人の顔色をうかがって、言いたいことややりたいことができずに自分のことを後回しにしてしまう。そんな経験は誰でもあるはず。

それは元々の性格のせいかもしれないし、その時置かれた立場のせいかもしれない。

いずれにしても、自分のことを後回しにしてしまいやすい人が心に留めておきたいのが、稲盛和夫や松下幸之助といった名だたる経営者たちに影響を与えた昭和の哲人・中村天風氏の言葉だ。

◾️「自分を後回しにしがちな人」が知るべき中村天風の言葉とは

『またうっかり、自分を後回しにするところだった』(中村天風著、アスコム刊)では、どうしたら自分を優先して生きていけるのか、自分を大事にするとはどういうことかを中村天風氏の当時の「話しことば」のままに掲載し、その教えを現代に活かすためのコツとともに紹介する。

中村天風氏は1876年(明治9年)、現在の東京都八王子で生まれ、20代半ばから日露戦争の軍事スパイとして満州に赴任。終戦後、当時「不治の病」といわれた肺結核を発病し、心身ともに弱り、自分を見失いそうになっていた彼を救ったのが、インドの山奥、ヨガの聖者カリアッパ師のもとでつかんだ教えだった。「人間とは、大宇宙の力と結びついている強い存在だ」という真理を悟り、病を克服し、92歳で亡くなるまで、自分を大事にするコツや人生の教訓を多くの人々に伝え続けた。

では、中村天風氏はどんな話を伝えてきたのか。「誰でも良き人生の主人公となりえるようにできてるんだ」と中村氏は述べる。そのためには、進歩と向上とを現実にしたいためにと、理想ばかり描いていても無駄だ。自分の今ある人生をより良き人生に変えていくことに注意しないといけない。できていないことを、頭の中でできた格好にしてしまう。病になっている者は、病が治りたい気持ちよりも、現在もうすでに病が治った気持ちになってしまう。

そう考えることで、人間が人間らしく生きられるようになると中村氏は述べる。

大切なことは、いたずらに漠然とした理想を追い求めるのではなく、達成した自分自身の姿を具体的にイメージすること。それが夢への道の第一歩となるということだろう。

「あなたはあなたのままで素晴らしい」というのが、本書を通しての中村氏の教えの根幹となる。自分のことを後回しにしたり、自分を大切にしないといけないと思いながらもうまくいかないという人は、多くの経営者や著名人に影響を与えた中村天風氏の言葉から、人生のヒントをもらえるはずだ。

(T・N/新刊JP編集部)