【モーリー・ロバートソンの考察】「内向きに戻った」アメリカと...の画像はこちら >>
『週刊プレイボーイ』で「挑発的ニッポン革命計画」を連載中の国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソンが、トランプ政権の「アメリカファースト」政策により保護主義に突き進むアメリカと、その影響を大きく受ける日本の今後について考察する

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空模様は日々変わりますが、季節は巡ります。

それと同じことが、アメリカの政治にも言える――そんな分析があります。

現在のアメリカの「内向きさ」は、4年ごとの大統領選挙という"空模様の変化"や、トランプという"特殊な天気"だけによるものではなく、100年単位の"循環"でもあるというのです。

オバマ政権で大統領特別補佐官を務めた国際関係論の専門家、ジョージタウン大学のチャールズ・カプチャン氏は、朝日新聞のインタビューで「第2次世界大戦後の約80年は、米国史全体から見れば『例外的に長い国際主義の季節』だった」と指摘。単独主義(孤立主義)に回帰しつつある大国の現状を分析しました。

アメリカという国家は19世紀前半以来、第5代大統領ジェームズ・モンローが掲げた「相互不干渉」をベースに、外交よりも内政を優先してきました。第1次世界大戦にこそ参戦したものの、その後は再び単独主義、そして反移民に傾き、国際連盟にも参加しませんでした。

それが大きく転換されたきっかけは、実は1941年の日本軍による真珠湾攻撃でした。アメリカは連合国を主導して国際主義の旗手となり、東西冷戦期以降は「世界の警察」を引き受けることになったのです。

では、なぜ今そのアメリカで、保護主義・排外主義・単独主義が装いを変えて再燃しているのか。

1930年代に恐慌から経済を立て直したニューディール政策の潮流は、グレート・ソサエティ政策として戦後にも継承され、アメリカ政府は教育・基礎研究・インフラに長期的な目線で投資しました。国家が"即時性のない政策"に耐えたことで、中産階級は厚みを増しました。

そのスタンスが崩れたのは、企業の四半期決算というビジネスサイクル、大統領選ごとに大きくスイングするようになった政治サイクルにより、即時的に成果を上げる手段が評価される構造が広がったためだとの指摘があります。

1980年代以降の政策や企業行動は、本来は国内で引き受けるべき負担(賃金水準・雇用・税・再分配)を「外」へつけ替えることがトレンドになりました。為替調整や関税・制裁、プラザ合意に象徴される同盟国へのコスト移転、移民の活用や製造のアウトソースによる低賃金労働の外部調達、賃上げや技能形成を伴わない労働力代替型の自動化......。

徐々に社会の基礎体力が削られ、中間層が痩せ、法や制度への信頼が摩耗。その結果、内向き・排外・単独志向が強まった――私はそうみています。

そして、アメリカが内向きになればなるほど、日本には強烈な向かい風が直撃します。

これまでアメリカに依存してきた外需・資源・防衛......あらゆることを分散しなければならない以上、「世界に関わる必要はない」という態度にしがみつくのは、最も危うい選択になるでしょう。日本政府が国の設計を変更する必要があることは当然ですが、今を生きる個人には、それを待つ余裕はありません。

英語を学び、デジタルリテラシーを高めること。行ける人は海外に出ること。それが難しければ、国内で外国人コミュニティに飛び込むなどして、とにかくコンフォートゾーンから飛び出すこと。"お上"の庇護を頼るのではなく、自分でかじを取る人が未来を開くでしょう。

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