2023-24シーズンからWEリーグを舞台に戦うセレッソ大阪ヤンマーレディース。7月7日に新体制発表記者会見を行い、いよいよ本格的にプロチームとしてのスタートを切った。
同チームからはこれまでに数多くの優秀な選手が羽ばたいている。なでしこジャパンのワールドカップメンバーにも選出されている林穂之香(ウェストハム・ユナイテッドFCウィメン/イングランド)、浜野まいか(ハンマルビーIF/スウェーデン)をはじめ、東京オリンピック代表の実績を持つ宝田沙織(リンシェーピングFC/スウェーデン)や北村菜々美(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)らを輩出。男子チーム同様に、“育成のセレッソ”を強く印象づけている。
7日の会見には森島寛晃社長、鳥居塚伸人監督をはじめ、新加入選手、期限付き移籍から復帰となった選手も数多く登壇。INAC神戸レオネッサから完全移籍加入となったMF脇阪麗奈は、2020年までセレッソ大阪ヤンマーレディース(当時のチーム名はセレッソ大阪堺レディース)でプレー。このたび、プロ化にともない“帰還”を決断し、「個人としての目標は攻守の軸になること。
選手層の厚みを増し、“WEリーグ仕様”へと変貌を遂げつつあるセレッソ大阪ヤンマーレディース。今回は改めてチームの足跡を振り返っておきたい。
母体となるチームは2010年に発足した「セレッソ大阪レディースU-15」。セレクションにより選ばれた中学1年生16人でトレーニングをスタートさせた。
2013年、チャレンジリーグ加盟が決まったチームは「セレッソ大阪堺レディース」に名称を変更。監督に竹花友也氏が就任し、下部組織として「セレッソ大阪堺ガールズ」も新設された。
そうした苦しい1年を過ごしながらも、翌年、翌々年とチームはメキメキ成長。チャレンジリーグ3年目の2015年は開幕10連勝を果たすなど快進撃を続け、リーグ戦を13勝2分で1位。プレーオフの末、なでしこリーグ2部昇格を決めた。
■発足8年目になでしこ1部昇格を達成
なでしこリーグ2部を舞台に戦った初年度の2016年は、チャレンジリーグ参入1年目のような悲壮感はなく、どのチームとも互角以上に戦い、8勝7分3敗で勝点31を獲得して3位。惜しくも1部昇格はならなかったが、チームには「やれる」という手応えだけが残った。
もっとも、初の1部での戦いは甘くなく、「パワーとスピードのレベルが一つ上がった」(竹花友也前監督)2018年は最下位で2部に降格。それでも翌2019年には再び1部・2部入れ替え戦を制して1部復帰を果たすと、2度目のなでしこリーグ1部となった2020年は、5位と躍進。過去最高の成績を収めた。この年を最後に、選手はそれぞれ別の場所へ、成長を求めて旅立つことになる。というのも、2021年9月にスタートするWEリーグへ、セレッソ大阪堺レディースは「登録選手の大半が学生であること、組織体制が構築されていなかったこと」を理由に参入申請を見送った結果、海外移籍を含め、主力選手の多くがチームを離れたのだ。ただし、多くの主力が抜けた中でも若手選手の成長は目覚ましく、2021年のなでしこリーグ1部は3位、22年は4位と上位で終えた。そして満を持して、2022年9月、セレッソ大阪堺レディースの23-24シーズンからのWEリーグ加盟が決定し、今年の2月にはチーム名が「セレッソ大阪ヤンマーレディース」になることが発表された。
「練習の中での厳しさ、激しさを求めながらハードワークすること。その中でも技術を伸ばすこと。そうしたチームカラーは私が在籍していた頃からずっと変わっていません。今のチームにも、可能性を秘めた若い選手が多くいて、みんな純粋にサッカーに取り組んでいます。シーズンの中でもグッと成長する可能性を秘めていますし、期待感しかありません」と初のWEリーグを戦うチームへエールを送る林穂之香。2010年、中学1年生のみで発足したチームはここまで、カテゴリーを上げるたびにレベルの高さに苦しみながら、もがき、戦い、成長。どんな壁にぶつかっても、ひたむきな努力と地道な練習で乗り越えてきた。WEリーグを舞台にする1年目も、1試合1試合、逞しく戦い続けることで、大きな成長を遂げていくはずだ。若き力の躍動、ハツラツとしたプレーを楽しみに待ちたい。
取材・文=小田尚史