“世界最強リーグ”ことプレミアリーグは、第4節を終えて徐々に今シーズンの勢力図が見えてきた。果たしてプレミアはマンチェスター・シティの一強時代なのか? それとも群雄割拠の混戦模様になるのだろうか? 

 今シーズン、ここまで無傷の4連勝スタートを切ったのは王者シティだけだ。
彼らは昨季、135年の歴史を誇るイングランドのトップリーグにおいて史上5クラブ目のリーグ3連覇を達成しており、今季は前人未到の4連覇に挑戦している。このまま絶対的王者が独走する可能性もあるが、まだまだ先は長い。

 一体、彼らの「開幕4連勝」はどんな意味を持つのだろうか? それでは、プレミア開幕4試合の成績を過去の実績と照らし合わせて振り返ってみよう。

[写真]=Getty Images

■優勝水準



 1992年に幕を開けたプレミアリーグは今季で32シーズン目。過去31シーズンの優勝チームの成績を見ると、近年は驚くほど高水準になっていることが分かる。過去最高成績は2017-18シーズンのマンチェスター・シティで、彼らは歴代最多106ゴールを叩き出して史上初の「勝ち点100」を達成した。
1試合平均で見ると「2.63ポイント」。今季の成績で見ると、この水準を上回っているのは4戦全勝のシティだけ。勝ち点10で並ぶ2位集団の4チームは平均「2.5ポイント」のため、既に6年前のシティの驚異的なペースからは脱落しているのだ。

 一方で、プレミア史上最も“レベルが低かった”優勝チームは、1996-97シーズンのマンチェスター・ユナイテッドである。若かりし頃のMFデイヴィッド・ベッカムらを擁したチームは、最も低い75ポイントで優勝を果たした。1試合平均「1.97ポイント」となり、今季で見ると6位のブライトン(平均2.25ポイント)までは、この優勝ラインを上回っている。


 過去31シーズンの優勝チームの平均を見ると、1試合「2.29ポイント」が優勝ラインとなっている。ということは、やはり1位シティ、2位トッテナム、3位リヴァプール、4位ウェストハム、5位アーセナル、6位ブライトンまでが優勝ペースと言えるだろう。

 とはいえ、ペップ・グアルディオラがシティの監督に就任した2016-17シーズンからの直近7年間で見ると、優勝ペースは「2.47ポイント」まで引き上げるため、平均「2.5ポイント」の2位集団(トッテナム、リヴァプール、ウェストハム、アーセナル)が無敗を維持しているとはいえ、近年の高水準の優勝争いで見ると既にギリギリのラインにいることになる。

■第4節を終えた時点で・・・



 平均ポイントを見ると驚くほど基準の高い優勝争いだが、第4節を終えた時点での成績はあまり関係ないようだ。データ会社『Opta』によると、過去10シーズンの優勝チームの第4節終了時の平均勝ち点は「9.5ポイント」だという。そして、過去10年間で開幕4連勝のチームが優勝したケースは2回(2014-15のチェルシー、2019-20のリヴァプール)しかないのである。
さらに言うと、2013-14と2020-21シーズンには開幕4試合で「7ポイント」しか稼げていなかったシティが優勝しており、今季で言えば7位クリスタルパレスにも優勝の芽があるのだ。

 唯一の全勝スタートを切っているシティだが、彼らにとって「開幕4連勝」は決して縁起が良いとは言えない。むしろ不吉に近いかもしれない。過去12年間で7回も優勝しているシティだが、4連勝スタートから優勝したのは1度しかないのだ。それがプレミアリーグになってから初優勝を遂げた2011-12シーズンである。当時のシティは、4連勝の好スタートを切るもシーズン終盤に宿敵ユナイテッドに追い抜かれて肝を冷やすことに。
シーズン最終節には格下QPRにリードを許して優勝を逃しかけるも、後半のアディショナルタイム、正確には「93:20」にセルヒオ・アグエロが決勝ゴールを決めて土壇場で栄冠を手にしたのだ。

 プレミアリーグの歴史において4連勝スタートを切ったのは過去に25チーム。そのうち、最終的に優勝したのは8チームだけ。優勝確率はわずか「32%」だというのだ! そのため開幕4連勝は確かに素晴らしいスタートだが、決して優勝を約束してくれるような成績ではない。特にシティは、2016-17シーズンにクラブ史上最高の開幕6連勝を果たすも、最終的に3位に甘んじており、シティにとって開幕の連勝は幸先良いスタートとは呼べないようだ・・・。



 ちなみに、プレミアリーグの開幕からの連勝記録は「9連勝」だ。
ジョゼ・モウリーニョ体制2年目となった2005-06シーズンのチェルシーが驚異的な強さを誇り、第10節のエヴァートン戦に引き分けるまで連勝を続けたのだ。ちなみに彼らは開幕22試合で「20勝1分け1敗」という嘘みたいなペースで勝ち点を稼いで2連覇を達成して見せた。

 チェルシーの記録に次ぐのは2019-20シーズンのリヴァプールで「開幕8連勝」。彼らも無事に頂点に立って30年ぶりのリーグ制覇を達成した。しかし、その次の記録は「開幕6連勝」で3チームいるが、そのうち優勝できたのは1チームだけ。そのため、開幕からの連勝は8まで伸ばせば優勝が確実視されるようだが、6連勝程度では何も分からないみたいだ。


■2位集団



 今季、アンジェ・ポステコグルー新監督のもとで好スタートを切ったトッテナムは、素晴らしいサッカーで勝ち点10を稼いで2位に着けている。今季の彼らは例年とは違う・・・と信じたいのだが、実はアントニオ・コンテ政権の昨シーズンも開幕4試合で勝ち点10を稼いでいたのだ。しかしシーズン途中から足踏みし始めると、選手やクラブを批判した監督が解任される事態に。結局、最終的に8位という悔しいシーズンを送ることになった。

 UEFAヨーロッパ・カンファレンスリーグ覇者のウェストハムも今季は好発進した。キャプテンで主軸のMFデクラン・ライスをアーセナルに引き抜かれながら、4試合で勝ち点10を稼いでおり、1999-2000シーズンと並んで過去最高のスタートを切っている。既に、14位に終わった昨季の勝ち点(40)の四分の一を稼いでおり、今季は降格の不安に苛まれる心配はなさそうだ!



 そして、王者シティの対抗馬と見られるアーセナルとリヴァプールもここまで勝ち点10を稼いでいる。アーセナルは昨シーズン、開幕5連勝スタートで終盤まで首位に着けていたが、最終的にシティに抜かれて栄冠を逃した。だから、1ポイントたりとも取りこぼしたくないのだが、既に貴重なポイントを失っている。一人少ない相手に終了間際に同点ゴールを許した第3節のフラム戦(2-2)の取りこぼしが響かないことを願うばかりだ。

 昨季はスランプに喘いだリヴァプールも今は完全復活を果たしており、間違いなくシティを脅かす存在になるだろうが、数少ない不安材料の1つは、木曜日開催のヨーロッパリーグ(EL)だろうか。彼らがシーズン開幕からELに参加した過去3回は、プレミアで6位、7位、8位とトップ4に入れていないのである・・・。

 果たして、今季はどんな優勝争いが繰り広げられるのか? 世界最高リーグの最高峰の戦いに注目したい!

(記事/Footmedia)