『2023JリーグYBCルヴァンカップ』の決勝戦が4日に行われ、アビスパ福岡が2-1で浦和レッズを下して初優勝。この試合で貴重な先制点を記録し、MVPを受賞したMF前寛之が試合後にメディアからの取材に応じた。


 試合は立ち上がりから福岡が浦和を押し込む展開となり、その勢いのまま、開始5分で前が先制点を奪取した。試合の入りについて、前は「前から行くことが勢いにつながるし、今日の入りも前から行こうと攻撃も守備も話していた。リーグ戦直近2試合は、前から行って失点を多く重ねて、負けてしまったが、これまで続けてきたことをやらなければ意味がないので、試合前から前から行こうとみんなで話していた」と狙いを明かし、「先制点を取れたことで、守備の行く行かないのところで楽ができたと思うし、0―0のままだと、ボールを保持する浦和さん相手に厳しくなる。あの時間帯に得点が取れたことは、試合を通じてよかった点だと思う」と振り返った。

 そして、本職のボランチではなく、前線の2シャドーの一角で起用されたことについては、「慣れていないポジションではあったが、試合に出ているなかで、シャドーというポジションについて分かっていたし、チームのために、どういう動きができるかということを意識していた」とコメント。つづけて、「週初めの2日目、3日目くらいのタイミングで監督から『あるかもしれない』と伝えられていた。
チームの役割として、ファーストディフェンスのところであったり、どこを守らないといけないかを意識した。(本職が)ボランチの選手ではあるので、チームがスムーズにいくように立ち位置であったり、最終局面のところをよく整理しながら、試合に入れた」と話した。

 前は、2013年に当時J2のコンサドーレ札幌(現:北海道コンサドーレ札幌)でプロキャリアをスタート。しかし、なかなか定位置を掴むことができず、チームがJ1に昇格した2017年もリーグ戦4試合出場のみにとどまった。それでも、2018年に水戸へ移籍したことで転機が訪れた。当時、水戸を率いていた長谷部茂利監督に才能を見出され、プロ入り後、初めて定位置を奪取。
そして、2020年に長谷部監督とともに福岡へ移籍し、加入1年目からキャプテンに就任。そこから着々とステップアップを果たし、1年目でJ1昇格、2年目にはJ1で8位に入ってクラブ史上最高位を更新。3年目にはルヴァンカップでベスト4、天皇杯でベスト8に進出。そして4年目の今年、ついにルヴァンカップ制覇を成し遂げ、福岡にクラブ史上初のタイトルをもたらした。

 ここまでの軌跡について、前は「自分も素晴らしいストーリーだと思っている。札幌からプロキャリアを始めて、J1の舞台で戦うのも、なかなか時間がかかったし、J1の舞台で結果を残すことも、相当苦労してきた。
カップ戦だけど、1つタイトルを取れたことは、自分自身のキャリアにとっても、クラブにとっても、監督にとっても、すごく良いことだと思う」と、振り返る。

 そして、恩師である長谷部監督については、「ゼロから1個(タイトルを取って)ステップアップできたと思う。僕自身、シゲさんとの関係は6年目で、タイトルとは縁遠いところにいた。ただ、着々とステップを踏んで、ここまで来られた。こういう決勝の舞台で、優勝カップを掲げられたことは、とても嬉しい」と、恩師への感謝を語っていた。

 なお、その長谷部監督も試合後の記者会見で、前のパフォーマンスを「非常に良かった」と称賛。
「攻撃でももっともっと活躍できると思うので、これからもっと実力をつけて、浦和さん相手、強いチーム相手に攻撃面でも良さを出してもらいたい。評価は非常にいい」と、申し子のさらなる成長に期待を寄せていた。

◾️ 歴代MVP受賞者
1992年:三浦知良(V川崎)
1993年:ビスマルク(V川崎)
1994年:ビスマルク(V川崎)
1996年:サントス(清水)
1997年:ジョルジーニョ(鹿島)
1998年:川口信男(磐田)
1999年:渡辺毅(柏)
2000年:中田浩二(鹿島)

2001年:榎本達也(横浜FM)
2002年:小笠原満男(鹿島)
2003年:田中達也(浦和)
2004年:土肥洋一FC東京
2005年:立石智紀(千葉)
2006年:水野晃樹(千葉)
2007年:安田理大(G大阪)
2008年:高松大樹(大分)
2009年:米本拓司(FC東京)
2010年:前田遼一(磐田)

2011年:大迫勇也(鹿島)
2012年:柴崎岳(鹿島)
2013年:工藤壮人(鹿島)
2014年:パトリック(G大阪)
2015年:小笠原満男(鹿島)
2016年:李忠成(浦和)
2017年:杉本健勇(C大阪)
2018年:杉岡大暉(湘南)
2019年:新井章太(川崎F)
2020年:レアンドロ(FC東京)

2021年:稲垣祥(名古屋)
2022年:ピエロス・ソティリウ(広島)