ウーバーイーツ配達中に乗った中で印象に残っているエレベーターの話です
連載【ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長のチャリンコ爆走配達日誌】第113回
ウーバーイーツの日本上陸直後から配達員としても活動するライター・渡辺雅史が、チャリンコを漕ぎまくって足で稼いだ、配達にまつわるリアルな体験談を綴ります!
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私がウーバーイーツの配達中に乗る乗り物の1位はぶっちぎりで自転車ですが、2位はエレベーターです。
都内には商業ビルやタワーマンションなど、あらゆる建物にエレベーターがあるのはもちろん、横断歩道のない大きな道路にかかる歩道橋に自転車横断車用のエレベーターが設置されていることもあります。
商業ビルで印象的だったのは、オフィス街にある昭和40年代から50年代に建てられたと思われるビルの業務用エレベーター。出入り業者が多いためバックヤードに2基のエレベーターがあるのは大変ありがたいのですが、動きがトリッキー。
地下1階でエレベーターの現在地を確認すると1基は現在4階で上りの表示、もう1基が現在6階で上りの表示。このタイミングで上りのボタンを押して、6階で上りの表示だったものが来ると思って扉の前で待っていたら、そのエレベーターが最上階で謎の待機モードに。その後、4階で上りだったエレベーターが最上階まで行ってから折り返して、地下1階にやってきた時は頭の中に大きな「?」マークが出ました。偶然乗り合わせた、このエレベーターをよく使っている方に聞くと「このエレベーター、とにかくバカなのよ」と話していました。
タワーマンションで印象的だったのはセキュリティーがしっかりし過ぎているエレベーター。40階以上あるマンションに用意された業務用エレベーターは1基だけ。高層マンションなのにひとつしかないのはよくあるパターンですが、このマンションは入館受付をする防災センターがなぜかフロアの途中にあります。そのため、一旦防災センターのあるフロアで業務用エレベーターを降りて入館手続きをしなければなりません。
しかもセキュリティーがしっかりしているため、地下にある業務用入り口と防災センターのあるフロア以外は、入館手続きの際に渡されるICカードをエレベーター内のボタンの下にあるリーダーの部分にかざさないとボタンが押せない仕組みとなっています。
このように地下に防災センターがなく非常に面倒な構造な上、地下にある所定の自転車置き場に置いてから戻ってくるまで最低でも15分はかかるため、依頼を受けてしまうと非常にやっかいな案件となります。
一般の集合住宅で印象的なものは、とにかく狭すぎるエレベーター。私は自転車に乗っている時はリュックを前カゴの上に固定。目的の建物に到着したらリュックを背負って部屋の前まで運ぶスタイルで配達しています。そんなときに困るのがこのタイプ。
下町エリアなどの狭い敷地に建てられた住宅や、エレベーターがなかった集合住宅に設置されたと思われるエレベーターは、リュックを背負ったまま前進の体勢で入るとゴンドラ内で向きを変えられないほど狭いので、ボタンを押すことができません。そのためバック入庫のような感じでリュックの方を扉に向け後進して入り、右サイドにあるボタンを手探りで見つけて押します。
「階段で移動した方がいいのでは?」と思う方もいるでしょうが、こういうエレベーターのあるところは階段も狭いところが多く、階段の踊り場で向きを変えようとするとリュックが邪魔で向きが変えられず、踊り場から先は後ろ歩きで階段を歩くことになってしまいます。
おそらく、エレベーター付きの住宅にすると家賃を上げやすいなどの事情で設置しているのでしょう。狭くても3階、4階への移動はとても楽で、ありがたく利用させていただいております。ですが、あの独特な圧迫感は何度乗っても慣れません。
文/渡辺雅史 イラスト/土屋俊明