クリーンシートで新スタジアム初白星を飾った。「最高っていう言葉しか出てこないですね」。
フル出場で無失点に貢献したDF市瀬千里は試合後に笑顔で話した。

 サンフレッチェ広島レジーナは18日、WEリーグ第15節でINAC神戸レオネッサをホームに迎えて2-0で勝利。新スタジアム『エディオンピースウイング広島』に移って4試合目で待望の初白星を収めた。

 この試合は新スタジアムで初めてのナイターゲーム。バックスタンドでビアガーデンが開催され、スタジアムには平日ながら2834人が駆けつけた。豪華な光と音の演出が披露され、ホームサポーターたちも紫のペンライトでスタンドを彩った。


 照明が落ちたスタジアムの中、選手たちはスポットライトを浴びながらピッチに入った。「お客さんがたくさん来てくれたし、試合前はいつもと違う過ごし方だったし、(演出の)光がすごかったので、ワクワクする気持ちと少しの緊張がありました」。市瀬はいつもと違う雰囲気にのまれそうになったが、試合開始すぐに自分のプレーに好感触を得ていた。

「まずヘディングで1回勝ったときに『今日は勝てるな』って思ったので、失点しない気持ちは強かった。それが結果につながってよかったです」

 特に前半は相手エースのなでしこジャパンFW田中美南と見応えあるバトルを繰り広げた。市瀬は、「INACは後ろから美南選手にパスを1本入れて、そこを起点にして攻撃をつなげていくのは分析でも、対戦してもわかっていたので、そこを潰すのが自分の使命だった」と気合いを入れていた。


 田中と激しい競り合いや駆け引きの応酬となり闘志溢れるバトルを見せた。ただ、19分にはパスをつなぐところで一瞬の隙を見せてしまい、詰めてきた田中に競り負けてボールを奪われるシーンもあった。それでも、「不用意なミスをしたけど、そこで自分がビビって変なプレーをしてしまうのは違うと思った」と潔く切り替え、「そこからリズムをつかめたし、後半も変わらずできた。相手のプレスはうまかったけど、ビビらずやれてよかったです」と強気につなぐ意識を貫いた。

 田中は球際の強さや抜群のキープ力を発揮していたが、S広島Rは最後まで相手エースに決定的な仕事をさせなかった。市瀬は、「もちろん『やばいな』、『うまいな』って思うシーンもあったけど、ゼロで抑えられたのは(田中に仕事を)やらせなかったということなので良かったです」と手応えを口にした。


 S広島Rは前半にDF藤生菜摘の2ゴールで先手を取り、守っては相手のシュートを0に抑えて試合を折り返した。後半はアグレッシブな選手を加えたI神戸が攻勢を強めたが、S広島Rはチーム全員が体を張って見事に守り切った。

 試合終了後、市瀬は真っ先にGK藤田七海と抱き合って勝利を喜び合った。藤田は負傷離脱した守護神の木稲瑠那に代わってゴールマウスを守り、この試合でも好セーブ連発でクリーンシート達成に大きく貢献した。

 市瀬は、「七海は誰かの代わりとかではないし、七海なら止めると信じていたので、そんな選手と絶対にクリーンシートで勝ちたい気持ちが強かった。七海の自信につながったらうれしいし、自分の自信にもなったと思います」と仲間の分も一緒に胸を張った。


 S広島Rは今季初の連勝で6位に浮上。新スタジアムでチームの歴史に残る最高の勝利を収め、シーズン終盤に向けて弾みをつけた。

取材・文=湊昂大