマ〟だと実感してきました(笑)。でも、それにふさわしい仕上がりになっています。ホンダが大切にしてきた〝操る喜び〟を徹底的に追求しながら、環境性能にもきちんと配慮した......そんな次世代のスペシャリティスポーツです」
ホンダ関係者によれば、6代目プレリュードの主なターゲットは、かつてこのモデルに乗っていたジェネレーションX。しかし、それだけではない。「その子供世代であるZ世代にもアピールしていきたい」と語るように、懐かしさと新しさを融合させた戦略が浮かび上がる。
首都圏のホンダ販売店関係者も期待を寄せる。
「MTのシビックRSを買う若い層が増えています。そうしたスポーツ車志向の若者が、プレリュードにどう反応するか注目しています。見た目は文句なしにカッコいい。
ただ、プレリュードは大量に売るクルマではない。台数は限られるはずで、受注開始と同時に〝即完〟もありえます。ブランドイメージの向上には間違いなく貢献するはず」
ホンダのブランドイメージを背負う存在なだけに、6代目プレリュードの走りは本気だ。一部の専門家からは〝電動版タイプR〟との呼び声も上がっているほどだ。
何しろ足回りには、世界最速FFマシンとして名高いシビックタイプRに採用された「デュアルアクシス・ストラット」を導入。さらに、ブレンボ製ブレーキなども装備されるなど、スポーツドライビングを存分に楽しめるよう磨き抜かれている。ホンダらしく走行性能には一切の妥協がないのだ。
とはいえ、今回のプレリュードはハイブリッド専用モデル。いわゆるギンギンの速さを追求したスポーツカーとはちょっと違う。
ホンダの開発陣は「どこまでも走りたくなるような爽快なクルマです。例えば、母娘でドライブに出かけるようなシーンにもぴったり」と話していた。
最後に山上氏は笑顔でこう語った。
「スペシャリティスポーツとしてのデザインに仕上げていますので、見た目に目が行くと思います。でも、走りにも期待してください。週プレさん、ぜひ試乗を!」
その言葉には、ホンダの走りへのこだわりと、歴史ある2ドアクーペ復活への手応えがにじんでいた。
■ホンダ・プレリュードの軌跡

【1978年】初代プレリュード
ホンダ初の電動サンルーフを搭載。スタイリッシュな2ドアクーペとして登場。当時の若者たちの憧れの的に。

【1982年】2代目プレリュード
2代目は、リトラクタブルヘッドライトとロー&ワイドなプロポーションで時代の視線を一身に集めた。

【1987年】3代目プレリュード
世界初の量産車として初めて4輪操舵システム(4WS)を搭載し、ホンダの技術力を世界に知らしめた。

【1991年】4代目プレリュード
それまでのデートカーというイメージから脱却し、スポーツカーとしての本質的な走りを追求したモデル。

【1996年】5代目プレリュード
惜しまれつつも2001年に生産・販売を終了したが、その洗練されたスタイルと、爽快な走りでファンを魅了。
取材・文/週プレ自動車班 撮影/山本佳吾