いま、被災地の最新現場はどうなっているのか。それを知るために、本誌ボランティア班は宮城県南三陸町を訪ねた。


宮城県南三陸町は三陸沖に面した漁業の盛んな町である。ここの取材をナビゲートしてくれたのは「ふんばろう東日本支援プロジェクト」の渡辺一雄さん、菊池幸子さん、同町で三代続く鮮魚店「さかなのみうら」の三浦保志社長、そして三浦社長の片腕である嶋津祐司さんだ。

まず午前中は、ワカメの養殖棚に重しとしてくくりつける「サンドバッグ」を浜を回って配っていく。これは全国のボランティアが手作りしたもので、ひとつひとつにメッセージが入っている。それを渡すと、潮焼けした漁師さんたちから「涙が出るよ」「ありがとう!」と声をかけられ、ちょっとこそばゆくなる。

サンドバッグが重宝されるのには理由がある。
カキの養殖なら3年、ホヤなら数年かかるところが、ワカメなら数ヵ月から1年で出荷できる。そこで多くの漁師さんが今年だけはワカメ養殖も手がけているのだ。それにしても、人から感謝されることがこんなにうれしいものだとは!

漁師のひとり、佐藤長治さんのワカメ養殖棚作りも少しだけ手伝わせてもらう。サンドバッグの口を締める「漁師結び」がうまくできずモタモタしてる記者を尻目に、ボランティアの若い女性たちがテキパキと作業を進めていく。次回までにマスターしておこうとひそかに心に誓う。

佐藤さんによれば、津波は、海底の汚泥までもどこかに運び去ってくれたらしく、「今年、来年と、まれに見る豊漁の年になりそうだ」とのこと。
いまから楽しみだ。

午後からは知人に挨拶回りをする「ふんばろう」の渡辺さんに同行。旧知の渡辺さんへの信頼感からか、多くの人が率直な声を聞かせてくれた。なかでも大きかったのが「復興行政に計画性がまったく感じられない」というもの。

一例を挙げれば、仮設住宅と職場の距離が考慮されていなかったため、やむを得ず仮設住宅近くに転職する人が増えたのだが、今度は町の中心部が深刻な労働力不足に陥ってしまったというのだ。

その結果、せっかく観光客が来ても従業員が足りないホテルや、漁獲量があっても稼働できない加工工場なども出てきているという。


また主婦層からは、仕事の後に寄れる商店が仮設住宅の近くにないという不満の声も上がった。

「パンダや松にお金を使うよりも……ねえ」

労働環境が改善すれば人口が増え、雇用が増え、企業も誘致できて税収も上がる。そうなれば、復興のスピードも自然と加速していくはずなのだが……。

(取材・文/逸村弘美 島田文昭 小林奈津子 撮影/倉田真琴)

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