先週末のプレミアリーグ第7節では、アーセナルが苦手としているマンチェスター・シティを攻略し、見事にシーズン序盤の天王山を制した。これでアーセナルは勝ち点を20に伸ばしてトッテナムに並び、ノースロンドン勢がプレミアリーグの首位に立っている。

 
 昨シーズン、悔しい思いをしたアーセナルにとっては格別の勝利だろう。昨季アーセナルはシーズン297日間のうち実に248日も首位を維持しながら、最終的にマンチェスター・シティに栄冠を譲っていたのである。だが今回は、優勝争いの最大のライバルであるチームを下すとともに、何年も悩まされてきた「鬼門」を突破してみせた。アーセナルがリーグ戦でマンチェスター・シティに勝利するのは実に8年ぶりのこと。アーセン・ヴェンゲル政権以来の勝利となったのだ。そして過去6シーズン連続でシーズンダブル(ホーム&アウェイの敗戦)を喫していたアーセナルは、マンチェスター・シティ戦の連敗を「12」で止めたのだ。


 実は彼らは、不名誉なプレミアリーグの連敗記録まであと1敗という瀬戸際だった。それではプレミアリーグにおける連敗(連勝)記録の対戦カードを見てみよう。

[写真]=Getty Images
 
■マンチェスター勢の猛威



 データ会社『Opta』によると、プレミアにおいて連勝記録を持つのはマンチェスター勢で、特定のチームに対して13連勝を達成している。まずはウェストブロム(現在2部所属)に対して13連勝したマンチェスター・シティだ。記録が始まったのはロベルト・マンチーニ体制の2012年4月のこと。セルヒオ・アグエロの2得点やカルロス・テベスのゴールなどで4-0の勝利を収めると、そこからマンチェスター・シティはウェストブロムを相手に13連勝。
カップ戦を含めると14連勝をマークした。だが2020年12月の対戦で、DFルベン・ディアスのオウンゴールで同点に追いつかれると、77%のボール支配率を誇りながら1-1と勝ち切れずに連勝がストップした。
 
 同じく13連勝の記録を持つのはマンチェスター・ユナイテッド。黄金期を築いたサー・アレックス・ファーガソン監督の元、2005年から2011年にかけてウィガン(現在3部所属)を相手にリーグ戦13連勝を達成した。連勝がストップしたのは2012年4月のこと。マンチェスター・シティとの熾烈な優勝争いを演じていたマンチェスター・ユナイテッドは、首位を維持しまま“カモ”にしてきたウィガンと敵地で対戦。
当たり前のように3ポイントを積み重ねると思いきや、残留争いを演じるウィガンが意地を見せて、ショーン・マロニーの試合唯一のゴールを守り切って1-0で勝利。マンチェスター・ユナイテッドはウィガン戦の連勝が13で止まるとともに、2位マンチェスター・シティにも5ポイント差まで詰め寄られてしまい、最終的にはアグエロのゴールで並ばれて得失点差で宿敵に栄冠を譲るのだった…。
 
■12連勝
 
 冒頭で説明した通り、先週末の試合に敗れるまでマンチェスター・シティはアーセナルに12連勝していた。その間に33得点5失点と圧倒していたが、今回はアーセナルの術中にはまって久しぶりの敗戦を喫することに。試合はゴールレスのまま均衡を保っていたが、終盤にホームのアーセナルの交代策がズバリ的中。MFトーマス・パーテイのロングボールを日本代表DF冨安健洋が頭でつなぎ、それをカイ・ハヴァーツが落として、最後はFWガブリエウ・マルティネッリ。
交代出場の4名の連係により86分に決勝ゴールを決めて見せた。これで連敗を12で止めたアーセナルだが、マンチェスター・シティ戦が彼らの連敗記録であることは変わりない。
 
 一方、敗れたマンチェスター・シティは前節ウォルヴァーハンプトン戦に続いてリーグ戦で2連敗。“常勝軍団”にとっては2018年12月以来となる5年ぶりのリーグ戦での連敗となった。試合前、5年ぶりの連敗の可能性について質問を受けたペップ・グアルディオラ監督は「2018年以来だから、我々が素晴らしい結果を残している証拠。監督がいいのかもね!」と冗談を口にしていたが、教え子であるミケル・アルテタに一本取られてしまい、本当に連敗を喫することになった。

 
 12連勝というカードは、全部で5つあるが全てマンチェスター・シティによるもの。アーセナル戦のほか、彼らはフラム戦、ボーンマス戦、ワトフォード戦、ニューカッスル戦で12連勝を達成している。ちなみにフラム戦とボーンマス戦は現在進行形の連勝のため、今季の次の対戦でプレミア記録の13連勝に並ぶことが可能だ。そう考えると、近年のマンチェスター・シティの躍進ぶりはプレミア史においても異様なのだろう。とりわけペップ体制は圧倒的な成績を収めている。2016年に就任した同指揮官の下、マンチェスター・シティはプレミア274試合で203勝34分け37敗。
勝率は驚異の「74%」。これはヴェンゲル(57%)、ジョゼ・モウリーニョ(60%)、ユルゲン・クロップ(63%)、アレックス・ファーガソン(65%)と比較しても圧倒的だ。
 
■11連勝


 
 11連勝は6カード。そのうち3つはチェルシーによるものだ。彼らはサンダーランド戦、ウェストブロム戦、そしてクリスタル・パレス戦で11連勝を達成しており、クリスタル・パレス戦に関しては現在進行形だ。そのためチェルシーは今季もクリスタル・パレスを相手に2連勝すればプレミア記録に並ぶことができる。相性の良さというのは本当にあるようで、昨シーズンも当然チェルシーが同じロンドンのクリスタル・パレスを相手に連勝(FAカップでも勝っているため3連勝)したわけだが、最終順位を見るとクリスタル・パレスは11位でチェルシーは12位。1ポイント差でクリスタル・パレスの方が上に立っていた。さらにチェルシーは、クリスタル・パレス戦で稼いだ計6ポイントを引くと、残留争いに巻き込まれる危険もあったほどだ…。
 
 もう1つ、興味深い「11連勝」はアーセナルによるもの。彼らが11連勝を食らわした相手というのは、マンチェスター・シティなのだ! ガナーズは1994年8月から2004年9月までマンチェスター・シティを相手にリーグ戦で11連勝。マンチェスター・シティが下部リーグに落ちていた期間もあるため、実に10年間もアーセナルの連勝が続いていたことになる。だが時は経ち、中東のオーナーによる大改革で急速に力をつけたマンチェスター・シティは反対にアーセナルに12連勝もできる世界一のクラブへと成長したのだ。
 
 ちなみに、プレミア発足以前も含めたイングランド・トップリーグにおける連勝記録のカードというのはチェルシー対ウェストブロムだという。1984年から2011年にかけてチェルシーが「15連勝」を達成したそうだ!

(記事/Footmedia)